「中学校理科 第1分野」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
サブページを作成。「中学校理科 第1分野/光と音」など。本ページの記述内容を移行する。
サブページに移行済みの内容を削除中。途中だが、いったん、保存。(量が多いので。)
37 行
*[[中学校理科 第1分野/酸性とアルカリ性]]
*[[中学校理科 第1分野/電流と磁界]]
*[[中学校理科 第1分野/化学変化と原子・分子と化学変化]]
*[[中学校理科 第1分野/化学変化とイオン]]
*[[中学校理科 第1分野/運動の規則性]]
*[[中学校理科 第1分野/仕事とエネルギー]]
 
 
==身近な物理現象==
===光と音===
ここでは[[w:光]](ひかり)と[[w:音]](おと)について扱う。光と音は全く異なった現象に見えるが、実際にはこれらは多くの共通した性質を持っている。
<!-- 実際にはこれらはどちらも波としての性質を持っており、光と音はどちらも波が持っている性質を持ち合わせているのである。ここでは光と音が満たすいくつかの性質について述べるが、それらの現象と光と音が波の一種であることがどのように関係するかを扱うことは行なわない。それは指導要領の範囲外である。
-->
 
(光や音についてより詳しく知りたいときには、[[高等学校理科 物理I]]などを参照。)
 
====反射と屈折====
光は直線的に進むことが知られている。例えば、暗い箱を作り、その壁に細い[[w:スリット]]を設けると、スリットから入った光がそのまま直進する様子がわかる。この性質は空気中ではいつでも成り立ち、太陽や電球などから発せられた光は、発せられた方向に直進する。しかし、例えば光が鏡などに当った時には、光は直進することなく[[w:反射]](はんしゃ)する。
 
<!--
誘電率<math>\epsilon</math>と透磁率<math>\mu</math>が異なる物質間を境界条件として、電磁波の方程式を解くと、反射や屈折の式が得られる。
大学の[[電磁気学II]]や[[電磁気学III]]で扱われる内容である。
-->
 
反射面に垂直な直線('''法線''')と入射した光とがなす角を[[w:入射角]](にゅうしゃかく、incidence angle)と呼び、法線と反射した光とがなす角を[[w:反射角]](はんしゃかく、angle of reflection)と呼ぶ。
<br>このとき、
:; 入射角 = 反射角
が成り立つ。
:[[画像:Reflection angles.svg|200px|反射]]
 
上の図では<math>\theta _i</math>が入射角に対応し、<math>\theta _r</math>が反射角に対応する。図でわかるとおり、入射角と反射角は等しい。
 
 
;屈折
また、例えば空気中を直進して来た光が水面を通過したときには、光は水面でその方向を変えることが知られている。この現象を光の[[w:屈折]](くっせつ、refraction)と呼ぶ。屈折した光と物質境界の垂直方向(法線)とがなす角度を[[w:屈折角]](くっせつかく、refracting angle)と呼び、光の屈折の大きさは各々の物質が持つ[[w:屈折率]](くっせつりつ、refractive index)によって決まる。屈折率がより小さい物質からより大きい物質に光が入射するときには、屈折角はより小さくなることが知られている。反対に、屈折率がより大きい物質からより小さい物質に光が入射する場合、屈折角は大きくなる。
 
<!--
定量的な議論は[[スネルの法則]]を参照。
-->
 
実際の例では、空気から水に向かって光が入射する場合、水の屈折率は空気よりも大きいため、屈折角は入射角よりも小さくなる。
 
* 屈折の図
 
<gallery widths=300px heights=300px>
ファイル:Pencil in a bowl of water.png|水中に差し込んだ棒が上方に曲がって見える理由を説明する図 棒上のxに由来する光は水面で屈折を起こす。このため、Xの見かけ上の位置はYになる。
ファイル:Light dispersion of a mercury-vapor lamp with a flint glass prism IPNr°0125.jpg|プリズムにより光は屈折する。このとき光の色ごとに屈折率が違うので、虹のようないくつもの色の帯ができる。
</gallery>
 
 
 
