「有限群論序論」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
K.ito (トーク | 投稿記録)
編集の要約なし
222 行
必要性は明らかだろう。十分性は以下のように示される。''a'' &isin; ''H''とすると、条件より、''a'' &middot; ''a''<sup>-1</sup> = ''e'' &isin; ''H''である。 よって''a'' &isin; ''H''かつ''e'' &isin; ''H''なので、 条件より''e'' &middot; ''a''<sup>-1</sup> = ''a''<sup>-1</sup> &isin; ''H''である。最後に、''a'' &isin; ''H'' , ''b'' &isin; ''H''とすると、''b'' &isin; ''H''より''b''<sup>-1</sup>&isin; ''H''なので、''a'' &middot; ( ''b''<sup>-1</sup> ) <sup>-1</sup> = ''a'' &middot; ''b'' &isin; ''H''。よって''H''は''G''の部分群である。
 
=== 準同型写像 ===
これまではひとつの群についてばかり考えてきたが、ここでは2つの群の間の写像について考えよう。
 
''G''と'' G' ''を群とする。写像<math>f:G \to G'</math>が'''準同型写像'''である(あるいは単に準同型である)とは、次の条件を満たすことである。
 
<math>f(x \cdot y) = f(x) \cdot f(y) , \forall x,y \in G</math>
 
準同型であって特に全単射なものを'''同型'''という。少し紛らわしい表現だが、''G''から'' G' ''への同型写像があるときこの2つの群は同型であるといい、<math>G \cong G'</math>と書く。
 
明らかに準同型となる例として、部分群からもとの群への包含写像は単射な準同型であり、特に群の恒等写像は同型である。また、準同型の合成は準同型であり、同型の逆写像は同型である。以上から、2つの群が同型であるという関係は同値関係であることがわかる。
 
<math>f:G \to G'</math>を準同型とするとき、<math>\mathrm{Im} f = \{f(x) \in G'|x \in G \}</math>をfの''''''(image)といい、<math>\ker f = \{ x \in G | f(x) = e_{G'} \}</math>をfの''''''(kernel)という。imageはG'の、kernelはGの部分群であることはすぐわかる。
 
準同型は必ず単位元を単位元にうつす。すなわち、<math>e_G \in \ker f</math>である。また、準同型が単射であることは、<math>\ker f = \{ e_G \}</math>と同値である。この事実は準同型の単射性の判定を簡便にするためにしばしば役立つ。
 
群''G''から''G''自身への同型写像を''G''の自己同型という。任意の群に対して自己同型は必ず存在する(恒等写像)。また、''G''の自己同型全体をAut''G''と書くことにすると、この集合は写像の合成を演算として群となることがわかる(確かめよ)。これを''G''の'''自己同型群'''という。
 
===正規部分群===
群''G''の部分群''H''がさらに下の条件を満たすとき、''H''は正規部分群であるといい、<math>G \vartriangleright H</math>と書く
 
''g'' &isin; ''G'' , ''h'' &isin; ''H'' &rArr; ''g'' &middot; ''h'' &middot; ''g''<sup>-1</sup> &isin; ''H''
308 ⟶ 310行目:
 
有限群の構造をかなり具体的に指し示す、美しい定理である。
 
== 群の直積と半直積 ==
2つの群''G'',''H''があるとき、これをもとにして新たな群を作ることを考えよう。
 
=== 直積 ===
最も単純なのは、''G''と''H''の集合としての直積<math>G \times H</math>に次のようにして演算を与えることであろう。
 
:<math>(g_1,h_1) \cdot (g_2,h_2):=(g_1 g_2,h_1 h_2)</math>
 
このように定めると確かにこの集合は群になる(確かめよ)。これを''G''と''H''の'''直積'''といい、<math>G \times H</math>で表す。
 
=== 半直積 ===
上記のようにして直積集合に群の構造が入ることがわかったが、これに加えて群準同型
 
:<math>\sigma:H \to \operatorname{Aut} G</math>
 
があるときには、これとは別の方法で群構造を入れることができる。具体的には、演算を次のように定める。
 
:<math>(g_1,h_1) \cdot (g_2,h_2):=(g_1 \sigma(h_1)(g_2),h_1h_2)</math>
 
このようにして定めると、確かにこの集合は群になる(確かめよ)。これを''G''と''H''の'''半直積'''といい、<math>G \rtimes H</math>と書く。特に<math>\sigma</math>を、任意の''h''に対して<math>\sigma(h)</math>は恒等写像、と定めると、この作用に関する半直積は直積と一致する。すなわち半直積は直積をより一般化した概念であり、これを考えることにより、直積だけを考えるよりもより多くの構造を考える余地ができる、といえる。