「ニホンイシガメの飼育法」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
319 行
 
孵卵<br />
 
 人工的に孵卵する場合、必要なものは恒温槽、温度計、湿度を保てる基質です。<br />
 
 恒温槽には湿式と乾式に2パターンがあります。湿度を保つ基質で代表的なものは、水苔、バーミキュライト、パーライトなどがあります。これらの基質は園芸用土を構成する素材です。湿式恒温槽は水槽に水を入れ外部内部を問わず温度調節装置と制御装置、水の循環装置をつけ一定の温度を保つ方式です。小規模な場合は観賞魚用の機材を流用することができます。乾式恒温槽は水槽や発砲スチロールの箱などに温度調節装置と制御装置を設置します。このときに空気を循環させるためのファンを取り付け槽内に気温を一定に保ちます。<br />
 
ここでは、湿式恒温槽に水苔を基質を使った方法を紹介します。<br />
 
準備するものは、水槽、循環ポンプ、温度調整用のクーラー、発泡スチロール板、水苔、基質を入れるフタ付きタッパーです。水槽に温調設備と循環設備をセットして、発泡スチロール板で周囲を囲います。十分に強力な設備であれば発泡スチロールはなくてもかまいません。水苔は一旦水を含ませたあと、固く絞ります。湿らせた水苔をフタ付きタッパーに収容します。この時フタにはいくつかの孔をあけておきます。恒温槽の性質上、孔の大きさは特に神経質になる必要はありません。針や釘などでわずかな数(6-10個の卵あたり5-10穴程度)でもいいし、孵化した子ガメが脱走しない程度に大きくてもかまいません。<br />
 
卵を恒温槽に移す前に温度が安定していることを確認して使用しましょう。恒温槽の設定温度は25-30℃が安全です。ニホンイシガメは温度依存性決定(TSD)を持つと考えられており、現在その研究が行われています。<br />
 
産卵巣から取り出した卵の天地をできるだけ換えないようにして水苔に置いておきます。この時、鉛筆で卵の天井面に日付や印をつけておくと、後日なんらかのトラブルで卵がひっくり返っても元に戻すことができます。なお卵と卵の間隔は密接でも離しても大差はないようです。発生途中で死籠りした場合でも2か月程度は卵が腐ることはないようです。<br />
 
正常に発生している卵には、産卵されてから24-48時間以内に受精班とよばれる模様が出てきます。受精班が出てこない場合、残念ながら孵化は望めませんが、念のため孵卵しておくことをお勧めします。<br />
 
思いがけず産卵した場合は見つけた場所が水中であれ陸上であれ、水苔入りタッパーなどに収容しますが、一時的であれば湿らせた布などの上に置き、乾燥しないようにフタ付き容器に仮収容してから孵卵の準備をしても十分間に合います。<br />
<br />
<br />
 
 
検卵<br />
 
受精班が出現し、安定した環境で孵卵を行い、順調に発生が進んだ場合には産卵後4-6週間ほどで検卵を行うことができます。これは懐中電灯を使うキャンドリングと呼ばれる方法で卵の一部に光をあて、血管の発生や個体の動きを確認する方法です。6-8週目に地面方向から光を当てると天井方向にカメの形に影が見え、その前肢や後肢の動きまで観察できます。<br />
<br />
<br />
 
 
孵化<br />
 
 産卵後約2か月で孵化してきます。孵化直前の卵は卵殻がぼろぼろになり、水を吸収することで産卵時より1回り大きくなっています。また硬い鶏卵様の感触から、皮革のような感触に変化してきます。同じクラッチの子ガメの孵化はほぼ同時(36時間以内)におこります。発生していない、発生初期で止まってしまった場合はこの時期になっても卵殻の変化が現れません。また発生後期に死籠りした場合は皮革のような感触に変化してからほかの子ガメ孵化しても48時間以上たっても孵化しません。<br />
<br />
<br />
 
 
孵化仔の管理<br />