「高等学校工業 原動機/熱力学の基礎」の版間の差分

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式の字下げ。
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物理学や化学などでの熱力学で知られるボイル・シャルルの法則では、理想気体の状態方程式は次の形である。
 
:<math> PV=nR_0 T </math>
 
が成り立つ。式中のPは絶対圧での圧力[Pa]。Vは気体の占める体積[m<sup>3</sup>]。Tは気体の絶対温度[K]である。
このとき、定数<math>R_0</math> はガス種によらず一定である。
 
:<math> R_0=8.314 </math> [J/(mol・K)]
 
である。この定数<math>R_0</math> を普遍気体定数(universal gas constant)または一般気体定数と呼ぶ。
17 行
機械工学および流体力学では、モルnの代わりに、質量mを使い、次の式に変形された状態方程式を使うことが多い。
 
:<math> PV=mRT </math>
 
比例定数R[J/(kg・K)]はガス種によって変わる定数なので注意。この係数Rを'''気体定数'''(gas constant)という。分子量をMとした場合、
 
:<math> R_0=MR=8314 </math> [J/(mol・K)] ( =8.314[kJ/(mol・K)] )
 
の関係がある。
28 行
なお、体積のVを右辺に移行すると、密度&rho;が、式に出てくる。
 
:<math> P=(m/V)RT= \rho RT </math>
 
ここで、小文字のvを用いて、密度の逆数を'''比体積'''と定義する。
つまり、比体積vの定義は
 
:<math> v=\frac{1}{\rho} </math>
 
である。
41 行
エンタルピーを記号Hで表す。
 
:<math> H=U+PV </math>  [J]
 
が定義である。
47 行
なぜなら、
 
:<math> c_p \Delta T =\Delta U+P \Delta V </math>
 
いっぽう、
:<math> \Delta H=\Delta U+(\Delta P)V+P \Delta V </math>
 
で仮定の定圧変化より\Delta P=0だから、
 
:<math> \Delta H=\Delta U+P \Delta V=c_p \Delta T </math>
 
流体に熱が加わる場合の流体計算では、エンタルピを用いたほうが、式の形が単純になることが多い。
61 行
なぜなら、U+PVとPV=mRTを連立させると、
 
:<math> H=U+PV=U+mRT </math>
 
となるが、内部エネルギUは理想気体では、温度のみの関数だから、
 
:<math> \Delta H=\Delta U+\Delta ( mRT)=0+0=0 </math>
 
となる。
73 行
熱機関の効率は以下の式で定義される。温度<math>T_1</math>の高温部から熱量<math>Q_1</math>が機関に入り、温度<math>T_2</math>の低温部に熱量<math>Q_2</math>を出した場合、効率の定義式は
 
:<math>\frac{ Q_1 -Q_2}{ Q_1 }</math>
 
である。熱機関の最大効率は、可逆機関の場合であり、その式は、温度を用いて、
 
:<math> \frac{ Q_1 -Q_2}{ Q_1 }=\frac{ T_1 -T_2}{ T_1 }</math>
 
と表せる。
83 行
さて、不等号を用いて、可逆機関と不可逆機関の両方の場合をまとめて表せば、
 
:<math> \frac{ Q_1 -Q_2}{ Q_1 } </math> ≦ <math> \frac{ T_1 -T_2}{ T_1 }</math>
 
である。これを変形し、
 
:<math> 1-\frac{ Q_2}{ Q_1 } </math> ≦ <math> 1-\frac{ T_2}{ T_1 } </math>
 
 
:<math>\frac{ T_2}{ T_1 } </math> ≦ <math> \frac{ Q_2}{ Q_1 } </math>
 
 
:<math>\frac{ Q_1}{ T_1 } </math>≦ <math>\frac{ Q_2}{ T_2 } </math>
 
 
99 行
ここで、熱量Qを温度Tで割った値Q/Tが出てきたが、この量を'''エントロピー'''(entropy)といい、記号Sを用いて次の式で定義される。
 
:<math> S=\frac{Q}{T} </math> [J/K]
 
エントロピを用いると、熱効率の式は次の形に書き換えられる。
 
:<math>S_1 </math>≦ <math>S_2 </math>
 
となり、不可逆過程の場合は、熱機関の中でエントロピが増加して、放出されたことになる。
526 行
熱伝導率の定義より、
 
:<math>q = \lambda \frac{\Delta T}{d} </math> [W/m<sup>2</sup>]
 
が成り立つ。
534 行
なので、このような歴史的経緯から、上記の式の、
 
:<math>q = \lambda \frac{\Delta T}{d}</math>
 
は、フーリエの業績をたたえて、フーリエの式、あるいは'''フーリエの法則'''(Foulier's Law)と呼ばれる様になった。
555 行
さて、温度差があると、熱は高温から低温へと輸送されるのだった。まず2点の温度差を
 
