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一般に粒子は真空と呼ばれる何もない状態の中に1つの粒子が現われた状態として
記述されるのである。このように粒子の存在を量子力学的に記述する方法として
場の理論という方法が知られているのである。例えば、電磁気力をつたえる光子は
この記述法は粒子の存在を記述する手法を示唆していると考えられる。
つまり、場という量は何らかの仕方で粒子の記述をしていると考えられ、
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===== スカラー場=====
量子力学の基本法則では[[ハミルトニアン]]の中で運動量<math>p</math>で、
<math>\frac{\partial}{\partial \vec x}</math>で置き換えることが主張された。
このことは相対論的な式でも正しいことが予想される。
このとき、質量<math>m</math>を持つ粒子で運動量<math>p</math>の粒子を考えると、
その粒子の満たす式の1つとして、
:<math>
p^2 - m
</math>
があげられる。ここで、時空は4次元とし、計量はミンコフスキー計量を用いる。
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波動関数を求める式として、
:<math>
(-\partial
</math>
が得られる。この式をクラインゴルドン方程式と呼ぶ。この式を
:<math>
\phi = e
</math>
が得られる。ここで、<math>p</math>と<math>x</math>はどちらも4元ベクトルであり
2つの積は4次元ミンコフスキー計量を用いた内積である。この量を波動関数として
粒子が何もない状態を真空と呼ぶ。
このようなものを取ったとき、これを真空に作用させることで粒子がただ1つ存在する状態を作ることが出来る。
このような手段をくり返すことで粒子が存在する仕方が全てつくせることが予想されるが、
実際このような仕方は非常に便利であるので、ここではこの方法を導入する。
<math>\phi</math>は、ここまででは波動関数と考えて来た。ここからは、この量を場の演算子と見なす。
つまり、この量が真空や粒子がいくつかある状態によって張られるベクトルにかかる行列だと思うのである。
このときこの量は上で得た
:<math>
(-\partial^2 - m^2) \phi = 0
</math>
の方程式を満たすとする。更に、この演算子が
:<math>
</math>
を満たすこと
量子数<math>i</math>で代表される状態の降下演算子であり、
<math>\psi_i</math>は、量子数<math>i</math>で代表される状態の波動関数である。
このように、ある状態を生み出す昇降演算子とその状態に対応する波動関数との間に
対応をつけることでこれまでの結果をそれほど変化無く用いることが出来るのである。
上の条件を満たす演算子は、<math>\phi</math>を実数と仮定するとき、
:<math>
</math>
の交換関係があるものとする。ただし、<math>\delta_{ij}</math>は<math>ij</math>が
連続量ではデルタ関数となり、<math>ij</math>が離散的な量ではクロネッカーのデルタ
となるものとする。
===== スピノル場=====
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上で用いた方法をまとめるため、この系に対するラグランジアンを導入する。
ただし、古典力学の場合と異なり、ここで扱う<math>\phi</math>は、空間の1点ごとに
一般には異なった値を持つためラグランジアン自体も空間の各点で異なった値を持つ。
ラグランジアン密度と呼ぶことがあり、一般に<math>\mathcal L</math>で書くことが多い。
また、ラグランジアン密度を用いることから運動方程式を導出する手法も変化する。
古典力学では<math>\int dt L(q,\dot q)</math>を変分することで、
:<math>
\
</math>
を導いた。今回はラグランジアン密度を用いて
:<math>
\int d^4 x \mathcal L
</math>
を用いるため、同じ様な計算を用いると得られる運動方程式は
:<math>
\frac
</math>
となる。この方程式を用いてクラインゴルドン方程式を得るようなラグランジアン密度として、
:<math>
\mathcal L = \frac 1 2 \partial
</math>
が得られる。実際上の計算を適用すると、確かに
:<math>
(-\partial
</math>
が得られるのである。次に上のラグランジアンにより複雑な項を加えることを考える。
例えば、
:<math>
\mathcal L = \frac 1 2 \partial
- \frac 1 6 \lambda \phi
</math>
を考える。このときも同様の計算を用いると
:<math>
(\partial
</math>
が得られる。しかし、この式は<math>\phi</math>に関する非線形方程式であり、
簡単に解くことはできない。このため、ラグランジアンに含まれる
<math>-\frac 1 6 \lambda \phi^3</math>の項を摂動として扱うことが重要となる。
しかし、逆にこのことを用いると粒子間の相互作用を扱うことが出来ることが分かる。
例えば、2つの粒子<math>\phi_1,\phi_2</math>を取り、ラグランジアンの中に
<math>\phi_1 \phi_2</math>に比例する項をまじえたとする。
このとき2つの粒子をオペレーターとして見たとき、
それぞれの場は対応する粒子を消滅させるか生成する働きを持っている。
例えば、上の項を2つの粒子のクラインゴルドン方程式の解に対応する状態の
直積によって書かれた状態に対する摂動として用いたとき、
<math>|
<math>| <math>\langle 2_j|\phi_1 \phi_2|1_i\rangle</math>は一般には0でないことが分かる。
つまり、上のような項を含むラグランジアンが用いられる系では
粒子1は一定の確率で粒子2に変化することがわかる。
このようにして、場の考え方を用いると粒子の生成消滅の描像が簡潔に
記述できることが分かる。
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ここで摂動計算を行なうときに頻繁に用いられる量を導入する。
摂動計算に現われる量はラグランジアンの中に含まれる項である。
実際に<math>\phi^3</math>に比例する項は3つの<math>\phi</math>演算子の積として
摂動項に現われる。一般に、スカラー場の場の理論を組み立てるとき
ラグランジアンの中に常に現われる量として、
:<math>
\phi^*(-\partial^2 - m^2)\phi
</math>
