「中学校理科 第1分野」の版間の差分

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高等学校理科 物理I/熱2013年11月2日 (土) 13:31‎ よりシャルルの法則を引用。
用語に英訳を併記。いったん投稿。
52 行
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反射面に垂直な直線('''法線''')と入射した光とがなす角を[[w:入射角]](にゅうしゃかく、incidence angle)と呼び、法線と反射した光とがなす角を[[w:反射角]](はんしゃかく、angle of reflection)と呼ぶ。
<br>このとき、
:; 入射角 = 反射角
62 行
 
;屈折
また、例えば空気中を直進して来た光が水面を通過したときには、光は水面でその方向を変えることが知られている。この現象を光の[[w:屈折]](くっせつ、refraction)と呼ぶ。屈折した光と物質境界の垂直方向(法線)とがなす角度を[[w:屈折角]](くっせつかく、refracting angle)と呼び、光の屈折の大きさは各々の物質が持つ[[w:屈折率]](くっせつりつ、refractive index)によって決まる。屈折率がより小さい物質からより大きい物質に光が入射するときには、屈折角はより小さくなることが知られている。反対に、屈折率がより大きい物質からより小さい物質に光が入射する場合、屈折角は大きくなる。
 
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86 行
[[ファイル:Total internal reflection.jpg|thumb|250px|全反射]]
[[ファイル:Fibreoptic.jpg|thumb|left|光ファイバー]]
屈折率が大きい媒質から小さい媒質に光が入るときに、入射光が境界面を透過せず、すべて反射する現象が起きる。これを'''全反射'''(ぜんはんしゃ、total reflection)という。全反射は、入射角が大きくなると起こる。
応用例として、光ファイバー(Optical fiber)では光信号を全反射させることで信号を送っている。
 
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98 行
:[[画像:junior_high_sci_lens.png]]
 
レンズの2つの面は、ある半径の球の一部を切り取った形をしている。このとき、元の球の半径をレンズの[[w:曲率半径]](きょくりつはんけい)と呼ぶ(曲率半径はレンズの[[w:焦点距離]](しょうてんきょり、focal length)と関連しているが、焦点距離と曲率半径の関係について詳しく扱うことはしない。[[w:レンズ]](lens)などを参照。)。
 
 
[[ファイル:Lens3-ja.svg|thumb|400px|図1-2 物体が焦点距離より遠いときは実像ができる]]
[[ファイル:Lens3b-ja.svg|thumb|400px|図1-3 物体が焦点距離より近いときは虚像ができる]]
ここでは球面凸レンズを扱う。球面凸レンズは、レンズの両側に[[w:焦点]](しょうてん、focal point)と呼ばれる点を持つことが知られている。焦点とレンズの中心との距離はレンズの両側で等しい。この、レンズと焦点との距離を、"焦点距離"(しょうてんきょり、focal length)と呼ぶ。焦点距離の記号は、 f で表すことが一般である。
 
一般にレンズはプラスチックやガラスなどの材質で作られるが、これらは光を通す材質であると同時に、空気よりも[[w:屈折率]]が高いことが知られている。
123 行
上で述べたレンズの性質を利用して、レンズを通り抜けた光が結ぶ像の位置と大きさについて調べることができる。レンズが結ぶ像の性質は、対応する物体がレンズの焦点距離より遠くにあるかどうかで変化する。ここではまず物体がレンズの焦点距離より遠くにある場合について述べる。
 
このとき、物体から放たれる光線は次のような軌跡(きせき)をたどる。
* 図
図の中で物体の先端からレンズを通過する光線を3本描いたが、この3本はそれぞれ上で挙げた3つの光線に対応している。これらは1点で交わる。
 
ここで、物体から放たれた光は3本の光線が交わった点に像を作る。この像を[[w:実像]](じつぞう、real image、リアルイミッジ)と呼ぶ。実像は常に物体に対して上下、左右がともに逆([[w:倒立]])(ぎゃくとうりつ)の向きで現れ、その大きさとレンズからの距離は、物体とレンズとの距離によって決まる。
 
実像の大きさと現れる位置の性質は、物体とレンズの距離がレンズの焦点距離の2倍に達したときに変化する。ちょうど2倍のときには、実像の大きさはちょうど物体と同じになり、実像とレンズの距離は物体とレンズの距離と等しくなる。一方、物体とレンズの距離が焦点距離の2倍より大きいときには実像の大きさは実際の物体の大きさよりも小さくなり、実像の位置は、物体とレンズの距離よりもレンズに近くなる。一方、物体とレンズの距離が焦点距離の2倍より小さいときには実像の大きさは実際の物体の大きさよりも大きくなり、実像の位置は、物体とレンズの距離よりもレンズから遠くなる。
168 行
 
音楽のド,レ,ミ,ファ,・・・などを思い起こせば分かるように、音には高さが有る。
音の高さは、音の空気の振動の、振動の多さである。1秒あたりの振動の回数を、周波数(しゅうはすう、frequency、フリークエンシ)あるいは振動数(しんどうすう、frequency、フリークエンシ)と言うのだが、この振動数の大きい音ほど、音が高くなる。振動数の小さい音は、低い音になる。
 
音は空気中などの物体を伝わるので、真空中では音は伝わらない。
188 行
出来る。空気の密度の高い部分は、自然に周囲に拡散してしまうが、その分、拡散した先の密度が高くなるので、結果的に空気の密度の高さが伝わっていくことになる。さて、音源は、この間も振動しているのであった。音源の振動のタイミングによって、音源が空気を押しているときは、音源のとなりの空気は密度が高くなるが、逆に音源が引っ込んでいるときは、空気の密度は小さくなる。だから、そして音源の振動によって、空気のみつども振動する。このとき、空気の圧力が高い部分はより圧力が低い回りの部分に空気を押しやろうとする。空気の振動が伝搬され、それが音として聞こえるのである。
 
