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==DNAの修復==
[[File:DNA Repair.jpg|thumb|250px|DNAを修復するDNAリガーゼ]]
''wikipediaの記事“[[w:DNA修復|DNA修復]]”も参照''
生物がこれほど多様で、あらゆる環境で繁栄しているのは、遺伝子配列の変化が蓄積することによって進化が行なわれ、環境条件の変化に適応してきたためである。しかし一方で、ごく短期的に、個々の生物のレベルで見れば、遺伝子の変化はまったく望ましいものではない。特に多細胞生物においては、多くのメカニズムがあまりにも精妙に動いているため、わずかな変異でもそれらを決定的に狂わせかねない;従って、遺伝子はできる限り安定でなければならない。前章で見たように、DNAの複製においては常に校正が行なわれているが、それでも複製装置がミスを犯すことはありうるし、また化学物質や放射線によってDNAに偶発的な損傷が生じることもある。これらによって生じた突然変異をすぐに修復する'''修復機構'''の存在も、遺伝子の安定性に大いに寄与している。
修復機構にはいろいろあり、歴史的には細菌に見られる光回復
# XPA(高等動物における出芽酵母Rad14のホモログ)が損傷した一本鎖DNA (ssDNA: single-stranded DNA) を識別し結合する。
# RPAがssDNAに結合し、XPAの結合している損傷部位周辺のヌクレオチド鎖を一本鎖の状態に保つ。
# そこにXPCが結合する。(TCR (転写と共役した修復:Transcription-coupled repair) では必要とされない)
# hHR23BがXPCに結合し、NER活性を亢進する。
# TFⅡFとDNAヘリカーゼ (DNA二本鎖を巻き戻して一本鎖に乖離させる酵素) であるXPB, XPDが損傷部位にリクルートされ、損傷部位周辺のヌクレオチドをオープンにする。
# XPGがオープンになったヌクレオチド鎖の3'側、ERCC1とXPFの複合体が5'側をカットする。
# ヌクレオチド鎖上に生じたギャップに、RFC、PCNA、RPA、複製DNAポリメラーゼ (Polδ or ε) がリクルートされ、姉妹鎖を鋳型として、前過程によって生じた3'末端からヌクレオチド鎖の合成を行う。
# DNAリガーゼが前過程で合成されたヌクレオチド鎖の3'末端と前々過程で生じた5'末端を連結する。
DNA修復機構が欠損していても、DNA複製自体は行えるため、正常に発生することがあるが、環境中の化学物質やUVによって生じるDNA損傷を修復できないため、損傷や変異が蓄積し、細胞死やがん化が頻繁に起こる。紫外線に極端に感受性を示し、高頻度で皮膚がんを生じる遺伝病である色素性乾皮症 (XP:Xeroderma Pigmentosum) は、NERによるゲノムワイドな修復 (GGR) が正常に働かないことが原因であることがわかっている。また、知能発育不全 (MR:Mental Retardation) や身体的な発育不全、早老症などの臨床症状を呈す遺伝病であるコケイン症候群の原因も、転写と共役した修復(TCR)におけるNER機構が正常に機能しないことが原因である。
NERが健常であれば、この機構によって多くの損傷は取り除かれるが、全ての損傷をこれのみで修復することは困難である。例えば、培養細胞をつかったin vivoでの研究により、紫外線が惹起する損傷であるCPD (シクロブタン型) は24時間かかっても50%以下しか修復することができない。それゆえ、損傷を十分に取り除き、損傷・変異の蓄積を防ぐには、NER以外の修復機構も重要となる。
==DNAの組換え==
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