「有限群論序論」の版間の差分

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256 行
''G''を群、''H''をその部分群とする。''G''に次のような同値関係を与える。
 
<math>a,b \in G</math>に対し、<math>a \sim b \Leftrightarrow a^{-1} \cdot b \in H</math>
 
これが同値関係であることの確認は容易なので読者に任せる。''G''をこの同値関係で割った商集合を ''G''/''H''と書き、''G''の''H''による左剰余類と呼ぶ。''a''を代表元とする左剰余類の元を''aH''と書くことにする。
262 行
さて、せっかく群を群で割った商集合を考えているのだから、その商集合にも群の構造が入れば便利である。実はこの商集合には、''H''が''G''の正規部分群ならば、次のような自然な演算によって群の構造を入れることができる。
 
<math>aH \cdot bH = (a \cdot b)HabH</math>
 
このようにして定義した群を、''G''を''H''で割った商群とか、剰余群という。剰余群の単位元は<math>e_G H</math>、aHの逆元は<math>(a^{-1})H</math>である。
 
これが群であることを示さなくてはならないが、その前に正規部分群ならばこの演算がwell-definedであることを示さなくてはならない。この演算つまり、<math>a \sim a',b \sim b'\Rightarrow ab \sim a'b'</math>を示す必要がある。<math>a \sim a',b \sim b'</math>、すなわち<math>a^{-1}a',b^{-1}b' \in H</math>を仮定すると、<math>(ab)^{-1}a'b'=b^{-1}a^{-1}a'b'=(b^{-1}b')(b'^{-1}a^{-1}a'b') \in H</math>なで、<math>ab \sim a'b'</math>である。これでwell-defined性さえ確かめれば、ることができた。あと群になることを確かめることになるが、これはほとんど自明なの読者自ら試み。ここではりあえず略して先へ進むよい
 
== 準同型と準同型定理 ==
304 行
 
<math>\bar{f}(aK)=e_H</math>であるとすると、<math>f(a)=e_H</math>なので、<math>a \in \ker f</math>。よってa~<math>e_G</math>なので、<math>aH = e_G H</math>。すなわち<math>\ker \bar{f} =\{ e_G H \}</math>である。 //
 
準同型定理の応用例として、'''同型定理'''と呼ばれる以下の命題たちを証明してみよう。
 
'''定理''' 群''G'',''G' ''に対し、''H''は''G''の部分群、''N''は''G''の正規部分群、''H' ''は''G' ''の正規部分群とする。
:(1)<math>f:G \to G'</math>を全射準同型とするとき、<math>f^{-1}(H') \vartriangleleft G</math>であり、
::<math>G/f^{-1}(H') \cong G'/H'</math>
:(2)<math>HN :=\{ hn| h \in H,n \in N \}</math>は''G''の部分群、<math>N \vartriangleleft HN,H \cap N \vartriangleleft H</math>であり、
::<math>H/H \cap N \cong HN/N</math>
:(3)''H''は''G''の正規部分群、''N''は''H''の部分群でもあるとすると、<math>N \vartriangleleft H,H/N \vartriangleleft G/N</math>であり、
::<math>(G/N)/(H/N) \cong G/H</math>
 
(証明)
:(1)''f''と標準全射<math>\pi:G' \to G'/H'</math>とを合成した全射準同型<math>\pi \circ f:G \to G'/H'</math>に準同型定理を用いればよい。
:(2)''HN''が''G''の部分群、''N''が''HN''の正規部分群であることは明らかなので、包含写像<math>i:H \to HN</math>と標準全射<math>\pi:HN \to HN/N</math>を合成した全射準同型<math>\pi \circ i:H \to HN/N</math>に準同型定理を用いればよい。
:(3)全射準同型<math>G/N \to G/H,\bar{x} \mapsto \bar{x}</math>に準同型定理を用いればよい。//
 
== Sylowの定理 ==
準同型定理は一般の群について成り立つ重要な定理であったが、特に群の位数が有限である場合に限ると、さらに興味深い結果が表れてくる。次は、そのような結果の代表的なものであるシローSylowの定理について述べる。
 
=== 剰余類別 ===
315 ⟶ 330行目:
'''系''' Gを群、HをGの部分群とすると、<math>\sharp(G/H) \cdot \sharp H = \sharp G</math>。特に、Gが有限群のとき、その部分群の位数はGの位数の約数。
 
部分群の位数はもとの群の位数の約数、という事実は、しLagrangeの定理と呼しば役に立つれる。もっとも、Lagrange時代にはまだ人類は群という概念をらなかておきので、Lagrangeはこのような近代的な形の命題を考えたわけではない。
 
=== Sylowの定理 ===
335 ⟶ 350行目:
# p-Sylow部分群は互いに共役である。
# Sylow-p部分群の数をpで割った余りは1である。
 
有限群の構造をかなり具体的に指し示す、美しい定理である。
 
== 群の直積と半直積 ==