空気の振動が、われわれ人間の耳の中に有る'''鼓膜'''(こまく、eardrum)を振動させ、それが人間の脳には音として認識される。
 
;発展
音波のように、密度の高い部分と低い部分が交互に伝わる種類の波を'''疎密波'''(そみつは)という。また、音波は進行方向と、振動の方向が同じであるが、このような波を'''縦波'''(たてなみ、longitudinal wave)という。音波は縦波の一例である。
 
いっぽう、水面をつたわる波は、進行方向と、振動の方向が直角であるが、このような波を'''横波'''(よこなみ、transverse wave)という。
 
 
;共鳴
音は周りの物を振動させるのであった。音が伝わっていった先に有る物体が、音が伝わったことによって振動をして、その物体もまた音を出すことが有る。このような現象を共鳴(きょうめい、resonance、レゾナンス)という。
 
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208 行
音波の波は縦波であったが、これをグラフで見やすいように、縦軸に密度をとって、横軸に位置や距離をとってグラフに表すことがある。
 
このように、波は周期的に、おなじパターンを繰り返す。グラフでの波の高いところを'''山'''(やま)といい、波の低いところを'''谷'''(たに)と言う。そして、山と山との間の距離を'''波長'''(はちょう、wave length、ウェイブレングス)という。(波長を、谷と谷との間の距離と言っても良い。一般の波では、結果は同じ。)記号で表す場合は、波長はλ(「ラムダ」と読むギリシャ文字)で表すのが一般である。
振動数が、一秒間に振動する回数である。音の高さは振動数で決まり、振動数が大きいほど、音も高い。
 
音の大きさは振幅(しんぷく、amplitude)で決まる。振幅が大きいほど、音も大きくなる。
 
 
224 行
===力と圧力===
 
ここでは、[[w:力]](ちから、force)と[[w:圧力]](あつりょく、pressure)について述べる。一般に「力が強い」、「強い力が働く」、「学力」「気力」など力という言葉はいろいろな意味で用いられる。しかし、科学的な考え方をする時には、力は常に1つの意味で用いられる。
 
力は大きさの他に方向という性質が有る。反対向きの力は打ち消しあう。
232 行
 
;圧力
ある面積あたりに働く力を圧力(あつりょく、pressure、プレッシャ)という。
さて、ある面に働く圧力が一定だとすると、働く面積に比例してその面に働く力の合計は大きくなる。
 
;大気圧
地表を取り巻く空気の層を大気(たいき、atmosphere、アトモスフィア)という。大気にも質量があるので、この質量により重さの力がかかり、大気中の物体に重さがかかるので、大気中の物質は大気から力を受ける。この大気から受ける力は、圧力で表示できる。大気がおよぼす圧力を[[w:大気圧]](たいきあつ、atmospheric pressure)という。
 
;浮力
液体の中にあるものに対しては、[[w:浮力]](ふりょく、buoyancy)が働くことが知られているが、これは物体の上面に働く圧力と、下面に働く圧力との差によって与えられる。
 
 
246 行
====力の性質====
 
止まっている物体を動かしたいときには、その物体を手で押したり、道具を使って押したりする。ここで、そのように'''止まっている物体を動かす性質'''を持つものを[[w:力]](ちから、force、フォース)と呼ぶ。力は、手を使ったり道具を使ったりして物体に対して与えることが出来る。また、磁石などを用いることで、物体に触れることなく力を与えることも出来る。
 
物体を動かす時、対象が粘土などの柔らかいものなら、物体を変形させることができる。この様に力には'''物体を変形させる働き'''もある。
 
* 注意
実際には、あらゆる物体が[[w:分子]](ぶんし、molecule、モルキュール)の集合によって出来ていることを考えると、物体を変形させることは、分子の並びを変化させることであり、物体を動かす働きの一つとして考えられることに注意。分子については後に扱う。
 
ここでは力のつりあいの条件について考える。力のつりあいとは、物体に複数の力が働いていて、しかも物体が動いていない情況のことを指す。変形しない物体に対して様々な方向から複数の力を働かせる実験を行なう。この実験の結果によると、物体に対して反対向きの方向に、同じ大きさの力をかけているときには、物体は動かないことが知られる。この情況を、物体に働く力がつりあっているという。また、同じ方向に2つの力をかけたときには、物体に働く力はそれら2つの力の和と同じだけの力がかかった時と同じ振舞いを示す。また、反対方向に2つの力をかけたときには、物体に働く力はそれら2つの力の差と同じだけの力がかかった時と同じ振舞いを示す。このように、物体にかかった力は、互いに強めあったり弱めあったりすることがわかる。
443 行
液体が気体になることを'''気化'''(きか)という。
水を熱して100℃に近づけると、容器の底の方の水が泡立つが、これは水に溶けていた空気が気化したものである。この現象を'''沸騰'''(ふっとう)という。
水が気体になったものを'''水蒸気'''(すいじょうき、water vapor、ウォーター ベイパー)という。
 
沸騰の実験を行うときは、急激に沸騰すると、湯が吹き飛んで危険なので、急激な沸騰を防ぐために'''沸騰石'''(ふっとうせき、boiling chip)を加える。なお、急激に沸騰することを突沸(とっぷつ)という。
 
一度、使用した沸騰石は再利用してはいけない。沸騰石が突沸を防止できるのは最初の一回だけである。また、長期間、液体につけた沸騰石も能力を失う。
455 行
;水上置換法
科学実験で発生させた気体を集める場合、気体が'''空気よりも軽い'''物質の場合は、空気中を上昇していくので、補集用のフラスコなどは'''下'''向きにして集める必要がある。
水に溶けない気体の場合は、水を満たした水槽に、フラスコを開いた口を下向きにして入れ、フラスコの内部は水(みず)で満たしておき、このフラスコの中にガラス管などで気体を導く。この方法を'''水上置換法'''(すいじょうちかんほう)という。
 
