「解析学基礎/常微分方程式」の版間の差分
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→常微分方程式とは何か: 初期値問題と境界値問題 |
1階非斉次微分方程式について書き直し、定数変化法についてはまだ書いてない |
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244 行
:<math>{{y'} \over {y}} = -f(x)</math>
両辺を積分して
:<math>{\rm ln}|y| = \int{ - f(x)dx + C_0}</math>
両辺を''e''の肩に掛けて、
:<math>|y| = e^{\int{ - f(x) dx + C_0}}</math>
右は常に正なので、<math>e^{C_0}=C</math>として、
:<math>y = Ce^{\int{ - f(x)dx}}</math>
この解法を'''変数分離法'''といい、得られた結果がこの斉次方程式の一般解である。
一般解はこのようにして求められたが、<math>y(x_0)=y_0</math>となるときの特殊解''y''を求めなければならないときもある。斉次1階微分方程式の初期値問題について考えてみよう。
初期値問題
:<math>y' + f(x)y = 0 ; y(x_0)=y_0</math>
を解く。
はじめに微分方程式を解くと、先に導いたように一般解
:<math>y = Ce^{\int{ - f(x)dx}}</math>
を得る。この式の両辺に<math>(x, y) = (x_0, y_0)</math>を代入すれば、積分定数''C''の値が求められるため、改めてそれをこの式に代入しなおすことで特殊解が得られる。
あるいは、微分方程式を解く際に不定積分ではなく<math>x_0</math>から<math>x</math>までの定積分を求めることによって初期値問題を解くこともできる。多少厄介だが、積分記号を外せないときにも解を求めることができる。
変数分離を施した形
:<math>\frac{y'}{y} = -f(x)</math>
より、両辺を<math>x_0</math>から<math>x</math>まで定積分する。
:<math>\begin{align}
&{\int_{x_0}^{x} {{y'} \over {y}}\ dx'} = {\int_{x_0}^{x} -f(x')\ dx'} \\
\iff & {\rm ln}y - {\rm ln}y_0= {{\int_{x_0}^{x} -f(x')\ dx'}} \\
\iff & {{y} \over {y_0}} = e^{\int_{x_0}^{x} -f(x')\ dx'} \\
\iff & y=y_0e^{\int_{x_0}^{x} -f(x')\ dx' } \\
\end{align}</math>
結局、一般解における積分定数''C''が<math>y_0</math>に、不定積分が定積分になっただけであった。
==== 例題1 ====
微分方程式<math>y' -4xy = 0</math>を解く。
259 ⟶ 282行目:
である。
==== 例題2 ====
次の微分方程式の初期値問題を解け。
:<math>y' + y \sin x = 0 ; y(0) = {3 \over 2}</math>
この微分方程式の一般解として、変数分離法によって
:<math>y = Ce^{\cos x}</math>
が求められる。この式に<math>(x,y) = (0, 3/2)</math>を代入すれば、
:
したがって求めるべき特殊解は
:
あるいは、不定積分の代わりに定積分を行うことにより、
:<math>y={3 \over 2}e^{-\int_{0}^{x} \sin t\ dt}={3 \over 2}e^{\cos x-1}</math>
が導かれる。
===非斉次
次に、非斉次1階線型微分方程式
:<math>y'+ f(x)y = g(x)</math> (1.1)
の解き方を考えてみよう。しかし今、我々にできる事は二つしかない。それは、斉次微分方程式を解くことと、各種式変形を行うことである。これを最大限駆使して解くしかない。具体的には、なんとかして(1.1)を斉次微分方程式
:<math>z'=\nu(x)</math> ★
の形に式変形して、これを解くのである。
天下り式であるが、(1.
:<math>h(x)y' + h(x)f(x)y = h(x)g(x)</math> (1.2)
とする。ここで<math>h(x)</math>が
:<math>\{h(x)y\}'= h(x)y' + h(x)f(x)y</math> (1.3)
をみたすような関数であるとすると、<math>z=h(x)y,\nu(x)=h(x)g(x)</math>とすれば★の形に変形できる。
ではそのような<math>h(x)</math>は存在するのだろうか。具体的に求めてみる。
<math>\{h(x)y\}'=h(x)y'+h'(x)y</math>であるから、これを(1.3)に代入すると
:<math>\begin{align}
h'(x) &= h(x)f(x)
\end{align}</math>
を得る。<math>h(x)</math>についてはこの変数分離形の微分方程式を解けばよい。定数倍は関係ないので、
:<math>h(x)=e^{\int f(x) dx}</math> (1.4)
としてよい。この<math>h(x)</math>は'''積分因子'''と呼ばれる。
さて、(1.2)と(1.3)より、
:<math>\{h(x)y\}'=h(x)g(x)</math> (1.5)
を得る。これを変形すると、
:<math>\begin{align}
h(x)y &= \int h(x)g(x)dx + C \\
y &= {1 \over {h(x)}}\left(\int h(x)g(x)dx+C\right)
\end{align}</math>
あとはこれに(1.4)を代入すると、一般解
:<math>y = \frac{1}{e^{\int f(x) dx}}\left(\int e^{\int f(x) dx}g(x)dx + C\right)</math>
を得る。
初期値問題<math>y'+f(x)y=g(x) ; y(x_0)=y_0</math>を解くには、(1.5)の両辺を積分する際に定積分とすれば、
:<math>\int_{x_0}^x \{h(x)y\}' dx=\int_{x_0}^x h(x)g(x) dx</math>
を得る。あとはこれを''y''について解けばよい。
以上、非斉次微分方程式の解法を述べた。手順をまとめると、
# 積分因子<math>h(x)=e^{\int f(x)dx}</math>を求める。
# <math>g(x)</math>に積分因子を掛け積分する。
# それを<math>h(x)</math>で割って一般解とする。
となる。
==== 例題1 ====
微分方程式<math>y'-2xy=x</math>を解く。
<math>f(x)=-2x</math>より、積分因子<math>h(x)</math>は、
:<math>h(x) = e^{\int -2xdx} = e^{-x^2}</math>
である。これを与式右辺(<math>g(x)</math>)に掛けて積分すると、
:<math>\int h(x)g(x)dx = \int e^{-x^2}xdx = -\frac{1}{2}e^{-x^2} + C</math> (1.6)
したがって、微分方程式の一般解は
:<math>y=\frac{-\frac{1}{2}e^{-x^2} + C}{e^{-x^2}} = -{1\over 2}+Ce^{x^2}</math>
となる。
==== 例題2 ====
初期値問題<math>y'-2xy=x ; y(1)=2</math>を解く。
例題1で(1.6)を積分するときに定積分にする。
:<math>\begin{align}
\left[ye^{-t^2}\right]_1^x &= \left[-{1\over 2}e^{-
ye^{-x^2}-2e^{-1} &= -{1\over 2}e^{-x^2}+{1\over 2}e^{-1} \\
ye^{-x^2} &= -{1\over 2}e^{-x^2}+{5\over 2}e^{-1}
\end{align}</math>
したがって求める特殊解は
:<math>y(x)=-{1\over 2}+{5\over 2}e^{x^2-1}</math>
あるいは、例題1で求めた一般解に<math>(x, y) = (1, 2)</math>を代入することによって''C''の値を求めてもよい。
次の方程式を解け
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