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===法学入門の諸相===
法学入門では、広くさまざまな法の基礎的知識を与えられる印象がある。これは法学入門が構成上、年代が下がるにつれて整理追記的(トップダウン形式・演繹的説明)に内容が豊かになったためである。この整理追記的方法は、さまざまな法的用語ないし法概念の外延関係的理解に役立つもので、他の社会科学の説明にも広く用いられている。しかし、法概念は、説明され、その内容を知ることに留まらず、常に変動可能性のある社会生活実体関係そのもの、平たく言えば、社会生活手段そのものであるから、(法)概念それ自体を目的化できないという、他の社会科学、例えば、社会学等と異なった性質がある。そのため、法の性質が十分に考慮されなければ、諸概念の理解が浅くなってしまう恐れはある。以下、実定法の学習上、欠くことの出来ないことがらについて、「法を知る」・「法を考える」ことがどのようになされていくのか、若干を述べる。
 
さて、法学入門において、「法を知る」ことは、学理的にみると、法のふたつの異なった性質を知ることから始まる。ひとつは、学習者をはじめ多くの人の日常的行動や報道される事件を、法を通して、改めて見ることにある。例えば、買い物や物の貸し借り、話題性の高い不祥事や刑事事件など、これらが法によってどう扱われるか、言い換えると、私たちが日ごろ、当たり前のこと、あるいは、避けるべきよくないことと済ましていることを、権利・義務あるいは法益侵害という法固有の概念を使い、当事者的関係の観点から明かしていく、法的な社会分析を提示して法の性質を理解させることである。もうひとつは、法の個々の条文の意味するもの、すなわち、法規定の意味を適用された判例から知ることである。個々の条文の意味することを知ることとは、条文がどのように使われているかを知ることである。そしてこれは、日常での話し方や言葉の使われ方を知ることと似ている。例えば、言葉として「ありがとう」,「すみません」は実社会のどの場合そしてどの場面で使われるのかは、それが使われる個々の場の状況の多くのことを理解しなければならない。「ありがとう」,「すみません」どちらも「ありがたいが迷惑」,「すみません助かります」とよく耳にする言葉からも分かるように、言葉の持つ意味は一様ではないが、これは言葉の使われる具体的な場面の状況の理解によっている。判例の学習が、判決書類や資料等多くのドキュメントに目を通さなければならないのは、法、特に条文の持つ、言葉と同じ性質によるのである。