「高校化学 天然高分子化合物」の版間の差分

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レーヨン繊維とか酵素とかを記述。
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[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>3</sub>]<sub>n</sub> + 3n (CH<sub>2</sub>CO)<sub>2</sub> O → [C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OCOCH<sub>3</sub>)<sub>3</sub>]<sub>n</sub> + 3n CH<sub>3</sub>COOH
 
トリアセチルセルロースはヒドロキシル基OHを持たないため、通常の溶媒(メタノール等)には溶解しづらい。しかし、トリアセチルセルロースは常温の水または温水で、エステル結合の一部が加水分解して'''ジアセチルセルロース'''
 
[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)(OCOCH<sub>3</sub>)<sub>2</sub>]<sub>n</sub>
 
になる。これはヒドロキシル基をもつので、アセトン溶媒に溶解するようになる。(アセトンやメタノールなどは有機溶媒の中では、極性がやや大きい。また、クロロホルムなどの極性の小さい溶媒にはトリアセチルセルロースは溶解する。)
 
これを細孔から押し出して乾燥させて、紡糸したものを'''アセテート繊維'''という。
語「アセテート」の意味は、「酢酸エステルの」という意味である。
 
 
===== レーヨン =====
* 銅アンモニアレーヨン
水酸化銅(II)であるCu(OH)<sub>2</sub>を濃アンモニア溶液に溶かした溶液を'''シュバイツアー試薬'''という。このシュバイツアー試薬溶液にセルロース(具体的には脱脂綿など)を溶かすと、粘度のある液体が得られる。この粘い液体を細孔から希硫酸の中にゆっくり押し出すと、セルロースが再生する。こうして得られた繊維を'''銅アンモニアレーヨン'''または'''キュプラ'''という。
 
 
* ビスコースレーヨン
セルロース(具体的には脱脂綿など)を濃い水酸化ナトリウム溶液に浸す処理をして'''アルカリセルロース'''(化学式は[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>2</sub>ONa]nである。)にしてから、紙などで挟んでから絞って水気を切って、つぎに二硫化炭素C2Sと反応をさせると、'''セルロースキサントゲン酸ナトリウム'''(式は[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>2</sub>OCSSNa]<sub>n</sub>である。)という物質になる。これを水酸化ナトリウム水溶液に溶かすとコロイド溶液になる。このコロイド溶液を'''ビスコース'''という。このビスコースを、細孔から希硫酸の中に押し出して、セルロースを再生させて紡糸したものが、ビスコースレーヨンという繊維である。
 
そして、ビスコースを細孔からではなく、細長いすきまから膜上に押し出したものを'''セロハン'''という。
 
 
* 再生繊維
レーヨンのように、天然繊維を一度化学的に処理して溶液にした後、糸として、元の化学式を再生させた繊維を'''再生繊維'''という。
なお、アセテート繊維は化学式が変わっているので再生繊維でない。アセテート繊維は化学式が元のセルロースから変わっている繊維で、また人工物だけから得られた合成繊維でもないので、アセテート繊維などは半合成繊維という。
 
== タンパク質 ==
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Pb<sup>2+</sup> + S<sup>2-</sup> → PbS
 
== 天然繊維 ==
繊維とは、細くて糸状のものをいうが、その繊維のうち天然にある糸状の繊維を'''天然繊維'''という。石油などから合成した繊維は'''合成繊維'''という。
 
天然繊維のうち、植物からとれるもの(たとえば綿や麻など。主成分はセルロースなど)を'''植物性繊維'''といい、動物から取れるもの(羊毛や絹など。主成分はタンパク質。絹とはカイコから取れる繊維。)を'''動物性繊維'''という。
絹の主成分はフィブロインである。羊毛の主成分はケラチンである。
羊毛や絹はタンパク質であるので、キサントプロテイン反応を呈する。
 
=== 化学繊維 ===
合成繊維や、天然繊維を溶媒に溶かしたり化学反応させたりと化学的に処理させたものなど、素材の合成に化学的な処理を必要とする繊維を'''化学繊維'''という。
天然繊維を溶媒に溶かしたのち、再び繊維に戻したものを'''再生繊維'''という。再生繊維としては、たとえばレーヨンがある。
天然繊維を化学的に処理して組成を変化させたものは'''半合成繊維'''という。半合成繊維としては、たとえばアセテート繊維がある。
 
=== 酵素 ===
ある種のタンパク質には触媒の働きを持つものがある。この触媒として機能するタンパク質を'''酵素'''(こうそ)という。
ただし、酵素は、一般の無機触媒や金属触媒と異なる性質も持つ。酵素は有る特定の物質にしか作用しない。これを'''基質特異性'''(きしつとくいせい)という。そして酵素が作用する物質および分子構造を'''基質'''(きしつ)という。
 
たとえば、酵素インペルターゼはスクロースの加水分解にしか作用せず、マルトースやラクトースなどの他の二糖類にはインペルターゼは作用しない。また、マルターゼは、マルトースにしか作用しない。
 
==== 失活 ====
また、酵素はタンパク質であるので、タンパク質が変性する状況では、酵素はその能力を失う。熱変性などで、タンパク質が修復不可能になると、酵素の触媒能力もまた修復不可能となり、酵素を冷却しても、もはや触媒として機能しなくなる。このように酵素が触媒としての能力を失って、もはや酵素ではなくなったことを'''失活'''(しっかつ)という。
 
==== 最適温度 ====
酵素の触媒作用が最も働く温度があり、酵素にもよるが、一般に、それは35℃から40℃といった温度である。
つまり、動物の体温の温度の周辺である。50℃以上など、これらより高温では熱変性で酵素の構造が破壊される。最適温度より低温にした場合は、低温の間は酵素としての作用が弱まるが、適温に戻すと、再び酵素としての触媒能力を取り戻す。
低温で酵素としての能力を失うことは一般には失活とは呼ばない。
 
 
==== 最適pH ====
酵素には、その場所のpHによって、触媒の働きの反応速度が変わる。もっとも酵素が働くpHを'''最適pH'''という。
最適pHの値の傾向は、酵素の種類にもよるが、おおむねpH=6~8といった、中性付近か、弱酸性の付近で、もっともよく働く。たとえばアミラーゼはpH=6~7の付近が最適pHである。すい臓の中で働く酵素のトリプシンはpH=8で最適pHである。
 
なお、胃酸の中で働く酵素の'''ペプシン'''は最適pHがpH=2の付近である。