「高校化学 天然高分子化合物」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
ページを立ち上げ。
 
多糖類について、アミロペクチンとかニトロセルロースとかトリアセチルセルロースなどを記述。
47 行
 
マルトース、セルビオース、ラクトースは還元性を示す。
 
==== ヘミアセタール構造 ====
有機化合物中の、ある一つのC原子に対して、そのC原子にヒドロキシル基 -OH とエーテル結合 -O- が隣り合ってる構造を、'''ヘミアセタール構造'''という。グルコースで、ヘミアセタール構造をもつのは、一箇所だけである。-OH結合だけを持つC原子は数箇所あるが、-O- 結合が隣り合ってない場合はヘミアセタール構造とは呼ばない。
水溶液中のグルコースでは、このヘミアセタール構造が変形してアルデヒドを形成している。
 
このヘミアセタール構造の有無を、糖類の構造式を見て調べることで、糖類の水溶液中の還元性を予測できる。まず、構造式中のエーテル結合-O- を持つ部分を探してそのOに隣り合ったC原子が-OH を持つかどうかで、還元性の有無を予測できる。
 
 
59 ⟶ 65行目:
 
この反応を'''転化'''と言い、転化で得られた糖を転化糖という。
 
還元性を示さない。ヘミアセタール構造で縮合が行われていることによる。
 
作物は、サトウキビやテンサイなどにスクロースが含まれる。
89 ⟶ 97行目:
 
=== 多糖類 ===
==== デンプン ====
デンプンは多数のαグルコースが脱水縮合して出来た構造を持つ。
(C<sub>6</sub>H<sub>10</sub>O<sub>5</sub>)<sub>n </sub>の構造を持つ。nは数百から数万、数十万である。(数値で表せば、nは10^2~10^5 程度の規模)
 
* デンプンの性質
デンプンは熱水に溶けてコロイド構造になる。デンプンは冷水には溶けにくい。
 
酵素'''アミラーゼ'''によって、デンプンは加水分解される。このアミラーゼによるデンプンの加水分解の結果、デンプンの重合数が少なくなった'''デキストリン'''(C<sub>6</sub>H<sub>10</sub>O<sub>5</sub>)<sub>n </sub>を生じる。そしてデキストリンは、さらに二糖類の'''マルトース'''に分解される。
 
マルトースに対しては、酵素'''マルターゼ'''によって、グルコースになる。
 
 
デンプンからグルコースまでの順序を化学式にまとめれば、
 
(C<sub>6</sub>H<sub>10</sub>O<sub>5</sub>)<sub>n </sub>デンプン→ (C<sub>6</sub>H<sub>10</sub>O<sub>5</sub>)<sub>m</sub> デキストリン → C<sub>12</sub>H<sub>22</sub>O<sub>11</sub> マルトース→ C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub> グルコース
 
である。(デンプンとデキストリンの重合数について、n>mとした。)
 
デンプンには還元性は無い。したがってデンプンは、フェーリング液を還元しない。
 
===== ヨウ素デンプン反応 =====
ヨウ化カリウム水溶液KIにより、青紫色に呈色する。加熱すると、無色になる。
 
デンプンは水溶液中では、分子内の水素結合により、らせん構造をとる。このらせん構造の中にヨウ素が入り錯体を形成する。
加熱によって無色になるのは、熱運動によって、ヨウ素との錯体を維持しないほうが、エネルギー的に安定になるからである。熱水で無色になっても、冷却すると、再び、もとの青紫色の呈色を示すようになる。
 
===== アミロースとアミロペクチン =====
デンプンの種類のうち、αグルコースが直鎖状に結合したものを'''アミロース'''と言う。αグルコースが、ところどころ枝分かれした構造のデンプンを'''アミロペクチン'''という。枝分かれの割合はαグルコース数十個につき、一個の枝分かれの程度である。
 
もち米のデンプンは、アミロペクチンが100%である。ふつうの植物のデンプンには、アミロースが20%程度でアミロペクチンが80%程度ほど含まれている。
 
* アミロースとアミロペクチンの違い
*   アミロース
グルコースの1位と4位が結合して重合した構造になっている。
ヨウ素デンプン反応では、アミロースは青色。多くのヒドロキシル基を持ち、極性を持つ部分が多いため、熱湯には、比較的、溶けやすい。冷水には溶けにくい。
 
