「中学校理科 第1分野」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
抵抗率について、「抵抗率」という言葉を使わずに、中学生用に記述。ついでにリトマス紙の画像やポリエチレンテレフタラート画像を貼付。
高等学校理科 物理I 電気から磁力について引用。
906 行
:陰極線の実験は、高い電圧を用いるので、危険な実験です。なので、学生のかたは、実験をしないほうが良いと思います。)
 
====電流による発熱====
 
ここでは、電流を電熱線に流す実験と、電球に流す実験を行なう。ここでは、電流を流すことで電熱線では発熱が得られ、電球に流すことで光が得られることがわかる。得られる光や発熱の強さは、それらにかける電圧を大きくすることで強くなる。
 
ここで、得られる光や発熱の強さは、電熱線や電球が消費する'''電力'''によって定まる。電力はある時間当たりに抵抗が消費するエネルギーのことである。電力は
: 電力 = 電圧 * 電流
で与えられ、電力の単位は[W](ワット)である。(詳しくは、[[高等学校理科 物理I]]を参照。)
電力P[W]を式で書けば、
: P[W] = V[V] × I[A]
である。
1000Wのことをキロワットと言い、1kWと表す。
 
:(*参考
オームの法則が成り立つ回路の場合、電流Iについて
:V = RI
が成立ち、電力の式 P=VI に、この V=RI を代入すれば、
: 電力P = VI = <math>I^2 R</math>
が成り立つ。そのため、発する光や発熱は、かける電圧の2乗に比例するはずである。
 
同様に、電力の式 P=VI に、 I=V/R を代入すれば、
: 電力P = VI = <math>\frac{V^2}{R}</math>
となる。なお。以上の式は、あくまでもオームの法則が成り立つ場合での式である。
抵抗に流れる電流による抵抗熱を利用した機器なら、たいていの機器ではオームの法則がなりたつ。
中学の学習で扱う機器なら、ほとんどの電気回路でオームの法則が成り立つので、この結果が成り立つと思って良い。
 
;熱量
電熱を利用して水を熱することを考えよう。1Wの電力を1秒間、加えた時の熱量を1ジュールという。ジュールの単位記号はJなので、1ジュールは式では 1J とあらわす。
電気の発熱量を表す場合は、カロリーではなく、なるべくジュール単位で表すのが一般的である。
 
なお、カロリーとは、水1グラムを1℃上昇させるのに必要な熱量である。
 
ジュールとカロリーとの関係は、およそ
:1cal = 4.18J
である。
 
読者は「カロリーという単位があるのに、なぜ、わざわざジュールという単位をつくったのだろうか?」と疑問を持つかもしれない。その質問に、お答えしよう。
 
ジュールという単位は、力学という物体の運動法則を調べる学問での「仕事」という物理量が元になっているのである。力学で「仕事」という物理量があり、その「仕事」の単位がジュールなのである。
 
:仕事の大きさ(J)=力の大きさ(N) × 力の向きに動いた距離(m)
 
上の式で、Jはジュール。Nはニュートン。mはメートル。
 
詳しくは後のエネルギーに関する節で習う。
 
ここでは、ともかく、電気の発熱量はジュールという単位で表すのが一般的だと知っていただければ良い。
 
;電力量
ジュールという単位は、ワットを基準に考えれば、1Wの電力を1秒間、発熱させた時の熱量だった。
実生活では、30Wの蛍光灯を3時間ほど使用したりと、1Wよりも、もっと大きな電力を、1秒よりも、はるかに長い時間、用いることが多い。
 
電力のワットに、時間(=60分のこと)を掛けた量を'''電力量'''(でんりょくりょう)という。単位はワット時[Wh]とかキロワット時[kWh]である。
 
計算例として、たとえば使用電力が30Wの蛍光灯を3時間ほど用いたら、使用電力量は 30[W]×3[h]=90[Wh] である。
 
 
なお、電力量の単位 Wh の末尾のhは英語のhour(「アワー」、1時間、2時間と言った「時間」の意味。)の略である。
 
===電流の利用===
919 ⟶ 977行目:
: [[画像:Magnet0873.png|200px|磁界]]
 
;磁力線
磁場の向きが分かるように図示しよう。磁石の作る磁場の方向は、砂に含まれる砂鉄の粉末を磁石に、ちりばめて、ふりかけることで観察できる。
 
{{clear}}
これを図示すると、下図のようになる。(画像素材の確保の都合上、写真と図示とでは、N極とS極が逆になっています。ご容赦ください。学校教科書などで、磁力線の図示を確認してください。)
 
[[File:VFPt cylindrical magnet.svg|thumb|left|300px|磁力線の図示]]
 