酸素や水素は水に溶けにくいので、水上置換法で集められる。
470 行
====物質の融点と沸点====
 
ここでは物質の[[w:沸点]]と[[w:融点]]について説明する。物質は温度や圧力を変化させることで"気体"(きたい、gas、ガス)、"液体"(えきたい、liquid、リキッド)、"固体"(こたい、solid、ソリッド)の間を移り変わることが知られている。

ここでは特に、温度による変化について述べる。

上であげた"気体"、"液体"、"固体"のことを物質の[[w:三態]](さんたい)と呼び、これらの間の変化を[[w:状態変化]](じょうたいへんか)と呼ぶ。特に、状態変化のうち固体から液体への変化を[[w:融解]](ゆうかい、Melting)と呼び、液体から気体への状態変化を[[w:蒸発]](じょうはつ、evaporation)と呼ぶ。また、融解が起こる温度を'''融点'''(ゆうてん、melting point)と呼び、蒸発が起こる温度を'''沸点'''(ふってん、boiling point)と呼ぶ。日常的な例では水の温度を 摂氏0度 にすることで水を固体にすることができる。また、水の温度を摂氏100度にすることで、水を[[w:水蒸気]]にすることができる。これらは状態変化の例である。
 
純物質の状態変化の際に物質の温度変化を観察すると、特徴的な結果が観察できる。
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食塩水などのように、かなりの高温にしないと融解しない固体の物質(食塩の主成分の塩化ナトリウムの融点は約800℃と、水の沸点を大きく上まわっている。)が溶けている水溶液を考える。
 
まず、食塩水は、沸点が100℃よりも少しだけ高くなる。この現象を沸点上昇(ふってんじょうしょう、boiling-point elevation)という。
 
食塩水を加熱すると、沸点で水だけを含む純粋な水蒸気が得られる。水蒸気には、塩は含まれていない。
 
この蒸気を冷ませば、純粋な水が得られる。このように蒸発を利用して、溶液から液体を分離する方法を'''蒸留'''(じょうりゅう、distillation)という。
 
 
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===== 融解と凝固 =====
;凝固
水(みず)を冷やすていくと摂氏0℃で氷(こおり)になる。このように、ほとんどの液体は、冷やしていくと固体になる。液体が固体になることを'''凝固'''(ぎょうこ、freezing)と言い、そのときの温度を'''凝固点'''(ぎょうこてん、freezing point)と言う。
凝固が終わりきるまでの、水(みず)と氷(こおり)が混じっている混合物のときの温度は0℃のままである。
 
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凝固点まで冷やしても、凝固が開始しない場合がある。この場合、ほんの少しの振動などを液体に加えたりすると、凝固が開始するのが一般である。
 
凝固点で凝固が開始しない場合に、凝固を開始させないように静かに冷却を続けていくと、凝固点より低い温度でも、液体でいられる。この現象を'''過冷却'''(かれいきゃく、supercooling、スーパー・クーリング)という。
 
 
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* 酸素
[[w:酸素]](さんそ、oxygen、英:オキシジェン)は空気中に20%ほどの割合で含まれる気体であり、我々にとって身近な気体である。我々は[[w:呼吸]](こきゅう、breathing、ブレシング)をする際体内に酸素を取り入れている。これは、我々が生命活動を行うのに必要なエネルギーを生産するために、食物から吸収した栄養素と酸素とが必要になるからである。
 
また、酸素は物体が燃えるために必要である。例えば、木に火をつける際、よく火が起こりかかった所に息を吹きかけて火を起こすが、これは木が燃えるために必要な酸素を送り込んでいるのである。より詳しくいえば、木の表面は炭素を含んだ物質でできており、物質中の炭素と空気中の酸素が結合する反応によって熱が発生するのである。
 
[[File:Manganese-dioxide-sample.jpg|thumb|二酸化マンガン]]
実験室では、薄い'''過酸化水素水'''(かさんかすいそすい)を用いて酸素を発生させることが多い。[[w:過酸化水素水]](hydrogen peroxide)は平時でも酸素と水とに分解するが、'''二酸化マンガン'''(にさんかマンガン、manganese dioxide)を加えることでその反応を促進することができる。ただし、このとき反応を行うのはあくまで過酸化水素水のみであり、[[w:二酸化マンガン]]は反応の際に変化しない。このように反応の際に自身は変化せずに他の反応を促進する働きがある物質を、'''触媒'''(しょくばい、catalyst、カタリスト)と呼ぶ。([[w:触媒]]について詳しくは[[高等学校化学]]などを参照。)
 
;オキシドール
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* 水素
[[w:水素]](すいそ、英: hydrogen、ハイドロジェン)は非常に軽い気体であり、空気中で燃える。このとき、水素が酸素と結合することで水が発生する。
 
実験室では、[[w:塩酸]](えんさん、hydrochloric acid、ハイドロクロリック・アシッド)などの酸性の溶液と、金属(例えば[[w:アルミニウム]]や[[w:鉄]])を反応させることで水素を発生させることができる。水素は空気よりも軽い物質なので、水素を[[w:捕集]]する際は、捕集用の器具を水素を発生させる器具の上方に置く必要がある([[w:上方置換]])。
 
* 二酸化炭素
[[w:二酸化炭素]](にさんかたんそ、carbon dioxide、カーボン・ジオキサイド)は、空気中に0.03%程含まれる気体であり、酸素原子に炭素原子が2つ結合した分子からなる気体である。二酸化炭素は我々に取って身近な気体である。我々は呼吸をする際、酸素を吸収して二酸化炭素を排出している。これは我々が食物からエネルギーを取り出すさいに酸素を消費すると同時に、二酸化炭素を排出することと対応している。一方、植物は[[w:光合成]](こうごうせい、photosynthesis、フォト・シンセシス)によって二酸化炭素を吸収しつつ、酸素を排出する。これは呼吸と逆の反応である。光合成について詳しくは、[[中学校理科 第2分野]]を参照。
 
