「高等学校古文/漢詩/桃夭」の版間の差分

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ここでは『詩経』に収録されている作品「桃夭」(口語訳:若々しい桃)を解説する。
== 白文と書き下し文 ==
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15 行
之子于帰  宜其家人
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桃の{{ruby|夭夭|ようよう}}たる<ref group="※">若々しい形容。</ref>  {{ruby|灼灼|しゃくしゃく}}<ref group="※">ここでは燃えるような花の様子を表す表現。</ref>たり其の華
 
{{ruby|之|こ}}の子{{ruby|于|ゆ}}き{{ruby|帰|とつ}}ぐ<ref group="※">「于」は「往」と同じ。ただし「ここに」と読む説もある。また、「帰」は「嫁」と同じ意味で、お嫁に行くことを指す。</ref>  其の{{ruby|室家|しっか}}<ref group="※">嫁ぎ先の家。</ref>に{{ruby|宜|よろ}}しからん<ref group="※">よい。好ましい。調和する。</ref>
 
桃の夭夭たる  {{ruby|蕡|ふん}}たる<ref group="※">実がたくさんなる。または、実がはちきれんばかりに充実している様子。</ref>有り其の実
 
之の子于き帰ぐ  其の家室<ref group="※">「室家」と同じ。押韻の関係からさかさまになっている。</ref>に宜しからん
 
桃の夭夭たる  其の葉{{ruby|蓁蓁|しんしん}}<ref group="※">葉が一面に茂る様子。</ref>たり
 
之の子于き帰ぐ  其の家人に宜しからん
|}
<references group="※"/>
 
== 現代語訳通釈 ==
若々しい桃の花よ  燃えるようにたくさん咲くその花よ
 
35 行
若々しい桃の花よ  はちきれるようなその実よ
 
この娘は今お嫁に行きます  きっとその家の人とむつ暮らすいくでしょう
 
若々しい桃の花よ  生い茂ったその葉よ
 
この娘は今お嫁に行きます  きっとその家の人とうまく合うこといくでしょう
== 形式 ==
四言古詩。四句で1まとまり(1から)とっていて、3章立てになっている。
=== 押韻 ===
*「華」「家」
47 行
*「蓁」「人」
== 解説 ==
同じ語句が繰り返されている、素朴な民謡調の詩である。この作品は嫁いでいく娘の幸福を願う庶民の素朴な感情を歌い上げたものである。
 
この詩のポイントは2、6、10句である。ここでは、桃の様子が「華」→「実」→「葉」と変わっていく。これによって季節の移り変わりを示している。そして季節の変化とともに娘が結婚先の家になじんでいく様子も表されている。「華」は結婚のときに美しく着飾った娘を、「実」は娘が生んだ子どもを、そして「葉」はその後の子孫の繁栄を示している。2、6、10句以外はほとんど繰り返しであることから、一見単調のようであるが、むしろ繰り返しを多用することでこの変化がより際立つのである。
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