例えば細長い棒を水の中に差し入れると、その棒は曲がって見える。これは、光の屈折によるものである。
また、透明であるガラス瓶やコップが目に見えるのも、この屈折の効果による。
屈折がなければ透明なものは目に見えないという事を体感する実験の例として、ガラス製の瓶やコップを油に沈める実験が知られている。油の中にガラスを沈めると、ほとんど見えなくなる。これは、油とガラスの屈折率が非常に近い値であるためである。
 
;全反射
[[ファイル:Total internal reflection.jpg|thumb|250px|全反射]]
[[ファイル:Fibreoptic.jpg|thumb|left|光ファイバー]]
屈折率が大きい媒質から小さい媒質に光が入るときに、入射光が境界面を透過せず、すべて反射する現象が起きる。これを'''全反射'''(ぜんはんしゃ、total reflection)という。全反射は、入射角が大きくなると起こる。
応用例として、光ファイバー(Optical fiber)では光信号を全反射させることで信号を送っている。
 
{{clear}}
====レンズ====
 
ここでは、[[w:レンズ]]を用いたときに光が描く軌跡についてまとめる。ここでは、単純なレンズである凸(とつ)レンズについて扱う。一般に、[[w:虫眼鏡]]や[[w:顕微鏡]](けんびきょう)など物体を拡大して見るための器具は、光の方向を変えるために、凸レンズを用いている。また、[[w:遠視]]用の[[w:眼鏡]]にも用いられる。
:[[画像:Magnifying_glass.jpg|180px]]
 
凸レンズは、レンズの真ん中がレンズの縁よりも厚くなっている。代表的な凸レンズである球面凸レンズ([[w:レンズ]]を参照)は次のような形をしている。
:[[画像:junior_high_sci_lens.png]]
 
レンズの2つの面は、ある半径の球の一部を切り取った形をしている。このとき、元の球の半径をレンズの[[w:曲率半径]](きょくりつはんけい)と呼ぶ(曲率半径はレンズの[[w:焦点距離]](しょうてんきょり、focal length)と関連しているが、焦点距離と曲率半径の関係について詳しく扱うことはしない。[[w:レンズ]](lens)などを参照。)。
 
 
[[ファイル:Lens3-ja.svg|thumb|400px|図1-2 物体が焦点距離より遠いときは実像ができる]]
[[ファイル:Lens3b-ja.svg|thumb|400px|図1-3 物体が焦点距離より近いときは虚像ができる]]
ここでは球面凸レンズを扱う。球面凸レンズは、レンズの両側に[[w:焦点]](しょうてん、focal point)と呼ばれる点を持つことが知られている。焦点とレンズの中心との距離はレンズの両側で等しい。この、レンズと焦点との距離を、"焦点距離"(しょうてんきょり、focal length)と呼ぶ。焦点距離の記号は、 f で表すことが一般である。
 
一般にレンズはプラスチックやガラスなどの材質で作られるが、これらは光を通す材質であると同時に、空気よりも[[w:屈折率]]が高いことが知られている。
 
* 注意
現在の指導要領では、屈折率について扱わない。屈折率について詳しく知りたい場合、[[w:屈折率]]などを参照するとよい。
 
既に水と空気の例で説明した通り、光は異なる材質の境界を通過するときに、進む方向を変える。同様に、空気中からレンズを通過するときも、光は方向を変える。実際にレンズを抜けた後に光が向かう方向は、光がレンズに入射する方向と位置が分かれば、計算によってあらかじめ知ることができる。
 
ここでは特に、光が向かう方向が簡単に定まる場合についてまとめる。球面凸レンズでは一般的に、以下の三つの性質が成り立つ。
 
# レンズの軸に平行な光線は、レンズを抜けた後レンズの焦点を通る。
# レンズの中央を通る光線はレンズを抜けた後そのまま直進する。
# レンズの焦点を通過した光線は、レンズを抜けた後レンズの軸に平行な方向に直進する。
 
* 注意
最初の例と最後の例は時間を反対に見ると、同じ事柄を指していることに注意が必要である。時間を反対にするとは、ここでは光の進行方向を逆向きにすることに他ならず、このとき両者は互いに移り変わる。
 