二酸化炭素は炭素と酸素が結合する(炭素が燃える)ことで生じる。我々の身の回りにある物の多くも炭素を含んでいる。例えば[[w:綿]](めん、cotton、コットン)などの[[w:天然繊維]](てんねんせんい、natural fiber)でできた衣類は炭素を含んでおり、それらが燃えるときには二酸化炭素が発生する。また、[[w:石油]](petroleum、ペトロレウム)やガソリン(gasoline)も炭素を含んでおり、燃えるときには二酸化炭素を発する。
 
二酸化炭素は空気よりも重い気体であるので、二酸化炭素を集める時には捕集器具を下方に置く('''下方置換法''' [[w:下方置換]])。二酸化炭素を水に溶かした溶液は、[[w:炭酸]](たんさん、carbonic acid)と呼ばれ、弱い酸性の水溶液になる。
 
二酸化炭素を石灰水に通すと、石灰水が白く濁るので、化学実験で発生した気体が二酸化炭素かどうかの確認方法に、この石灰水との反応が用いられる。
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* アンモニア
[[w:アンモニア]](英:ammonia)は窒素と水素からなる分子であり、性質は匂いの強い気体であり、また水に溶けやすい。アンモニアの水溶液はアルカリ性を示す。アンモニアは空気よりも軽く、補集するときには器具を上に置いて捕集する。(アンモニアは水に溶けるので、水上置換法では集められず、'''上方置換法'''でアンモニアを集める必要がある。)
 
なお、アンモニアのにおいを確認するときは、手であおぐなどして、アンモニアから鼻のほうへ風を送って、においを確認する。
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====物質の密度と電気的性質====
 
物質の性質として目につきやすいものとして、その物質の色があげられる。残念ながら物質の色について一般的に述べることは難しい。これは、物質に色がついて見えるのは、物質がある色([[w:波長]])の光を選択的に反射していることに対応するのだが、その仕組みが物質のミクロの構造によることが多いからである。例えば、[[w:ダイヤモンド]]と[[w:黒鉛]](こくえん、graphite、'''グラファイト''')は同じ[[w:炭素|炭素]][[w:原子|原子]](たんそげんし)からできていることが知られているが、これらの色は全く異なる。
:[[画像:Brillanten.jpg|200px|ダイヤモンド]][[画像:GraphiteUSGOV.jpg|200px|黒鉛]]
 
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上の例では物質からの光は物質からの反射によるものと述べたが、物質自体もそれが持つ熱によってある波長の光を放射していることに注意が必要である。ただし、その波長は通常は[[w:赤外線]]に属するものであり、人間の目で見ることはできない。[[w:赤外線]]、[[w:黒体輻射]]を参照。-->
 
ここからは色以外に上で述べた性質についてまとめる。物質の'''密度'''(みつど、density、デンシティ)とは、物質の単位体積あたりの質量を表す値である。例えば、同じ体積の紙と銅とで重さを比べた場合、銅の方が重い。このことは、銅の密度が紙の密度よりも大きいことを示している。
 
* 実験
同じ体積の紙と銅を用意し、その重さの違いを確かめよ。重さの違いを確かめるには[[w:天秤]](てんびん、balance、バランス)などを利用することができる。
 
;密度について
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;電気的な性質について
次に電気伝導度(でんき でんどうど)について説明する。後に扱うが、物質に流れる電気とは、[[w:電子]](でんし、electron、'''エレクトロン''')の流れのことであり、物質に電気が通りやすいかどうかは、物質の性質によって決まる。電気伝導度は、物質が電気を通しやすいかどうかを表す値であり、物質ごとに決まる定数である。この値は、物質が持つ電子の状態によっており、密度と同様微視的に決まる値である。
 
例えば、流れて来た電子が入り込む部分が、既に他の電子によって埋まっている場合には、その物質は電気を通しにくくなる。一方、電子が非常に動きやすい状態になっている物質では、流れてきた電子が他の電子を押し出して電子の流れを伝えるため、電気が流れやすくなる。これらは物質ごとの結合の性質によって変化することが知られているが、ここでは詳しくは扱わない。(詳しくは[[高等学校化学]]などを参照。)
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====水溶液の性質と再結晶====
砂糖を水に溶かすと砂糖水ができる。このとき、砂糖のように水に溶けている物質を'''溶質'''(ようしつ、solute、ソリュート)といい、水のように溶質を溶かしている液体を'''溶媒'''(ようばい、solvent、ソルベント)という。また、溶質が溶媒に溶けた液を'''溶液'''(ようえき、solution、ソリューション)という。溶媒が水の溶液を'''水溶液'''(すいようえき、aqueous solution)という。
 
水溶液は透明である。また、溶液中での溶質の濃さはどの部分でも同じである。
 
 
ある物質を一定量の水に溶かしていき、その物質がもうこれ以上は溶けきれなくなったときのことを'''飽和'''(ほうわ、saturation、サチュレイション)といい、その水溶液を'''飽和水溶液'''(ほうわすいようえき、saturated solution など)という。水100gに物質を溶かして飽和水溶液にしたとき、溶けた溶質の質量の値をその物質の'''溶解度'''(ようかいど、solubility、ソリュビリティ)という。
 
 
水溶液から出てきた固体をルーペや顕微鏡で観察すると、その物質に特有な規則正しい形をしていることがわかる。純粋な物質で規則正しい形をした固体を'''結晶'''(けっしょう、crystal、クリスタル)という。
 
物質をいったん溶媒に溶かし、温度を下げたり溶媒を蒸発させたりして再び結晶として取り出す操作を'''再結晶'''(さいけっしょう)という。再結晶により物質をより純粋にすることができる。
 
