「簿記/総論/総説」の版間の差分

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== 簿記学 ==
簿記学は、事業経営上生起する諸種の事象を、計数的に記録計算整理する方法を研究する学問である。簿記が学問であるかまたは技術であるかは縷々論ぜられるところであるが、簿記はそのいずれをも有し得る。換言すれば、簿記は二つの方面を有し、簿記理論は簿記学を形成し、簿記法は簿記技術を構成する。学問としての簿記は業績の確定を目的として、財産や資本の変動を計算整理する方法の理論的研究であり、簿記技術は抽象的な簿記理論の研究ではなくて、実際的立場から簿記遂行に関する諸知識を与えるものである。もちろんこれら両者は、相依り相たすけて相互の完全を期し得るのであって、前者は後者の助を藉って(借りて)完全な研究をなし得べく、また後者は前者の研究成果を得て始めてその完璧を期することができる。本書はかかる見地から、簿記理論を簡明に説き、主として簿記技術を説明することを目的とする。
 
簿記学というとき、それと会計学 Accounting とは同一学問に対する別の呼称にほかならない。簿記学も会計学もともに経営経済事象の計算的研究で、その目的もともに業績の確定にある。それゆえ学問として両者間には区別がない。これを沿革に徴するも、両者を区別すべきなんらの根拠をも見出し得ない。次に経営学も経営経済事象の研究を目的とするものであるが、これは現象そのものの研究であって、それは簿記のように必ずしも計算によって捕捉するを要せないし、また一定の形式に依拠する要もない。両者の関係は例えば、俳優と撮影技師のごときで、俳優は独自の立場から演出についての研究を行うべく、撮影技師もまたそれをいかにせば正しく撮影し得るかを研究し得るはずである。経営学は経営現象そのものの研究であり、簿記学は経営現象表示方法の研究である。