「政治学概論」の版間の差分

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企業新本主義について加筆
企業資本主義、社会資本主義について加筆
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==== 企業資本主義 ====
[[ファイル:AdamSmith.jpg|thumb|right|150px|アダム・スミス(1723年-1790年)はイギリスの哲学者であり経済学者。グラスゴー大学やオックスフォード大学で学業を修める。大学教授、家庭教師を経て税関職員として勤務した。近代経済学の古典的研究として重要な理論を示し、例えば労働を価値の源泉と考える労働価値説や自由な競争による市場の効率性を論じた。著作には『道徳感情論』、『国富論』などがある。]]
現代の世界において資本主義体制はアメリカやイギリスをはじめとしてさまざまな西欧諸国で導入されているが、中でも企業資本主義(enterprise capitalism)は厳密な意味での資本主義の理念を追求した経済体制として区別することができる。アダム・スミスは私有財産と利潤獲得の動機に基づいた自由市場には社会の全体的な利益を最大化することができると古典的な研究で述べている。なぜならば、市場においてある商品の需要と供給の均衡や不均衡が価格として反映され、それに伴って需給の均衡が自律的に調整されるためである。そのために、各個人が社会全体の利益を考えていなくても、各人が自分の利益を拡大しようとすることによって、社会全体の経済的な豊かさを確保することができることをスミスは経済学の基礎に据えた。この自由市場に基づいた経済体制の研究はフリードマンやハイエクによって現代的な研究にも受け継がれ、現代の経済政策にも重要な理論的基礎を提供している。企業資本主義の体制ではこのような市場の機能を最大限に活用するために経済的自由を拡大し、さまざまな領域での市場化(marketziation)をもたらすことになる。これは政府による経済政策に含まれている社会福祉や、それまで商品としては扱われてこなかったような財やサービスの市場での規制を緩和し、企業活動として参入することを意味している。企業資本主義の利点の一つは市場経済を通じた財やサービスの適切な配分だけでなく、市場での企業間の競争を促進することで急速な技術革新が可能となることなどが挙げられる。一方で問題点としては、企業資本主義の下では経済的不平等が拡大することが避けられないことがある。またこのような経済体制のモデルでは消費者の欲求や各企業の能力を超える経済競争に展開することが想定される。第二次世界大戦後のアメリカの経済は典型的な企業資本主義の事例として取り上げることができる。1945年から1990年にかけてアメリカは自由市場の機能を拡張しながら高い経済成長を維持し、企業の研究開発による急速な技術革新を遂げることができた。一方でアメリカでは所得格差が社会的緊張を長期間にわたって引き起こしてもいる。
 
==== 社会資本主義 ====
[[ファイル:Friedrich List.jpg|thumb|right|150px|フリードリヒ・リスト(1789年-1846年)はドイツの経済学者。就労しながらテュービンゲン大学で学び、大学教授となるが、後にアメリカへ亡命した。経済学の研究で歴史学派の古典的業績を示し、経済が発展するために経なければならない段階や保護関税の意義について論じた。著作には『政治経済学の国民的体系』、『ドイツ人の政治的・経済的国民統一』など。]]
社会資本主義(social capitalism)はヨーロッパで発展した資本主義の形態であり、特にドイツ、オーストリア、スウェーデン、フランスなどで認められる。社会資本主義の経済体制はスミスの市場経済の古典的な理論よりもフリードリヒ・リストの経済理論に基づいて解説することができる。リストは政治権力の経済的な重要性を強調しており、外国から国内の幼稚産業を保護することの意義を論じる。社会資本主義体制においては社会市場(social market)の機能が不可欠であり、これはミュラー・アルマックにより提唱された。社会市場は市場原理に加えて社会福祉や公務員制度を通じて整備された社会制度により調整された市場である。社会市場はより幅広い社会的目標を達成するための市場であり、自由市場と比べて協調を重視する。社会資本主義の利点は1960年代までのドイツが奇跡的な経済復興を達成したことに示されている。社会資本主義においては、社会市場の機能に基づきながら労働力を教育訓練によって熟練させ、科学技術の維持発展を可能とする。しかし、社会資本主義は一方でグローバリゼーションのように市場構造の変化に対応する上で硬直的な経済体制であり、またこのような経済体制を維持する上で社会全体が支払わなければならない費用は自由市場と比べれば高くなる。第二次世界大戦後にドイツはこの社会資本主義のシステムを採用しており、ドイツの経営組織はもこれに対応して社会的パートナーシップに基づいて構成されていた。
 
=== 社会主義体制 ===
 
 
==== 国家社会主義 ====
[[ファイル:JStalin Secretary general CCCP 1942.jpg|thumb|right|150px|ヨシフ・スターリン(1878年-1953年)はソヴィエトの政治指導者。ロシア革命の活動家として共産党に参加し、レーニンの死後に政権を掌握した。国家社会主義の経済政策として富農の撲滅や農業の集団化を政策として実践し、またマルクス主義の思想にロシアのナショナリズムの概念を導入した。著作には『レーニン主義の基礎』、『マルクス主義と民族問題』などがある。]]