====質量パーセント濃度====
水溶液の溶質の濃さを数値化したものを'''濃度'''(のうど、concentration、コンセントレイション)と言う。
水溶液の濃度を表す場合は、いろいろな表し方がある。このうち、よく用いられる質量パーセント濃度の表し方を説明する。
水溶液の全体の質量(溶媒の質量だけでなく、水溶液全体の質量)に対する、溶質の質量をパーセント表示したものが、質量パーセント濃度である。
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[[File:Plastic bottle.jpg|thumb|150px|ペットボトル容器(画像の左側)の例。右上の試験官のような形のものを金型で圧延して、ボトルの形にしている。]]
プラスチック材料は,天然には産出せず、石油などを原料として人工的につくられた物質で'''合成樹脂'''(ごうせいじゅし、synthetic resin、シンセティク・レジン)ともよばれる。
 
プラスチックは,炭素をふくむ物質であり、有機物のなかまである。そのため共通して加熱するととけてやわらかくなったり、燃え出したりする性質がある。また、熱や電気を通しにくい性質をもっている。しかし、近年は電気を通すものが開発されている。
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温度計の種類にアルコール温度計や水銀温度計などあるが、これらは物体の温度が上がることによる膨張を、温度の測定器として利用した器具である。
 
読者は、もしかしたら「温度の単位が摂氏温度なんて、当然じゃないのか?」と思うかもしれないが、日本以外の外国では、国によっては「ファーレンハイト温度」(いわゆる華氏温度、Fahrenheit)と言って、摂氏温度と異なる温度単位を用いる国もあるのである。
 
=== 熱量 ===
「熱量(ねつりょう)とは何か」を述べる前に、たとえ話をする。
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いっぽう、温度を上げるには、エネルギーが必要だが、エネルギーは足しあわせができる。
このような理由から、加熱された物体に蓄えられた熱エネルギーと温度とを区別する必要がある。
そこで、熱エネルギーのことを'''熱量'''(ねつりょう、heating value)といい、これは温度とは区別する。
 
熱量の単位は'''カロリー'''(フランス語: calorie)といい、単位の記号はcalと書く。1cal は、水 1g の温度を 1℃ 上昇させるのに必要な熱エネルギーのことである。ここでいう「水」とは、50℃のお湯だろうが、80℃のお湯だろうが、沸騰していない液体のH<sub>2</sub>Oのことであるとする。
 
ともかく水の熱量の式は、
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いっぽう、熱が、温度の低いところから、温度の高い所へと自然に移動することは、無い。
 
さて、静止した物体での熱の伝わり方には、大きく分ければ、'''熱伝導'''(ねつでんどう、thermal conduction、サーマル・コンダクション)と'''対流'''(convection、コンベクション)と'''熱放射'''(radiation、ラディエイション)の三つに分けられる。
 
 
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[[File:ConvectionCells.svg|thumb|right|300px|上と下とで温度差のある場所での、対流の一例。下から入力された熱は、対流によって上部へと運ばれ、流体表面からの熱放出によって冷やされた後は下部へと潜る。]]
 
熱を持った物体そのものが静止していても、となりにある気体や液体などが運動すれば、その気体などが熱を運ぶ。これを対流(convection、コンベクション)という。
気体や液体などでは、温度差があると、温度が高いほど密度が軽く浮力がかかるので、自然に対流が起こりやすい。
 
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==== 熱伝導 ====
対流が起きなくても、個体などの物質どうしが接触していけば、熱は伝わっていく。これを熱伝導(ねつでんどう、thermal conduction、サーマル・コンダクション)という。
 
==== 熱放射 ====
[[Image:Hot metalwork.jpg|250px|thumb|right|可視光の熱放射が、このような熱された金具で見ることができる。赤外線領域での放射は、人間の目と画像で撮影されたカメラには見えないが、赤外線カメラでは撮影できる。]]
 
実は、どの物体も、人間の目には見えないが、'''電磁波'''という電気と磁気の波を出している。電磁波を出すことを'''放射'''(ほうしゃ(radiation、ラディエイション)という。その放射する電磁波が、人間の眼に見えないのは、単に放射電磁波の周波数が、人間の目の可視領域で無いからという理由である。
 
この放射する電磁波は、常温では周波数が低く、赤外線の領域である。高音になるほど、物体の放射電磁波の周波数が高くなり、可視領域へと入っていく。溶鉱炉などで、高温で溶けた金属が光るのは、この放射光によるものである。このような高温物体から電磁波がでることを'''熱放射'''(ねつほうしゃ)、あるいは単に'''放射'''という。熱輻射(ねつふくしゃ)と言う場合もある。
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この関係式を、'''ボイルの法則'''(ボイルのほうそく、Boyle's law)という。
 
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であることを、シャルルは発見した。
この法則を'''シャルルの法則'''(英: Charles's law)という。
 
;絶対零度
シャルルの観測結果をグラフに書くと、マイナス273℃で、理論上では気体は体積が0になる。このマイナス273℃を'''絶対零度'''(ぜったいれいど、absolute zero)zero、アブソリュート・ゼロ)という。絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、理論上は考えらない。
また実験的にも絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、確認されていない。たとえばマイナス300℃とかマイナス500℃とかは、実在しない。
 
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[[ファイル:1-Blue and red litmus paper.jpg|thumb|left|リトマス紙]]
 
塩酸(えんさん)や酢酸(さくさん)や硫酸(りゅうさん)などの薄い水溶液は、つぎのような性質を示す。
 
* 青色リトマス紙を赤色に変える。
* BTB液を加えると赤色になる。
 
このような性質を'''酸性'''(さんせい)という。また、酸性を示す物質を'''酸'''(さん、acid)という。
 
酸性の溶液には次のような性質が有る。
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;主な酸
おもな酸には、塩酸、酢酸、炭酸、硫酸(りゅうさん)、硝酸(しょうさん)などがある。ミカンなどの柑橘類(かんきつるい)に含まれるクエン酸や、食用油などに含まれるオレイン酸も酸である。
 
* 塩酸
塩酸とは、'''塩化水素'''(えんかすいそ、hydrogen chloride)という気体が溶けた水溶液である。
無色透明の水溶液である。強い酸性を示す。
:においは、刺激臭が有る。この刺激臭は塩化水素の蒸気のにおいである。
 
