「有限群論序論」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
K.ito (トーク | 投稿記録)
編集の要約なし
82 行
 
==群==
さて、ようやく'''群'''の話題にうつろう。群とは、モノイドにさらにもう一つ'''逆元'''というものを導入した代数構造である。
 
===逆元===
今、代数構造(''G'',·)があり、''G''には単位元''e'' ∈ ''G''が定義されているとする。
 
ある''x'' &isin; ''G''に対する逆元''x''<sup>&minus;1</sup>とは、
''x'' &middot; ''x''<sup>&minus;1</sup> = ''x''<sup>&minus;1</sup> &middot; ''x'' = ''e''
となるような''x''<sup>&minus;1</sup> &isin; ''G''のことである。
 
逆元は常にあるとは限らない。逆元が存在する元と存在しない元がともに混在している代数構造も考えられる。
 
====逆元が存在しない例====
自然数の集合'''N'''、足し算を+とする。自然数の集合に単位元0を加えた代数構造 ('''N''' &cup; {0} , +) について考える。
 
このとき、どのような''k'' &isin; '''N'''をとってきたとしても、
100 行
''k'' + ''x'' = ''x'' + ''k'' = 0
 
となるような''x''は負の数になってしまうため、''x'' &notin; '''N''' &cup; {0}であり、 0 以外のすべての元について逆元は存在しない。
 
===群の定義===
さて、群とは、任意の元について逆元の定義されたモノイドだった。すなわち、まとめると、次の1から3を満たす代数構造(''G'',&middot;)を群と呼ぶ。
 
1.単位元の存在
129 行
 
===群に関する基本的な定理===
これだけからいくつかの基本的な定理を見出すことができる。
 
====単位元の一意性====
単位元は、存在すれば、それは代数構造(''G'',&middot;)の中にただ一つ存在する。
 
証明:
153 行
 
====逆元の一意性====
群(''G'',&middot;)について考える。単位元を''e''とする。
元''x''&isin; ''G''に対する逆元''x''<sup>&minus;1</sup>もまた、存在すれば''G''の中にただ一つ存在する。
 
証明
 
群''x''&isin;''G''の逆元が二つあったと仮定しそれらを''a'',''b''&isin; ''G''であり、''a'' &ne; ''b''とするおくすなわち、
''a'',''b''&isin; ''G''かつ''a'' &ne; ''b''である。逆元の定義から
 
#''x'' &middot; ''a'' = ''a'' &middot; ''x''=''e''
#''x'' &middot; ''b'' = ''b'' &middot; ''x''=''e''
 
が成り立つ。このとき、''G''は群だから、結合則が成り立つことに注意すると
 
''a'' = ''a'' &middot; ''e''
184 ⟶ 185行目:
= ''x''<sup>&minus;1</sup> &middot; ''x''=''e''
 
である。これは''x''の逆元が''x''<sup>&minus;1</sup>であることを示しているが、同時に''x''<sup>&minus;1</sup>の逆元が''x''であることを示しているとも取ることができる。
 
(''x''<sup>&minus;1</sup>)<sup>&minus;1</sup>を考えると、(''x''<sup>&minus;1</sup>)<sup>&minus;1</sup>は''x''<sup>&minus;1</sup>の逆元であるから、
 
''x''<sup>&minus;1</sup> &middot; (''x''<sup>&minus;1</sup>)<sup>&minus;1</sup> =''e''
 
が成り立つ。先ほど示したように、逆元の一意性より、''x''<sup>&minus;1</sup>の逆元は存在すればただ一つである。(''x''<sup>&minus;1</sup>)<sup>&minus;1</sup>も''x''も、''x''<sup>&minus;1</sup>の逆元であるということは、
 
(''x''<sup>&minus;1</sup>)<sup>&minus;1</sup>=''x''