:<math> \Delta T=T_1-T_2 </math>
 
とすると、この温度差に、熱の移動量は比例することになる。しかし、まだ、2点間の壁の厚さによる影響を考慮していないのである。複数個の壁を用意し、厚さの異なる壁を複数個ほど用意したとして、各壁の両側の温度差を同じにして実験をすれば、当然、壁が厚いほど、熱は移動しにくいだろう。
 
:<math> \Delta \frac{T}{d} </math>
 
は、この条件を満たしている。
575 行
このとき、流体を通過する熱流束''q''は
 
:<math>q=h(T_1-T_2) </math> [W/m<sup>2</sup>]
 
で表せる。ここで比例定数hは、'''熱伝達率'''(heat transfer coefficient)もしくは伝熱係数や熱伝達係数などという。hの単位は[W/(m^2・K)]である。
590 行
熱伝導の公式も熱伝達の公式も、両方とも、温度差qによって熱流束が発生することには変わらないので、以下のようにして、熱輸送率kの定義式が、温度<math>T_1</math> と温度<math>T_2</math> の2点に対して定義される。
 
:<math>q=k(T_1-T_2) </math> [W/m<sup>2</sup>]
 
式の形は、熱伝達と類似してるが、熱輸送率の場合は、熱を伝えるものが固体か流体かは問わない。
596 行
たとえば、平板に対して、熱輸送率を定義した場合、平板の熱輸送率''k''は、熱伝導率を''λ''、平板の厚さを''d''とすれば、平板の熱輸送率''k''は、
 
:<math>k=\frac{\lambda}{d} </math>
 
となる。
606 行
そうすると、壁1番を通過した熱流束qは、すべて壁2番を通ると考えることができるので以下の式になる。
 
:<math>q=\lambda_1 \frac{T_1-n_1}{d_1} </math>
 
:<math>q=\lambda_2 \frac{n_1-T_2}{d_2} </math>
 
である。
そして、求めたい複数の壁を重ねた場合の熱通過率は、
 
:<math> q=k(T_1-T_2) </math>
 
である。
まず、各壁の熱伝導率の式を、熱通過率の式に変換したほうが、計算しやすいので、変換しよう。すると以下の式になる。
 
:<math>q=\frac{\lambda_1}{d_1} (T_1-n_1) </math>
 
:<math>q=\frac{\lambda_2}{d_2} (n_1-T_2) </math>
 
次のようにして、熱流束を、熱伝達率で割って、右辺を温度だけの式にする。
 
:<math>\frac{q}{\lambda_1 /d_1} =(T_1-n_1) </math>
 
:<math>\frac{q}{\lambda_2 /d_2} =(n_1-T_2) </math>
 
2式を足し合わせれば、未知数<math>n_1</math>が消える。
 
:<math>\frac{q}{\lambda_1 /d_1}+\frac{q}{\lambda_2 /d_2}=(T_1-n_1)+(n_1-T_2)=T_1-T_2 </math>
 
これより
 
:<math>q(\frac{1}{\lambda _1/d_1}+\frac{1}{\lambda_2/d_2})=T_1-T_2 </math>
 
 
そして、q/(T_1-T_2)が、両壁を合成した熱通過率kなので、
 
:<math>k=\frac{q}{T_1-T_2}=\frac{1}{\frac{1}{\lambda _1/d_1}+\frac{1}{\lambda _2/d_2}} </math>
 
である。
645 行
各壁の熱通過率を、壁1番の熱通過率<math>k_1</math> と、壁2番の熱通過率<math>k_2</math> とすると、合成した熱通過率を以下の形に書ける。
 
:<math>k=\frac{1}{\frac{1}{\lambda _1/d_1}+\frac{1}{\lambda _2/d_2}} =\frac{1}{(1/k_1)+(1/k_2)} </math>
 
これより、
 
:<math>\frac{1}{k}=\frac{1}{k_1}+\frac{1}{k_2} </math>
 
である。
659 行
結果を言うと、合成の越通過率をkとして、壁の高温側の流体の熱伝達率を<math>h_1</math> 、壁の厚さをdとして、壁の熱伝導率をλ、壁の低温側の熱伝達率を<math>h_2</math> とすると、(温度の変数は、計算の過程で消える。)
 
:<math>\frac{1}{k} = \frac{1}{h_1}+\frac{d}{\lambda}+\frac{1}{h_2} </math>
 
になる。
665 行
右辺のd/λが、一項だけ他の項と違い変わって見えるかもしれないが、この項については、壁の熱輸送率を<math>k_w</math> とすれば、
 
:<math>\frac{1}{k_w}=\frac{d}{\lambda} </math>
 
だから、
 
:<math>\frac{1}{k} = \frac{1}{h_1}+\frac{1}{k_w}+\frac{1}{h_2} </math>
 
とも書ける。
675 行
一般には、
 
:<math>\frac{1}{k} = \frac{1}{h_1}+\frac{d}{\lambda}+\frac{1}{h_2} </math>
 
の式が、流体に挟まれた平板壁の合成の熱輸送率の公式として使われる。