(※ 注意:塩酸のにおいをかぐ時は、けっして直接はかがずに、いではいけない。塩酸の蒸気を手であおいだり鼻に風を送ったりして、間接的に、においをかぐ。)
 
:塩酸は、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄を溶かす。これらの金属を溶かすときに水素が発生する。この水素は塩化水素中に含まれていた水素原子が化学反応によって水素分子として生じたものである。
 
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* 水溶液にフェノールフタレイン溶液を加えると、赤色に変わる。
 
このような性質を'''アルカリ性'''または塩基性(えんきせい)とよぶ。また、水溶液がアルカリ性を示す物質のことを'''アルカリ'''(alkali、アルカライ)という。
 
アルカリの中にはタンパク質や脂肪などを溶かすものもあり、皮膚などを溶かし、強いアルカリや濃いアルカリの中には危険な物もある。取り扱いには注意すること。皮膚などにアルカリをつけないようにする。もしアルカリが目に入った場合は、即座に大量の純水で洗い流し、先生や大人に相談および連絡をして、必要に応じて保険医などに診察してもらうこと。
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;主なアルカリ
* 水酸化ナトリウム
水酸化ナトリウム(すいさんかナトリウム、sodium hydroxide、ソウディアム・ハイドロオキサイド)は、強いアルカリ性を示す。なので取り扱いには気をつけること。
:白色で半透明の固体である。
:空気中に放置しておくと、空気中の水分を吸収し溶ける。この現象を'''潮解'''(ちょうかい,deliquescence,デリクエーセンス)という。
:アルミニウムを溶かす性質が有る。
:強いアルカリ性のため、タンパク質や脂肪などを溶かす。
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消石灰のことである。
:白色の固体である。
:水には溶けにくいものの、溶ける。水酸化カルシウムの水溶液を'''石灰水'''(せっかいすい、limewater、ライムウォータ)という。
:石灰水に二酸化炭素を吹き込むと、白い沈殿物が生じる。この現象はよく、気体の種類が二酸化炭素であるかどうかを調べる手法に利用される。
 
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厳密には、中和に際して水を作るのは酸の中の[[w:水素イオン]]<math>H^+</math>と、アルカリの中の[[w:水酸化物イオン]]<math>OH^-</math>である。現在の指導要領では[[w:イオン]]については詳しく述べない。[[高等学校化学]]などを参照。後の議論でも同様で、[[w:塩]]を作るのは、酸の陰イオンと、アルカリの陽イオンである。
 
また、酸の中のHやアルカリの中のOHが取り去られた後、残った物質(イオン)が結合して新たな物質を作ることがある。ここでできる物質を[[w:塩]]("えん"と読む)と呼ぶ。反応に用いた酸とアルカリによって生じる塩が決まる。例えば、塩酸とアンモニア水が反応した時には水と[[w:塩化アンモニウム]](えんかアンモニウム、ammonium chloride)が生じる。この反応は次の化学反応式で書かれる。
:<math>
\mathrm{HCl + NH_3 + H_2 O \rightarrow H_2O + NH_4 Cl}
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==== pH指示薬 ====
物質の中には、水溶液に接触させた時に、水溶液のpHの値によって色が変化するものがある。このような物質はpHを調べるのに用いることができるので、これらの物質のうちpHを調べる物質として実用化されている物質を'''pH指示薬'''(pH indicator、ピーエイチ・インディケイター)という。いわゆるリトマス試験紙もpH指示薬に含まれる。またリトマス試験紙のように、pH指示薬を試験用の紙に染み込ませて用いる事が多い。このようなpH指示薬を染み込ませてある紙を'''pH試験紙'''(pH indicator paper)という。
 
リトマス紙やBTB溶液やフェノールフタレイン溶液は、pH指示薬である。pH指示薬には、他にもメチルオレンジなどがある。
 
pH指示薬は、その物質によって、色を変えるpHの範囲が限られている。たとえば、メチルオレンジはpH=3.1以下では赤色で、そこからpHが高くなると黄色味を増していき、pH=4.4では橙黄色である。pH=4.4より高いpHでは橙黄色のまま、ほとんど色が同じなので、このpHの範囲では指示薬として用いられない。
なお、このように指示薬の色が変わるpHの範囲を'''変色域'''(へんしょくいき、indicator range など)という。
 
==電流とその利用==
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====静電気====
 
電気を通さない物質を'''絶縁体'''(ぜつえんたい、insulator、インサレイター)という。絶縁体どうしをこすり合わせることで、物質に[[w:静電気]](せいでんき、static electricity)を貯めることが出来る。静電気が溜まった状態のことを'''帯電'''(たいでん、electrostatic charge)しているという。
静電気は、(磁石と同じように、)触れることなくお互いの間に力を働かせることが知られる。例えば、下敷きをこすった後に髪の毛に近づけると髪の毛が逆立つが、これは静電気によって、髪の毛が下敷きに引っ張られているということである。また、静電気にはプラスとマイナスがあり、磁石のSとNのようにプラス同士、マイナス同士を近づけると反発し、プラスとマイナスを近づけると引き合う性質がある。こすった時にプラスとマイナスのどちらに帯電しやすいかは、絶縁体の性質による。
 
静電気は電流と関係があり、帯電したものを金属に近づけると瞬間的に電気が流れ、'''放電'''(ほうでん、electrostatic discharge)が起こることが知られている。冬に金属で出来た物に触れようとするとパチッと痛みを感じるのは、皮膚表面が帯電していて、金属に触れた瞬間に放電が起こるからである。実際には静電気として蓄積されているものと電流として流れているとされているものは、どちらも[[w:電子]](でんし)と呼ばれる[[w:粒子]]であることが知られている。電子は容易に観察することは出来ないため、ここではその性質については詳しく述べない。(詳しくは[[高等学校理科 物理I]]などを参照。)
 