上で述べたレンズの性質を利用して、レンズを通り抜けた光が結ぶ像の位置と大きさについて調べることができる。レンズが結ぶ像の性質は、対応する物体がレンズの焦点距離より遠くにあるかどうかで変化する。ここではまず物体がレンズの焦点距離より遠くにある場合について述べる。
 
このとき、物体から放たれる光線は次のような軌跡(きせき)をたどる。
* 図
図の中で物体の先端からレンズを通過する光線を3本描いたが、この3本はそれぞれ上で挙げた3つの光線に対応している。これらは1点で交わる。
 
ここで、物体から放たれた光は3本の光線が交わった点に像を作る。この像を[[w:実像]](じつぞう、real image、リアルイミッジ)と呼ぶ。実像は常に物体に対して上下、左右がともに逆([[w:倒立]])(ぎゃくとうりつ)の向きで現れ、その大きさとレンズからの距離は、物体とレンズとの距離によって決まる。
 
実像の大きさと現れる位置の性質は、物体とレンズの距離がレンズの焦点距離の2倍に達したときに変化する。ちょうど2倍のときには、実像の大きさはちょうど物体と同じになり、実像とレンズの距離は物体とレンズの距離と等しくなる。一方、物体とレンズの距離が焦点距離の2倍より大きいときには実像の大きさは実際の物体の大きさよりも小さくなり、実像の位置は、物体とレンズの距離よりもレンズに近くなる。一方、物体とレンズの距離が焦点距離の2倍より小さいときには実像の大きさは実際の物体の大きさよりも大きくなり、実像の位置は、物体とレンズの距離よりもレンズから遠くなる。
 
<!--実際に実像を観察するときには物体がある面から観察する必要があることに注意が必要である。 -->
 
一方、物体の位置がレンズの焦点距離よりもレンズに近い場合には、光線が像を結ぶ位置は変化する。このとき生じる像を[[w:虚像]]と呼ぶ。虚像は常に物体よりも大きくなる像であり、虫眼鏡で物体が拡大して見えるのは物体の虚像を観察していることに注意が必要である。虚像は実像の場合と違い正立で現れ、常にレンズに対して物体が存在する側に現れる。
 
{|class="wikitable"
|+物体とレンズとの距離と、結ばれる像の位置と大きさの関係
!物体とレンズとの距離!!結ばれる像の位置!!大きさと種類!!像の向き
|-
|焦点距離の内側(0-1倍)||物体と同じ側||物体より大きい虚像||正立
|-
|焦点距離の1-2倍||物体と逆側||物体より大きい実像||倒立
|-
|焦点距離の2倍以上||物体と逆側||物体より小さい実像||倒立
 
|}
 
レンズを使ったときに現れる像の位置と大きさは、実像と虚像の場合を含めて[[w:レンズの公式]]と呼ばれる式にまとめることができる。この式は指導要領の範囲外であるので、詳しくは[[w:レンズ]]を参照すること。
 
====音====
 
音は、空気の振動が伝搬する現象である。
 
音の速度は速いが、有限でほぼ一定の速度を持つ。このことは、例えば"広い空間に何人かの実験者を等間隔で並べ、大きな音を出し、音が聞こえた順に手をあげる等の合図をする"という実験を行なうことで見ることが出来る。音が無限に速い速度を持つときには全員の合図が一斉に現われるはずである。実際には音の速度は有限である。
 
<!--また、合図として手をあげるなどの手法を使うときには、
手をあげたという信号を観測するための光の速度が、音の速度よりも速いことを期待していることに注意が必要である。
実際に、光の速度が音の速度よりも遅かったときには、音が最も遠い人に届いてから、ようやく音源に近い人の信号が届き始めることになり、
実際に音の速さがどの程度であったかが判断しにくくなるからである。実際には光の速度は音の速度と比べ非常に速く、このようなことは
おこらない。-->
 
具体的には、音の伝わる速さは地球上の大気中では、およそ 340m/秒 であることが知られている。いっぽう、光の伝わる速さは[[w:真空]]中で 約30万km/秒 であることが知られている。これは音の伝わる速さよりもはるかに速く、1秒間に地球を7周半するほどの速度である。
 