 
*   アミロペクチン
グルコースの1位と4位が結合して重合したほかに、1位と6位が結合した重合構造になっている。
1位と6位の結合のため、構造に枝分かれ上の分岐が起こる。
ヨウ素デンプン反応では、アミロペクチンは赤紫色。アミロースとの色の違いは、直鎖状の長さの違いによって、ヨウ素との結合力に違いが生じたからある。ヨウ素と反応することから分かるように、アミロペクチンもらせん構造を取る。枝分かれをするものの、分かれた枝の先がそれぞれらせん構造をとる。
熱湯には、溶けにくい。冷水にも溶けにくい。
 
 
==== グリコーゲン ====
グルコースが縮合重合したもののうち、アミロペクチンよりも枝分かれが多いものが'''グリコーゲン'''である。分岐の頻度は、おおむね8~12基に一回の程度の分岐である。枝分かれが多いため放射したような網目構造をとり、らせん構造をとらない。このため、極性をもった部分が外側に出やすく、水溶性が高い。
ヨウ素デンプン反応では、赤褐色を示す。
 
 
* グリコーゲンを含む生体には、動物の体内で栄養素として多いことから、'''動物デンプン'''ともよばれる。
* グリコーゲンは肝臓や筋肉に多く含まれる。
 
 
 
==== セルロース ====
'''セルロース'''の構造は、多数のβグルコースが、グリコシド結合によって、縮合した構造である。
 
セルロースのグリコシド結合では、各グルコースの向きが交互に表・裏・表・裏を繰り返すが、これを'''βグリコシド結合'''という。また、βグリコシド結合の結果、構造はまっすぐであり、直鎖状である。正確には、回転角が約+20°と約-20°の結合を繰り返すので、平均的にセルロース分子は直鎖状になる。
 
(なお、デンプンを構成するグリコシド結合はαグリコシド結合であり、およそグルコース6個でらせんの回転が1回転する。)
 
 
セルロースは'''シュバイツアー試薬'''に溶ける。
シュバイツアー試薬とは、水酸化銅Cu(OH)2を濃アンモニア水に溶かしたものである。水溶液中でイオンが、'''テトラ アンミン イオン''' [Cu(NH<sub>3</sub>)<sub>4</sub>]<sup>2+</sup> になる。
 
 
* セルロースは、冷水や熱水には溶けない。セルロースは、エーテルやアルコールなどにも溶けない。
* セルロースは、還元性を持たない。
 
セルロースの示性式は、[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>3</sub>]<sub>n </sub>である。グルコース1単位あたり3個のヒドロキシル基OHを持つ。したがって、酸と反応させるとエステルを作りやすく、酢酸や硝酸とエステルをつくる。
 
工業上は硝酸とのセルロースのエステルである「ニトロセルロース」(後述する。)が、特に重要である。
 
 
==== セルロースの誘導体 ====
===== ニトロセルロース =====
セルロース[C6</sub>H7</sub>O2</sub>(OH)3</sub>]n</sub>に、濃硝酸および濃硫酸の混合溶液を作用させると、セルロースのOH基の一部または全部がエステル化される。セルロース中のグルコース1単位あたり、3個のOH基の一部または3個全部が硝酸エステル化されたものをニトロセルロースという。特にセルロース中のグルコース1単位のうち、3個のOH基すべてが硝酸エステル化されたもの [C6H7O2(ONO2)3]n を'''トリニトロセルロース'''という。
 
 
[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>3</sub>]n + 3n HONO<sub>2</sub> → [C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(ONO<sub>2</sub>)<sub>3</sub>]n</sub> + 3n H<sub>2</sub>O
 
 
このトリニトロセルロースは火薬の原料である。
 
===== コロジオン =====
セルロース中の2個のOH基がエステル化したものはジニトロセルロースという。このジニトロセルロースを、エタノールとエーテルの混合液に溶かしたものを'''コロジオン'''という。混合液には水分などを含まないので「水溶液」では無いことに注意。
コロジオンの溶液を蒸発させると、薄い膜が残る。これは半透膜の材料に使われる。コロジオンから得られた半透膜のことをコロジオン膜ともいう。
 
===== セルロイド =====
ニトロセルロースをエタノールに溶かし、ショウノウを加えて得られる樹脂をセルロイドという。
 
 
 
===== アセテート類 =====
セルロースを無水酢酸、氷酢酸および少量の濃硫酸との混合物を反応させる。すると、分子中のOH基のHがCOOH基で置換される'''アセチル化'''が起きて、'''トリアセチルセルロース'''が生成する。
 
[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>3</sub>]<sub>n</sub> + 3n (CH<sub>2</sub>CO)<sub>2</sub> O → [C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OCOCH<sub>3</sub>)<sub>3</sub>]<sub>n</sub> + 3n CH<sub>3</sub>COOH
 
 
 
 
 
== タンパク質 ==