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====電気回路====
 
金属は空気などの気体と比べて電流を運ぶ性質がとても強いため、適切な方法で金属の導線をを繋ぎ合わせることで、電流の流れる「道」を作ることが出来る。この「道」で電気的な機器(例えば、電池や電球)を繋いだ一セットを[[w:回路]](かいろ、circuit、サーキット)と呼び、回路の要素を記号を使って表した設計図を''回路図''と呼ぶ。回路図は形式が標準化されているので、回路図を見て回路を組み立てたり、逆に作った回路を回路図に表したりということが誰にでも出来る。例えば、[[w:電池]](直流電源)は
:[[画像:直流電源.png]]
と表され、[[w:抵抗]](電流を流れにくくする物体のこと)は
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:[[画像:jun_high_sci_simple_circuit.svg]]
で与えられる。回路の中では各点でその点を流れる'''電流'''と'''電圧'''が決まる。
導線などの導体内の電気の流れおよび、その流れている電気の量を'''電流'''(でんりゅう、electric current、エレクトリック・カレント)という。電流の強さの単位は、'''アンペア'''という単位で表す。アンペアの記号は A で表す。
:<math>\frac{1}{1000}</math>Aのことを1ミリアンペアといい、ミリアンペアの単位は[mA]で表す。
 
 
回路に電流を流す、働きの大きさのことを電圧(でんあつ、voltage、ボウルテイヂ)という。一般に[[w:電池]]の電圧は、その電池の中の物質によって定まる。電圧の単位は'''ボルト'''といい、記号はVで表す。(詳しくは[[高等学校化学]]を参照。)
:<math>\frac{1}{1000}</math>Vのことを1ミリボルトといい、ミリボルトの単位は[mV]で表す。
 
:参考
このような電池の電圧を'''起電力'''(きでんりょく、electromotive force, EMF)という。起電力は、電池内の物質の種類によって、一定に定まる。電池内の物質の量には影響されない。物質の種類によって、起電力が定まる。
たとえば、家庭用のマンガン乾電池1個の電圧は1.5Vである。
歴史的には、乾電池の発見と発明によって、一定の電圧で回路に電気を送り続ける定電圧源が人類の手に入るようになり、電圧と電流とを明確に区別することができるようになった。
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電池(電源)を省いて回路を作ったとしても何も起こらない。例えば輪っかのようにため池を作っても、エッシャーの滝のように水が急に流れだすことはなく、止まったままである。だが、池に高低差を作って、低い方から高い方へポンプで水を送ってやれば、水は自然と流れだすことになる。このポンプの役割をするのが電池であり、水の高低に対応するのが'''電位'''(でんい)である。また、高低の傾斜をきつくすれば水の流れる勢いも速くなるが、同じように電位の高低差こそが'''電圧'''(でんあつ)の正体である。
 
したがって、電池の両端には、かならず電位差がある。更に、一般に、電池については陽極がより電位の高い方とする。さて、このとき回路図中の2点についてその2点が異なった電位を持っていることが分かる。上の回路中でも電位差があるので電位が高い点から低い点へと電流が流れるが、この際に''電気抵抗''(でんきていこう、resistance、'''レジスタンス''')を通過するため、ここで電圧降下をおこす。電気抵抗は導線と比べて「電気の流れにくい場所」と理解することが出来る。その場所を電流が通ることで熱が発生し、また電流が勢い(=電圧)を失う。このことによって回路中に異なった電位があることと整合的になるのである。ここまでの話では、電圧降下の量が電気抵抗の性質によって変化し、電位の差を埋めるのに十分でなくなるように思えるかも知れない。しかし、このような場合には常に、抵抗の値と合わさってちょうど電位差を埋めるように対応する電流が流れるのである。回路中の電位についてより(詳しくは[[高等学校理科 物理I]]を参照。)
 
電池を2つ縦に並べるようなつなぎ方を、[[w:直列]]接続(ちょくれつせつぞく)と呼ぶ。
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====オームの法則====
 
電流の流れにくさのこと、および、電流をながれにくくする物体のことを抵抗(ていこう、resistance、'''レジスタンス''')という。
流れにくさと、その物体とを区別したい場合には、電流を流れにくくする物体のことを抵抗器(ていこうき)とか抵抗体(ていこうたい)とかと呼んで区別する場合も有る。
本節でも、混同を避けるため、流れにくさのことは抵抗と呼び、物体側は抵抗器あるいは抵抗体と呼ぶことにしよう。
抵抗(電気の流れにくさのほう)の単位は、'''オーム'''(英:ohm、オウム)といい、記号は<math>\Omega</math>で表す。
 
一般に抵抗器の両端で、ある電位差があるときに、抵抗器に流れる電流は
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放電管に、高い電圧をかけると、回路が導線でつながってなくても電気が流れることがある。このような現象を放電(ほうでん)という。
歴史的には、真空放電管の実験で、マイナス側の陰極から、なにか(これは電子の線である。)が放射されるのが発見された。
なので、陰極から出る電子の線は、'''陰極線'''(いんきょくせん、cathode ray、カソード・レイ)と呼ばれる。
また、この実験から、電子は負の電荷をおびていることが、人類に分かった。
 
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ここでは、電流を電熱線に流す実験と、電球に流す実験を行なう。ここでは、電流を流すことで電熱線では発熱が得られ、電球に流すことで光が得られることがわかる。得られる光や発熱の強さは、それらにかける電圧を大きくすることで強くなる。
 
ここで、得られる光や発熱の強さは、電熱線や電球が消費する'''電力'''(でんりょく、electric power)によって定まる。電力はある時間当たりに抵抗が消費するエネルギーのことである。電力は
: 電力 = 電圧 * 電流
で与えられ、電力の単位は[W](ワット)である。(詳しくは、[[高等学校理科 物理I]]を参照。)
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====磁界====
 