このような磁界の図を'''磁力線'''(じりょくせん)という。磁力線の向きは、磁石のN極から磁力線が出て、S極に磁力線が吸収されると定義される。棒磁石では、磁力の発生源となる場所が、棒磁石の両端の先端付近に集中する。そこで、棒磁石の両端の先端付近を'''磁極'''(じきょく、magnetic pole)という。
 
磁力線の向きを、どうやって確認するかというと、方位磁針を用いればいい。その場所の方位磁針の向きが、その場所での磁力線の向きである。
 
永久磁石が作る磁力線を図示する場合は、N極から力線が出て、S極で磁力線が吸収されるように書く。磁力線は、磁界を図示したものなので、磁極以外の場所では、磁力線が分岐することはない。N極以外の場所では磁力線が生成することもなく、S極以外の場所で磁力線が消滅することもない。
 
また、磁力線が交わったりしてはいけないし、枝分かれもしてはいけない。もし、交わらして磁力線を書くと、その場所での方位磁針の向きが2通りあることになり、不合理な図となる。
 
{{clear}}
 
==== 磁化 ====
鉄やコバルトやニッケルに磁石を近づけると、磁石に吸い付けられる。また、鉄やコバルトやニッケルに永久磁石などで強い磁力を与えると、鉄などから磁石を遠ざけても、鉄やコバルトやニッケルそのものが磁場を周囲に及ぼすようになる。 このような、もともとは磁場を持たなかった物体が、強い磁場を受けたことによって磁場を及ぼすようになる現象を'''磁化'''(じか)という。
 
また、'''鉄'''と'''コバルト'''と'''ニッケル'''は、磁化されることのできる金属であり、このような磁化される物質を'''磁性体'''(じせいたい)という。
 
必ずしも、すべての金属が磁性体とは限らない。たとえば、銅は磁化されないので磁性体ではない。
また、金属以外の物質は、一般に磁化はされず、したがって金属以外の物質は磁性体ではないのが一般である。
 
<!--
銅は、正確に言うと、反磁性体であって非磁性体とは違うが、初めて磁化を習うかもしれない中学生に、そこまで教えるのは困難だと思うので、銅を非磁性体として扱いました。
-->
 
磁化された鉄などは、べつに永久磁石ではないので、反対方向から磁化すれば磁気が打ち消されて磁化が消える。また、外界との磁界との相互作用などで、磁化された鉄などの磁力は、自然に磁化が消失していく。
 
 
===== 電流の作る磁界 =====
: [[File:junior_high_sci_magnetic_field.png|left]]
電流は、その周囲に磁界を作る。これは方位磁針を電気回路の近くに置くことで確認できる。
 
;右ねじの法則
直線電流がつくる磁界の向きは、電流の向きに右ねじを進めるときに、右ねじを回す向きである。この電流と磁界の向きとの関係を'''右ねじの法則'''という。
 
コイルのような曲線部を持つ回路が作る磁界の向きも、回路の各部分の電流が右ねじの法則に従って、磁界を作っている。
 
電流の周りに生じる磁界の強さは電流の強さと導線からの距離だけで決まることが知られている。(しかし、ここでは具体的にその強さを求めることはしない。詳しくは[[高等学校理科 物理I]]などを参照。)
 
;ソレノイドコイルの磁界
導線を棒状のものにまきつけて、ある一定の長さにしたものを、[[w:コイル]]と呼ぶ。コイルに電流を流したときにも磁石のときに見たような磁界が流れることが知られている。
: [[画像:Basic Inductor with B-field.svg|200px|コイル内の磁界]]
 
磁界の向きは、方位磁針で確認できる。
実際にはコイルの形にするまでもなく、ある導線に対して電流を流したときには常に、その回りには磁界が生じているのである。
: [[画像:junior_high_sci_magnetic_field.png]]
 
コイルの回りに生じる磁界の強さは電流の回りに生じる磁界の強さの和で表わされる。また、電流の周りに生じる磁界の強さは電流の強さと導線からの距離だけで決まることが知られている。(しかし、ここでは具体的にその強さを求めることはしない。[[高等学校理科 物理I]]などを参照。)
 
<!--
936 ⟶ 1,037行目:
)
-->
 
 
===== 電磁石 =====
電気回路に電流を流すと磁力が発生するのだった。この電流が作る磁界を、永久磁石の代わりに磁力の発生源として利用したものが'''電磁石'''(でんじしゃく)である。
 
実際の電磁石では、磁力を強めるために、コイルのソレノイド部分に鉄の棒を収める構造になっている。鉄芯が磁化させることで、磁力を強めている。
 
 
 
====電磁誘導と誘導電流====
[[File:Lorentzkraft-graphic-part2.PNG|thumb|磁界中で導線に働く力の向き。<br>電流の向きIから磁力線の向きBに右ねじを回した向きが、導線に働く力Fの向き。]]
 
