「政治学概論」の版間の差分

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==== 冷戦の分類 ====
[[ファイル:Francis Fukuyama BH2005.jpg|thumb|right|150px|フランシス・フクヤマ(1952生)はアメリカの政治評論家。シカゴで生まれ、ハーバード大学で政治学を修め、ランド研究所やジョージ・メーソン大学での教鞭をとる。冷戦後の世界政治についてイデオロギーの対立に民主主義が勝利したことを論じたことで知られる。彼の著作には『歴史の終わり』、『大崩壊の時代』など。]]
政体の分類は現実の政治において敵と味方を区別する基準となり得るものである。少なくとも20世紀において政体に基づく分類は世界を二つに二分する政治的な言説として重要であった。歴史的な起源としては第一次世界大戦が終結してからスターリン主義のロシア、ファシズムのイタリア、ナチズムのドイツなどの政権が成立してそれまでには見られなかった政治制度を構築したことに求められるかもしれない。これらの政治体制は従来の民主主義の政体とは異なる全体主義として認識された。第二次世界大戦が終結し、イギリスの首相チャーチルによってヨーロッパ大陸が「鉄のカーテン」に東西に仕切られたと表明され、冷戦がアメリカとソビエトの間で本格的に開始されると、このような政体の二分法は冷戦イデオロギーへと発展した。冷戦イデオロギーは全世界の国家を政体やイデオロギー、経済状況を基準に三つに大別するものであり、資本主義(capitalism)の世界、共産主義(communism)の世界、そして発展途上(developing)の世界に分類する。アメリカを中心とする西側陣営は資本主義世界に該当するものであり、私企業の活動、自由市場、物質的誘因に特徴付けられる経済体制を持ち、また自由民主主義の理念に基づいた選挙によって政治指導者が選出される。共産主義の世界にはソビエトを中心とする東側陣営が該当し、社会的平等、集団化、計画的な生産活動に特徴付けられた経済体制を備え、また政党の活動は制限されており、共産党の政治活動によってのみ統治は行われている。発展途上の世界はアジア、アフリカ、ラテンアメリカにおける多くの発展途上国が含まれ、第三世界(Third world)とも呼ばれる。経済発展が遅れているために国民総生産も低く、伝統的な政治体制かもしくは軍事体制に基づいた権威主義の政体となっている。この冷戦イデオロギーに基づいた分類は政治的、戦略的な意図から20世紀の世界政治を理解する際にしばしば使用されていたが、1970年代に中東における産油国の経済成長、アジア各国の産業化、権威主義諸国の民主化などの第三世界の変容によって、現実から乖離するようになった。さらにソビエト崩壊によって冷戦が終結してからは東側陣営の諸国が経済の自由化や政治の民主化を進めたために、共産主義の世界の実体も変容した。アメリカの政治評論家であるフランシス・フクヤマはこの事態に対してイデオロギー的な政治闘争であった歴史は西側の自由民主主義の正義が勝利したことで集結したという意味の「歴史の終わり」を主張した。