「ニホンイシガメの飼育法」の版間の差分

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3. 初冬~初春: 無給餌・無日光浴で、水槽内で沈んでいます。できるだけ水温変化が少ないことが重要ですから、日陰やできるだけ水量を多くすることが重要です。汚泥やわずかながら排泄物が観察されます。神経質にならない程度に換水をすることが薦められます。代謝がきわめて下がるため、体重は2.に比べてほぼ変化がありません。場合によってはわずかに増加することもあります。<br />
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4. 初春: ソメイヨシノが咲くころに、動き始めます。食欲はそれほど多くありませんが、食べるようなら少しずつ与えていきます。八重桜が咲くころには食欲も戻っているでしょう。このころには通常の飼育に移行できます。直射日光浴を行うことができますが、急激な温度上昇が起こるころでもあり、逃げ場をきちんと作っておいてください。5月に入ると、成熟したメスの場合、卵の発達により、食欲の減退が見られます。<br />
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繁殖<br />
 繁殖は大きくわけて2つのパターンが考えられます。<br />
 1つは気づいたら卵の産んでいた場合、もう1つはねらって繁殖させる場合です。<br />
 前者に関しては、野生の個体を入手して飼育していたらいつのまにか卵を産んでいた、長年飼っていたら卵を産んだという場合で、対処法としては孵卵と検卵、孵化仔の管理に分けられます。<br />
 後者に関しては、成熟した雌雄の調達、環境の制御、雌の肥育・栄養管理、産卵床の確保、抱卵の確認、産卵、孵卵、検卵、孵化仔の管理です。<br /><br />
 
 成熟した雌雄の調達<br />
 ニホンイシガメの雌雄は成熟時の大きさが異なります。成熟した雌は550-1500gあるのに対し、成熟した雄は150-250g程度にしかなりません。そのため、自然界の場合、雌の成熟に5-7年ほどかかるのに対し、雄は2-3年程度で繁殖する能力を持つと考えられます。これは、雄は短期間で繁殖集団に参加する戦略をとるのに対し、雌は産卵数を増大させる戦略をとっているためと考えられています。<br />
 
 カメの成熟は一般に体サイズに依存すると考えられていますが、ニホンイシガメの場合、年齢も条件になる可能性がります。つまり小さな個体でも年齢が一定以上に達していれば産卵をする可能性もあります。それに対し、飼育下では飼育開始後19年目に初めて抱卵した例もあります。成熟したかどうかの判定は、春-夏の抱卵の有無または雄の追尾行動や求愛行動の有無によって行います。<br />
 
 ニホンイシガメの雄の判別は甲長3.5cmほどから可能になります。判別点は総排泄孔の位置が甲羅の後縁を超える点にあります。他方雌は、総排泄孔の位置が甲羅の後縁上程度です。ニホンイシガメの性決定は温度依存性決定(TSD)であることは明らかになりつつありますが、詳しい条件はまだ明確にはされていません。ただし一般的にカメ類にみられる高温雌、低温雄型のようです。<br />
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 環境の制御<br />
 
 ニホンイシガメは与えられた環境に対してうまく適応をするだけの柔軟性を持っていますが、繁殖に関しては季節的な環境の変化や、適切な環境の設定が欠かせません。季節的な変化は上記の冬眠の項も参考にしてください。また繁殖のための適切な環境とは、雌が安心して産卵できる産卵床の設置や、雌の個体ごとの好みが選択できるような平面的な広さや安心して穴掘り・穴埋めが行える上空からの遮蔽物(たとえば植物など)が挙げられます。飼育下での繁殖の成功例は野外での粗放的な環境が多く、水槽のような狭い空間での繁殖の成功例は極めて少ないようです。<br />
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 雌の肥育・栄養管理<br />
 
 産卵までの流れは、冬眠明け→摂餌開始→抱卵に伴う拒食→産卵→摂餌開始→2クラッチ目抱卵に伴う拒食などのサイクルが繰り返されます。産卵間隔は約1か月ごとに繰り返されます。そのため、冬眠前から翌年の産卵前までに充分な肥育を行っておくことが、産卵後の雌の状態を左右します。よく太った雌は後肢の脇(股甲板と鼠蹊甲板の間)より脂肪がはみ出しています。この状態を肥満とし、飼育上好ましくないとする考え方もあります。しかしながら、4-5か月にわたる冬眠・拒食期間に加え、抱卵期間中の延べ1-3か月の拒食期間を乗り越えるためには、十分な脂肪の蓄積が欠かせません。成熟した雌は毎年産卵を行いますから、次年度の冬眠・産卵期を考慮するという点でも十分な脂肪の蓄積が欠かせません。<br />
 
ニホンイシガメの野生化での食性は雑食で、機会があればなんでも食べるようです。ですから栄養管理は多種類の餌をまんべんなく与えるという考え方、つまりバラエティーでバランスを取るという考え方が挙げられます。それに対し、栄養素を検討していろいろな材料を配合した乾燥飼料(EP: Extruded Pellet)にカルシウムや微量元素をダスティングしたもので栄養の欲求を満たすという考え方もあります。近年の配合乾燥飼料は、カメ専用のものなどが開発されています。これら配合乾燥飼料に加えて炭酸カルシウムの添加を行います。身近なものでいえば、鶏卵の卵殻をそのまま与えれば、ニホンイシガメは喜んで食べます。<br /><br />
 
産卵床の確保<br />
産卵床の材質には、砂、土、園芸用土など、およびそれらの混合が挙げられます。それぞれを十分に湿らせます。ここで大事なのは雌がここに埋めれば卵が孵化するという環境にしておくことが必要です。具体的には雌が掘っても途中で崩れない粘度が必要であること、孵化するのに必要な温度が確保されていることです。野外の飼育では適切な微小環境を雌がにおいを嗅ぐようなしぐさで吻先を地面につけるように判断しているようです。<br />
産卵床の厚さは、15cmほどもあればよいようです。<br />
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抱卵の確認<br />
抱卵の確認は、雌が拒食または摂餌量が減ってから確認します。X線によるレントゲン撮影のほか後肢の脇(股甲板と鼠蹊甲板の間)に小指を入れて、小指をやさしくかき回すことで判断できる場合があります。この確認方法は、充分に卵殻が形成されてから判断できます。<br />
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産卵<br />
産卵は産卵巣の作成→産卵→埋戻しの流れで行われます。<br /><br />
 
孵卵<br />
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検卵<br />
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孵化仔の管理<br />
 
==水草との相性==