[[File:Lorentzkraft-graphic-part1.PNG|thumb|磁界中でプラスの電気を帯びた粒子に働く向き。粒子で考えた場合。<br>速度vから磁力線の向きBに右ねじを回した向きが、粒子に働く力Fの向き。]]
 
ここでは、磁界の中に電流を流したときに起こる現象について述べる。磁石を使って生じる磁界の中に、導線を通し、その導線に電流を流してみる。このとき、電流を流す導線は、電流の向きと磁界の向きによって定まるある方向に力を受ける。この力の向きは、電流の向きを反対にすると導線に働く力の向きも反対になり、磁界の向きを反対にすると導線に働く力の向きも反対になる。
 
ここでは、磁界の中に電流を流しときに起こる現象について述べる。磁石を使って生じる磁界の中に電流を流してみる。このとき、電流を流す導線は、電流の向きと磁界の向きよって定まるある方向に力を受ける。この力の向きは、電流の向きを反対にすると反対になり、磁界の向きを反対にすると反対になる。また、働く力の向きは電流の向きと磁界の向きの両方に直交する。ここで、電流の向きと磁界の向きから力の向きを定めること(詳しく、指導要領の範囲外である。[[w:フレミングの法則]]、[[高等学校理科 物理I]]などを参照。
 
<!--
952 ⟶ 1,066行目:
 
* 注意
実際には流れる電流の向きも定まっており、その電流によってコイルの回りに生じる磁界が磁石によって生じた磁界を打ち消すように電流が流れるはずである。(詳かし、このこと指導要領の範囲外である。[[w:レンツの法則]]、[[高等学校理科 物理I]]を参照。
 
導線のある場所の磁力が弱まると、その磁界の変化を妨げる方向に電流が流れる。たとえば、仮にソレノイドコイルに永久磁石を近づけた時に右回りに電流が流れたとしよう。すると、このソレノイドコイルから永久磁石を遠ざけると、今度は反対向きである左回りに電流が流れることになるのである。このような現象を[[w:電磁誘導]](でんじゆうどう)と呼び、磁石の動きによって生じた電流を[[w:誘導電流]](ゆうどうでんりゅう)と呼ぶ。現在の火力発電や水力発電の[[w:発電所]]でも同じ原理を用いて発電を行なっている。火力発電では磁界の中で蒸気を用いて[[w:タービン]]をまわし、それによって誘導電流を発生させるのである
 
電磁誘導で電流が流れるのは、磁力が変化している間のみである。永久磁石をコイルから遠いところからコイルに近づけたら、その磁石を動かしている間は電流が流れる。しかし、近づけおわった状態で磁石を固定していても誘導電流は流れない。
====電流による発熱====
 
誘導電流の向きは、誘導電流の作る磁界が、磁石の場所の変化による磁界の変化を妨げる向きである。たとえば磁石を近づけた場合は、誘導電流の磁界の向きは、その磁石の磁力に反発する向きであり、実際に磁石は反発力を受け、回路から磁石の移動を妨害される力を受ける。
ここでは、電流を電熱線に流す実験と、電球に流す実験を行なう。ここでは、電流を流すことで電熱線では発熱が得られ、電球に流すことで光が得られることがわかる。得られる光や発熱の強さは、それらにかける電圧を大きくすることで強くなる。
同様に、磁石を遠ざけている間の誘導電流の向きは、磁力を強める向きであり、実際に磁石は吸引力を受け、回路から磁石の移動を妨害される力を受ける。
 
このように、磁界が変化している間のみ、誘導電流が流れる。また、その誘導電流の向きは磁界の変化を妨げる向きである。
ここで、得られる光や発熱の強さは、電熱線や電球が消費する[[w:電力]]によって定まる。電力はある時間当たりに抵抗が消費する[[w:エネルギー]]のことである。電力は
これを'''レンツの法則'''という。
: 電力 = 電圧 * 電流
 
で与えられ、電力の単位は[W]([[w:ワット]])である。(詳しくは、[[高等学校理科 物理I]]を参照。)
現在の火力発電や水力発電の[[w:発電所]]でも同じ原理を用いて発電を行なっている。火力発電では磁界の中で蒸気を用いて[[w:タービン]]をまわし、それによって誘導電流を発生させるのである。
 
<!--
*注意
実際にはここでは電圧Vが一定であるため電熱線などの抵抗Rを一定とすると、オームの法則より、電流Iについて
V = IR
が成立ち、電力は
: 電力 = VI = <math>V^2/ R</math>
が成り立つ。そのため、発する光や発熱は、かける電圧の2乗に比例するはずである。
-->
 
== 化学変化と原子、分子 ==