「民法第95条」の版間の差分

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Kinuga (トーク | 投稿記録)
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===「法律行為の要素」とは===
表示された意思の内、「法律行為」と言える主たる内容の一要素、つまり重要な部分をいう。この観点からみて要素の錯誤とは、判例・通説によればその錯誤がなければ表意者が意思表示をしなかったであろうという'''主観的因果性'''、錯誤がなければ通常人―本人特有の個人的事情や信条を捨象した一般人―も一般的な取引の通念に照らし意思表示をしないであろうという'''客観的重要性'''という要件を満たすものとする。
*証券会社に勤務するサラリーマンであるAはBとの間でマンションの一室の購入契約を結び、入居して3か月ほどは満足して家族と共に暮らしていた。ところが、隣人からその部屋は3年前に'''一家心中があった'''ところであるときかされた。この件についてBからの説明は無く、同部屋の価格も通常の一般的な価格と特に違いのあるものではなかった。
*:このような事例で既に住み込んでいるにもかかわらず(不法行為などでなく)錯誤無効を主張する表意者は、無効になればすぐに退去することになるのだから、このような事情を事前に知っていればマンション購入の意思表示をしなかったであろう(因果性の肯定)。また実際、「いわくつき」の物件については一般の物件と扱いを異にし、事情をある程度説明した上で相応の値段で売却ないし賃貸するというのが不動産業における慣習となっている。そこから推測すれば、その部屋で過去に忌まわしい事件があったかどうかは、通常その部屋を購入するかどうかの意思決定に非常に大きな影響を及ぼすのが一般であると認定できるだろう(重要性の肯定、及び''要素の錯誤''要件の充足)。なお、このような慣習を判断の基にすれば、当該不動産にまつわる過去の陰惨な事実の一切について業者側から何ら説明が無く、しかも価格通常の不動産と大差無いものであった場合、表意者は通常その事情をうかがい知ることはできない(本条但書重過失要件の否定)。したがって、保護に値する表意者というべきであり、後述する'''内容の錯誤'''として錯誤無効が認められる可能性が高い。もっとも、次のような場合には問題である。