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多元主義について加筆
グローバリゼーションについて加筆
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=== 世界秩序の理論 ===
歴史において世界秩序はいくつかの種類の形態を示しながら発展しており、近代に入るまでの典型的な世界秩序として無政府状態、封建主義、または帝国によって特徴付けることができる。近代以後においては行為主体の単位として国民国家が成立したことを背景として、世界秩序は国家を中心としたウェストファリア体制が形成された。しかし現代では国際連合の創立や世界経済の一体化を通じて新しい世界秩序の理論が議論されており、ここではその基礎的事項について概説する。
 
==== グローバリゼーション ====
[[ファイル:Noam chomsky cropped.jpg|thumb|right|150px|ノーム・チョムスキー(1928年生)はアメリカの言語学者であり哲学者。ペンシルベニア大学で言語学の博士号を取得し、後にマサチューセッツ工科大学の教授となる。政治的な問題に関する評論活動も行っており、ベトナム戦争や対テロ戦争でのアメリカの外交政策やグローバルな資本主義に対して批判を加えている。著作には『アメリカン・パワーと新官僚』、『アメリカの「人道的」軍事主義』など。]]
1980年代にはグローバリゼーション(globalization)という用語は国際関係における過程や経営戦略の概念、イデオロギー的な用語として用いられるようになっていた。その多義的な性格から、グローバリゼーションという事態は複合的な状況によって構成されているものだと理解できる。その最も基本的な特徴は伝統的な国家を中心とした世界秩序からの脱却であり、ジャン・ショルテによる研究では人々の間における脱領土的な関係の成長と結び付けられて考察されている。例えば文化的な側面からグローバリゼーションを調べると、異なる言語や宗教を持つ諸国民のあいだで、世界的に標準化された情報や商品の使用や普及が見られる。特にコカコーラやマクドナルドなどの多国籍企業による国際展開や情報技術を通じたハリウッドの映画産業の国際進出などはこのような文化的グローバリゼーションの具体的な事例として挙げることができる。政治的な側面からグローバリゼーションについて検討すると、地域や国家を越えた国際機関(international organization)の発展とその影響力の拡大を認めることができる。具体的な事例としては国際連合、北大西洋条約機構、世界銀行、ヨーロッパ連合などの活動を挙げることが可能である。いずれの場合でも従来の国民国家だけでは解決することが難しく、国際安全保障や国際経済の問題などのように多国間での国際協調が必要な問題に対処するために設置されている。現代におけるグローバリゼーションの先駆的な理論家の一人であるウォーラーステインは世界システムの研究でこの現象の経済的側面について分析を加えており、またフクヤマはグローバリゼーションと世界的な民主化の流れとを結び付け、グローバリゼーションが自由民主主義の政体の普遍化をもたらすし、それが歴史の終わりとなると予見した。冷戦に勝利したアメリカによって一極支配的な国際関係が出現すると、グローバリゼーションの分析にアメリカの単独主義的な外交政策とアメリカによって主導される新世界秩序に対する批判が付け加えられた。そのような立場に立つ論者の一人のチョムスキーは1991年の湾岸戦争はアメリカとその友好諸国の連合は中東地域の石油資源をめぐる利害を反映していると指摘している。チョムスキーが主張していることは国際法の言説というものが列強諸国による国益の追求と権力闘争を覆い隠しているということである。
 
==== リージョナリゼーション ====