磁石に鉄などを近づけると鉄は磁石に引きよせられることが知られている。このような磁石の性質を見るために、[[w:磁界]](じかい)という考え方を用いる。磁界とは磁石の
回りの各々の点にある矢印が張りつき、その矢印によって、その点の近くに鉄などが現われたときにそれらが引きよせられる方向を記述する方法である。
このとき、鉄などが引きよせられる強さは矢印の長さで表わす。
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{{clear}}
これを図示すると、下図のようになる。(画像素材の確保の都合上、写真と図示とでは、N極とS極が逆になっています。ご容赦ください。学校教科書などで、磁力線(じりょくせん)の図示を確認してください。)
 
[[File:VFPt cylindrical magnet.svg|thumb|left|300px|磁力線の図示]]
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==== 磁化 ====
鉄やコバルトやニッケルに磁石を近づけると、磁石に吸い付けられる。また、鉄やコバルトやニッケルに永久磁石などで強い磁力を与えると、鉄などから磁石を遠ざけても、鉄やコバルトやニッケルそのものが磁場を周囲に及ぼすようになる。 このような、もともとは磁場を持たなかった物体が、強い磁場を受けたことによって磁場を及ぼすようになる現象を'''磁化'''(じか、magnetization)という。
 
また、'''鉄'''と'''コバルト'''と'''ニッケル'''は、磁化されることのできる金属であり、このような磁化される物質を'''磁性体'''(じせいたい)という。
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;右ねじの法則
直線電流がつくる磁界の向きは、電流の向きに右ねじを進めるときに、右ねじを回す向きである。この電流と磁界の向きとの関係を'''右ねじの法則'''とか、あるは'''アンペールの法則'''(Ampère's circuital law)と言う。
 
コイルのような曲線部を持つ回路が作る磁界の向きも、回路の各部分の電流が右ねじの法則に従って、磁界を作っている。
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===== 電磁石 =====
電気回路に電流を流すと磁力が発生するのだった。この電流が作る磁界を、永久磁石の代わりに磁力の発生源として利用したものが'''電磁石'''(でんじしゃく、electromagnet)である。
 
実際の電磁石では、磁力を強めるために、コイルのソレノイド部分に鉄の棒を収める構造になっている。鉄芯が磁化させることで、磁力を強めている。
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実際には流れる電流の向きも定まっており、その電流によってコイルの回りに生じる磁界が磁石によって生じた磁界を打ち消すように電流が流れる。(詳しくは[[w:レンツの法則]]、[[高等学校理科 物理I]]を参照。)
 
導線のある場所の磁力が弱まると、その磁界の変化を妨げる方向に電流が流れる。たとえば、仮にソレノイドコイルに永久磁石を近づけた時に右回りに電流が流れたとしよう。すると、このソレノイドコイルから永久磁石を遠ざけると、今度は反対向きである左回りに電流が流れることになるのである。このような現象を[[w:電磁誘導]](でんじゆうどう、electromagnetic induction)と呼び、磁石の動きによって生じた電流を[[w:誘導電流]](ゆうどうでんりゅう、induced current)と呼ぶ。
 
電磁誘導で電流が流れるのは、磁力が変化している間のみである。永久磁石をコイルから遠いところからコイルに近づけたら、その磁石を動かしている間は電流が流れる。しかし、近づけおわった状態で磁石を固定していても誘導電流は流れない。
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このように、磁界が変化している間のみ、誘導電流が流れる。また、その誘導電流の向きは磁界の変化を妨げる向きである。
これを'''レンツの法則'''(Lenz's law)という。
 
現在の火力発電や水力発電の[[w:発電所]]でも同じ原理を用いて発電を行なっている。火力発電では磁界の中で蒸気を用いて[[w:タービン]]をまわし、それによって誘導電流を発生させるのである。
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== 化学変化と原子、分子 ==
ここでは物質の性質が保たれる最小の単位が[[w:分子]]であることを説明し、それらは個々の分子の性質をうまく扱うことで他の分子に変化させられることを説明する。また、具体的に分子の組成や[[w:化学変化]]の過程を記述する方法として、[[w:化学式]](chemical formula)と[[w:化学反応式]](chemical equation)を導入する。
 
=== 物質の成り立ち ===
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炭酸水素ナトリウムを加熱すると二酸化炭素と水が発生し、加熱後の物質は炭酸ナトリウムになる。また、酸化銀を加熱すると酸素が発生し、加熱後の物質は銀になる。
 
もとの物質とは異なる性質を持った物質ができる変化を'''化学変化'''(かがくへんか、chemical change)または'''化学反応'''(かがくはんのう、chemical reaction)といい、1種類の物質から2種類以上の物質に分かれる化学変化を'''分解'''という。
 
 
電気を通すことによって物質を分解することを'''電気分解'''(でんきぶんかい、electrolysis、エレクトロシス)という。
 
水を電気分解すると、+極には酸素、-極には水素が発生する。発生した水素の体積は酸素の2倍である。水は水素と酸素に分解できる。
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密閉された容器の中で反応させると、発生した二酸化炭素は空気中に逃げていかないため、反応前後の質量は変化しない。
 
化学変化の前後で、その変化に関係している物質全体の質量は変わらない。これを'''質量保存の法則'''(しつりょうほぞんのほうそく、law of conservation of mass)という。
 
 
金属を熱したとき、化合した酸素の分だけ質量が増える。しかし、たとえ酸素がじゅうぶんに存在しても、一定量の金属に化合する酸素の質量には限界がある。また、金属の質量と化合した酸素の量の質量の間には比例の関係がある。
 
化合する物質の質量の比は一定である。これを'''定比例の法則'''(ていひれいのほうそく、law of definite proportions)という。例えば、銅の質量と酸素の質量との比はつねに<math>4:1</math>であり、マグネシウムの質量と酸素の質量との比はつねに<math>3:2</math>である。
 
 
1,582 ⟶ 1,589行目:
(燃焼とは、必ずしも酸素との反応だけでなく、フッ素と反応して燃焼することもある。中学レベルでの燃焼は、酸素との化合による燃焼を扱う。)
 
物質が酸素と化合することを'''酸化'''(さんか、Oxidation、オキシデイション)という。
 
;鉄の燃焼