「分子生物学」の版間の差分

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[[File:Chromosome en.svg|thumb|300px|'''染色体、クロマチン、DNAの関係''': 左上の細胞 (cel)の核内には細胞分裂に先立って染色体 (Chromosome) が現れる。[[ヒストン|ヒストン八量体]]に[[デオキシリボ核酸|DNA]]分子が巻き付いた構造(クロマチン)がさらに折りたたまれて染色体の形にまとめられる。]]
[[ファイル:Chromatin_chromosome.png|thumb|300px|'''DNAの凝縮の各段階''': (1) 裸の二本鎖 DNA (2) クロマチンの鎖: DNA(青線)とヒストン(緑丸) (3) 間期の凝縮したクロマチン(青線)とセントロメア(赤点) (4) 分裂前期の凝縮したクロマチン (5) 分裂中期の染色体]]
真核細胞では、こうしてできた長い長いDNA鎖は[[w:細胞核|核|]]に収められる。ヒト細胞の核には実に2メートルものDNAが入っているが、これはテニスボールに40キロメートルもの糸が入っているようなものである。これをうまく収容するため、DNAは'''染色体'''にきっちりと詰め込まれる。それぞれの染色体は、1本のDNA鎖とこれに結合したタンパク質でできており、このタンパク質がDNAを折りたたんで小さくまとめている。このDNAとタンパク質の複合体を'''[[w:クロマチン|クロマチン]]'''と呼ぶ。クロマチンはおおむね線維のように見えるが、これを部分的にほどく処理をすると、“糸に通したビーズ”のような形が見える。この糸はDNA,ビーズは'''[[w:ヌクレオソーム|ヌクレオソーム]]'''である。8個の'''[[w:ヒストン|ヒストン・タンパク]]'''(ヒストンH2A,H2B,H3,H4それぞれ2分子ずつ)によって形成され、+に帯電している円盤状の'''ヒストン八量体'''に、-に帯電したDNAが巻きつくことでヌクレオソームが形成され、これがクロマチンの基本単位となる。
 
なお、''上記はすべて真核細胞についての記述である''。細菌にも“染色体”と呼ばれる構造はあるが、その実態は真核生物ほどには分かっていない。
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間期には、染色体は核内で長く伸びて絡まった細長い糸状のDNAとして存在し、これを間期染色体と呼ぶ。間期染色体が効率的に複製できるように、あらゆる真核生物のDNAには複数の特殊な塩基配列が存在している。ひとつは'''[[w:複製起点|複製起点]]'''で、この部分でDNAの複製が開始される。次に'''[[w:テロメア|テロメア]]'''で、これは末端の複製と保護に関与している。そして、複製されて2倍になった染色体を娘細胞に分配する際には、'''[[w:セントロメア|セントロメア]]'''という配列が使われる。
 
さて、分裂期において、[[w:染色体凝縮|染色体凝縮]]によってDNAは高度に凝縮され、整然と配置されるのに対して、間期にはその凝縮度は小さくなる。しかし、間期染色体のすべてが同じような凝縮度ではない。そこには凝縮度の高いクロマチンと低いクロマチンが共存していて、その凝縮度の高い“きつい”ものを'''[[w:ヘテロクロマチン|ヘテロクロマチン]]'''と呼ぶ。ヘテロクロマチンの部分で転写は不活発で、この部分にある遺伝子は少なく、またあっても発現されず、遺伝子のサイレンシングに関係している。間期クロマチンの残りの部分は、これより凝縮度の低い“ゆるい”状態にあり、[[w:ユークロマチン|ユークロマチン]]と呼ばれ、活発に転写が行われる。
 
このように、DNAは極めて緻密にたたまれてクロマチンとして収納されているが、その一方で、DNAは必要に応じて読み出されなければならない。このため、真核細胞には、クロマチンの局所構造を調節して、必要な部分を取り出すしくみがいくつかある。その1つがヌクレオソームの構造を変化させる'''[[w:クロマチン再構成複合体|クロマチン再構成複合体]]'''を利用する方法で、また'''ヒストン尾部の可逆的な修飾(アセチル化・メチル化)'''による方法もある。