「線型代数学/行列概論」の版間の差分

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Ninomy (トーク | 投稿記録)
行列の満たす条件式を、行列そのものとして表記するのは論理的にオカシイし、初学者に分かりづらいので修正。また、用語に英訳を併記。
10 行
== 定義 ==
{{定義|0.2.1}}
数mと数nはそれぞれ自然数とする、つまり<math>m,n \in \N</math> とする。mn個の'''K'''の元 <math>a_{i,j}\in\bold K(i=1,2,\cdots,m,~j=1,2,\cdots,n)</math>を、丸括弧で囲んだ中に次のように縦にm個、横にn個、表のように並べて書いたものを、m行n列の'''行列'''(matrix)と言う。(m&times;n)-行列とも言う。
:<math>\begin{pmatrix}
a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3} & \dots & a_{1,n}\\
24 行
 
{{定義|0.2.2}}
成分が全て'''K'''の元であるような(m&times;n)-行列全体の集合を ''M'' (m,n;'''K''')で表す。特に成分が全て'''K'''の元であるn次行列全体の集合を ''M'' (n;'''K''')で表す。
{{定義終わり}}
 
{{定義|0.2.3}}
成分が全て0の行列を'''零行列'''(zero matrix)といい、Oと書く。特に(m&times;n)-行列であることを明示する場合には、O{{sub|m,n}}と書き、n次行列であることを明示する場合にはO{{sub|n}}と書く。
{{定義終わり}}
 
40 行
== 演算 ==
=== 和・定数倍 ===
体K上のmn行列<math>A</math>,行列<math>B</math>が、つまり<math>A,B \in M(m,n;\bold K)</math>について、行列の和 A+B を次のように定義する。
{{定義|0.2.5}}
<math>A=\begin{pmatrix}
61 行
{{定義終わり}}
 
また、体K上のm行n列行列<math>A</math>で,つまり行列<math>A \in M(m,n;\bold K)</math>と定数<math>\lambda \in \bold K</math>について、行列の定数倍 <math>\lambda A</math> を次のように定義する。
{{定義|0.2.6}}
<math>A=\begin{pmatrix}
85 行
次の性質は明らかであろう。
{{定理|0.2.8}}
m行n列の行列A,行列B,行列C、つまり<math>A, B, C \in M(m,n;\bold K)</math> 、また<math>\lambda, \mu \in \bold K</math>のとき、
* 結合法則: (A+B)+C=A+(B+C)
* 交換法則: A+B=B+A
96 行
 
=== 積 ===
m行n列の2つの行列AとB、つまり<math>A \in M(m,n;\bold K), B \in M(n,l;\bold K)</math>について、行列の積ABを次のように定義する。
{{定義|0.2.9}}
<math>A=\begin{pmatrix}
197 行
==単位行列==
{{定義|0.2.11}}
<math>A=(a_{i,j}) \in M(n;\bold K)</math> に対して、<math>a_{k,k} \in \bold K, ~k=1,\cdots,n</math>を、n次正方行列Aの'''対角成分'''(diagonal element)という。
{{定義終わり}}
 
{{定義|0.2.12}}
対角成分がすべて1で、その他の成分がすべて0であるようなn次正方行列を'''単位行列'''(elementary matrix、あるいはidentity matrix)といい、E<sub>n</sub>やI<sub>n</sub>と表す。nが明らかである場合にはしばしば省略して、EやIと表すこともある。
 
すなわち、
239 行
a_{1,n} & a_{2,n} & \cdots & a_{m,n}\\
\end{pmatrix} \in M(n,m;\bold K)</math>
をAの'''転置行列'''(transposed matrix)と言い、<math>^tA</math>と表す。
{{定義終わり}}
つまり<sup>t</sup>Aとは、Aの縦横をひっくり返した行列である。
260 行
行列 <math>A=(a_{i,j}) \in M(m,n;\C)</math> の全ての成分をその複素共役と置き換えた行列
:<math>(\overline{a_{i,j}}) \in M(m,n;\C)</math>
を、Aの'''複素共役行列'''(complex conjugate matrix)といい、<math>\overline{A}</math> で表す。
{{定義終わり}}
 
330 行
\end{cases}</math>
 
:このδ<sub>i,j</sub>を、クロネッカーのデルタ(Kronecker delta)と言う、またはクロネッカーの記号と言う。この時、次のことを示せ。
 
::(1)<math>A=\begin{pmatrix}
623 行
===その他===
 
正方行列(a<sub>i,j</sub>)において、a<sub>i,i</sub>を対角成分と言う。また、対角成分意外が全て0である正方行列のことを''対角行列''(diagonal matrix)と言う。対角行列が正則であるための、必要十分条件は、対角成分が全て0でないということである。4章で示される。対角行列の中でも更にスカラー行列と呼ばれるものがある。それはcE(c≠0)の事である。勿論Eはc=1の時のスカラー行列で、対角行列である。また、スカラー行列cEを任意行列Aに掛けると、CAとでる。対角行列が定義されたので、固有和が定義できる。
 
定義(3.2.6)固有和または跡(trace)
 
:正方行列Aの固有和