がある。この項を摂動として扱うと、
:<math>
</math>
の量が現われるがこの量は通常発散することが知られている。
このため、この量を変化させて
:<math>
</math>
という量について考える。この量は一般には<math>x=x'</math>で発散しない。
186 ⟶ 155行目:
この量を得ることができる。
更にこの量をフーリエ変換して運動量表示にすることができるが、このときこの量は
<math>\frac 1 {p^2 - m^2}</math>で与えられる。
199 ⟶ 163行目:
摂動を統一的に扱うため相互作用表示と呼ばれる表示を導入する。
摂動を受けるハミルトニアンを<math>\mathcal H</math>とし、
摂動のハミルトニアンを<math>\mathcal V</math>とする。 更に、全ハミルトニアンを<math>\mathcal H'</math>とする。
このとき、演算子<math>O</math>に対して<math>O(t)</math>を :<math>
O(t) = e^{
</math>
で定義し、何らかの状態
:<math>
|\gamma(t)
</math>
で状態を展開する。ただし、<math>|m
*注意
:通常、系の時間発展は全ハミルトニアンの固有状態の時間発展だけで
:記述される。しかし、摂動を受ける場合には全ハミルトニアンの固有状態を
:知ることができないため、摂動を受ける前の状態を用いてその固有状態の
:組み合わせが時間的に変化するとすることが有効になる。詳しくは[[量子力学II]]参照。
:このとき時間発展の方程式は、
:<math>
i \frac{\partial{{}}}{\partial{t}}
</math>
で与えられるが、この式は
:<math>
\
= (\mathcal H +
</math>
:<math>
\
= \mathcal V \
</math>
で与えられる。更に、<math>m(t)
<math>\mathcal H</math>の固有状態<math>|n(t) :<math>
\dot
</math>
となる。
ここで、<math>a</math>に関する表式は<math>a</math>をベクトルと見た場合
:<math>
\frac{\partial{{}}}{\partial{t}} a(t) = \mathcal V(t) a(t)
</math>
と書くことが出来、この解は
:<math>
a = e^{\
</math>
で書くことが出来る。
しかし、ここでは<math>\mathcal V</math>は通常<math>\phi</math>などの演算子で書かれる量だが、 <math>\phi</math>については摂動を受ける前のハミルトニアンに関するハイゼンベルグ表示を用いたいので、
:<math>
\mathcal V(t) = e^{
</math>
を導入する。これは、時間発展の方程式について元のハミルトニアンの状態に
ついて内積を取るとき、<math>|m(t)
<math>|m\rangle,|n\rangle</math>について内積を取ることに対応する。
このとき時間発展の方程式は :<math>
\frac{\partial{{}}}{\partial{t}} a(t) = \mathcal V(t) a(t)
</math>
と書かれ、この解は
:<math>
a(t) = e^{\
= T e^{\
</math>
で書かれる。ここで最後の表式<math>T</math>は時間順序積演算子と呼ばれ、
<math>\mathcal V(t)</math>に関して、時間が前の演算子ほど右側に来るように配置することを示している。
一般にこのような計算で<math>\mathcal V(t)</math>に含まれる<math>\phi(t)</math>などの量は、
時刻が等しいときには可換ではないが、時刻が等しくないときには常に可換であるので、
このような並べ換えは常に可能である。この並べ換えは例えば経路積分による導出を
扱うときに重要になる。
272 ⟶ 239行目:
お互いの運動エネルギーが変化する情况は、このような摂動の式で記述できる。
例として<math>\mathcal V(t)</math>を
:<math>
\mathcal V(t) = \int d^
</math>
:<math>
|i(t)
</math>
を摂動の次数ごとに展開すると、
:<math>
|i(t)
+ \frac 1 2 (-i) \lambda \int d^4 x \int d^4
...) |i
</math>
となる。
:<math>\lambda</math>が十分小さいとき2項目以降は無視してよいので、
<math>|i(t)\rangle</math>は
:<math>
|i(t)\rangle = (1 -i \lambda\int d^4 x \phi^3(x))|i\rangle
</math>
で与えられるが、特に元の状態からの変化に注目すると時刻<math>t</math>での状態として
:<math>
</math>
が得られる。ただしここでは
:<math>
\int d^4 x = \int d^3 x \int_{t_0}^t
</math>
で与えられているものとする。ここで<math>
距離に近づいた時刻のことをいい、<math>t</math>は、測定を行なう時刻である。
実際的な素粒子の実験では常に<math>
ここで測定を始めたときに1つの<math>\
<math>\
計算する。実際の計算では運動量の位相空間の大きさも計算に入れる必要が
あるのだが、ここでは行列要素の計算だけにとどめる。
ただし、与えられたラグランジアンの摂動項は
<math>\lambda \phi_1 \phi_2 \phi_3</math>で与えられるものとする。
ここで最初の状態は運動量<math>
を持つものとする。このとき求める行列要素は
:<math>
</math>
ここで、異なった粒子に関する昇降演算子が互いに交換することを用いると
:<math>
\
</math>
の真空期待値が得られるが、<math>\phi</math>の展開式をあらわに用いると
:<math>
</math>
:<math>
</math>
が得られる。これらを上の式に代入すると、
:<math>
</math>
:<math>
= -i \lambda \int d^4 x e
</math>
:<math>
= -i \lambda \delta(
</math>
が得られる。ここで、デルタ関数は運動量の保存則を表わしており
このような計算では常に現われるものであるので、次からの計算では
落とすことができる。そのため、このときの計算値は、単に<math>-i \lambda</math>
と書かれる。ここでは<math>k_2</math>,<math>k_3</math>を定めていないが、
粒子の質量中心系では粒子1は静止しており
:<math>
\vec
</math>
が成り立つ。
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