「線型代数学/線型空間」の版間の差分

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基礎的な用語に英訳を併記した。例えば「線形空間(linear space)」など。
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== 線型空間の定義 ==
=== 線型空間の公理 ===
以下、特に断りなければKを体(field)とする。一般の体をよく知らない場合には、Kを<math>\mathbb{R},\mathbb{C}</math>などに読み替えても概ね差し支えない。
 
一般の体K上の線型空間(linear space)とは、次の公理を満たすような集合(set)のことである。
 
'''公理'''
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一般の線型空間においてもこのようなベクトルの組があれば便利である。そのようなものがあるとき、このベクトルの組に特別な名前をつけよう。
 
'''定義''' <math>x_1,x_2,\dots,x_n</math>をVの元の組とする。Vの任意の元xに対し<math>x=a_1 x_1+a_2 x_2+ \dots + a_n x_n</math>となるようなKの元の組<math>a_1,a_2,\dots,a_n</math>が唯一つ存在するとき、<math>x_1,x_2,\dots,x_n</math>はVの基底(basis)であるという。
 
注意すべきなのは、基底は一つの線型空間に対し一組とは限らないということである。たとえば、先ほどの<math>e_1,e_2,e_3</math>も<math>\mathbb{R}^3</math>の基底であるが、一方
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つまり、(もし基底が存在すれば)基底の元の数は一定である。言い換えると、基底の元の数は各線形空間に固有の数値である。そこで、この数に名前をつけることにする。
 
'''定義''' <math>x_1,x_2,\dots,x_n</math>というVの基底が存在するとき、nをVの次元(dimension)といい<math>\dim V</math>であらわす。このときVはn次元K線型空間であるという。
 
そのような有限個の元からなる基底が存在しないとき、Vは無限次元であるという。実は、無限次元線型空間には無限個の元からなる「基底」が存在することが知られている。例えば、上で例としてあげた線型空間は最初のK<sup>n</sup>以外は無限次元の線型空間であるが、K[X]には1,X,X<sup>2</sup>,X<sup>3</sup>,...という基底がある。<math>C^\infty(\mathbb{R})</math>の基底や<math>\mathbb{R}</math>の<math>\mathbb{Q}</math>上の基底はここまで簡単に書き表すことはできないが、存在することは知られている。
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線型空間の部分集合がまた線型空間になっていることがある。そのようなとき、この部分集合を線型部分空間(あるいは単に部分空間)という。正確に書けば以下のとおりである。
 
'''定義''' <math>W \subset V</math>が次の性質を満たすとき、WはVの線型部分空間(linear subspace)であるという。
# <math>\forall x,y \in W \ x+y \in W</math>
# <math>\forall a \in K,\forall x \in W \ ax \in W</math>
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== 線型写像 ==
=== 線型写像の定義 ===
近代的な数学は、ある性質を満たす集合と、その集合たちの間の写像(mapping)とを調べることを基礎として発展してきた。ここでも、線型空間から線型空間への写像について調べてみる。先ほどと同様にして、どのような写像を調べる対象とするか、公理的に与える。
 
'''定義''' V,WをK線型空間とする。写像<math>f:V \to W</math>が次の性質を満たすとき、fはK線型写像であるという。
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:<math>im f=\{f(x) \in W | x \in V \}</math>をfの像(image)という。これはWの部分空間である。<math>\dim (im f)</math>をfの階数(rank)といい、rank fであらわす。
 
すぐにわかることとして、まずfが全射(surjection)であるということは、fの像がWと一致することと同値である。また、線型写像が単射(injection)であることは、核が0のほかに元を持たないことと同値である。
 
'''命題''' 線型写像<math>f:V \to W</math>が単射<math>\Leftrightarrow \ker f = \{0\}</math>
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線型写像の集合もまた線型空間となる。ここではそのような線型空間を扱うことにする。
 
'''定義''' VからKへの線型写像の全体<math>V^* = \{ f:V \to K | linear \}</math>は自然な加法とスカラー倍により線型空間となる。V<sup>*</sup>をVの双対空間(dual space)という。
 
双対空間はもとの空間に付随して自然に定まる線型空間である。ゆえに、下で見るようにVの性質をかなり受け継いでいる。
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'''命題''' <math>f:V \to W</math>を線型写像とする。写像<math>f^* : W^* \to V^* ; g \mapsto g \circ f</math>は線型写像である。
 
このようにして定まる写像をfの双対写像(dual mapping)と呼ぶ。
 
== 商空間 ==