<!--
温度によって速度が変化する現象の説明は指導要領から外れた。
-->
 
音楽のド,レ,ミ,ファ,・・・などを思い起こせば分かるように、音には高さが有る。
音の高さは、音の空気の振動の、振動の多さである。1秒あたりの振動の回数を、周波数(しゅうはすう、frequency、フリークエンシ)あるいは振動数(しんどうすう、frequency、フリークエンシ)と言うのだが、この振動数の大きい音ほど、音が高くなる。振動数の小さい音は、低い音になる。
 
音は空気中などの物体を伝わるので、真空中では音は伝わらない。
 
固体中や液体中も、音は伝わる。
固体中や液体中での音の速さは、空気中での音の速さとは異なる。
水中での音の速さは、秒速では約1500 m/秒 である。
固体中での音の速さは、一般に水中での音の速さよりも速い。
 
 
音は、物に当たると跳ね返る。例えば、やまびこ(「こだま」とも言う。)が例である。
 
[[Image:Ondes compression 2d 20 petit.gif|thumb|right|音波の伝わり方のイメージ]]
音は、空気中では波のように、物にあたって反射したり、狭いところでは屈折したりするので、音は波として伝わる。
なので音の波の特徴を強調したい場合には音波(おんぱ)という場合も有る。
 
音波の伝わり方は以下のような伝わり方である。
まず音を出す音源の物体が振動したとすると、それに触れている空気が振動し、その結果、空気に回りと比べて密度の高い部分が
出来る。空気の密度の高い部分は、自然に周囲に拡散してしまうが、その分、拡散した先の密度が高くなるので、結果的に空気の密度の高さが伝わっていくことになる。さて、音源は、この間も振動しているのであった。音源の振動のタイミングによって、音源が空気を押しているときは、音源のとなりの空気は密度が高くなるが、逆に音源が引っ込んでいるときは、空気の密度は小さくなる。だから、そして音源の振動によって、空気のみつども振動する。このとき、空気の圧力が高い部分はより圧力が低い回りの部分に空気を押しやろうとする。空気の振動が伝搬され、それが音として聞こえるのである。
 
空気の振動が、われわれ人間の耳の中に有る'''鼓膜'''(こまく、eardrum)を振動させ、それが人間の脳には音として認識される。
 
;発展
音波のように、密度の高い部分と低い部分が交互に伝わる種類の波を'''疎密波'''(そみつは)という。また、音波は進行方向と、振動の方向が同じであるが、このような波を'''縦波'''(たてなみ、longitudinal wave)という。音波は縦波の一例である。
 
いっぽう、水面をつたわる波は、進行方向と、振動の方向が直角であるが、このような波を'''横波'''(よこなみ、transverse wave)という。
 
 
;共鳴
音は周りの物を振動させるのであった。音が伝わっていった先に有る物体が、音が伝わったことによって振動をして、その物体もまた音を出すことが有る。このような現象を共鳴(きょうめい、resonance、レゾナンス)という。
 
{{clear}}
;発展 波に関する用語
[[File:wave.png|thumb|right|300px|変位量の最大値 ''y'' が波の振幅である(λは波長)。]]
[[File:Longitudinalwelle Transversalwelle.png|thumb|left|縦波のイメージ。上図が縦波で、下図は疎密をグラフ化したもの。]]
[[File:Wanderwelle-Animation.gif|thumb|left|縦波をグラフ化したもの。λ(ラムダ)が波長である。]]
 
 
音波の波は縦波であったが、これをグラフで見やすいように、縦軸に密度をとって、横軸に位置や距離をとってグラフに表すことがある。
 
このように、波は周期的に、おなじパターンを繰り返す。グラフでの波の高いところを'''山'''(やま)といい、波の低いところを'''谷'''(たに)と言う。そして、山と山との間の距離を'''波長'''(はちょう、wave length、ウェイブレングス)という。(波長を、谷と谷との間の距離と言っても良い。一般の波では、結果は同じ。)記号で表す場合は、波長はλ(「ラムダ」と読むギリシャ文字)で表すのが一般である。
振動数が、一秒間に振動する回数である。音の高さは振動数で決まり、振動数が大きいほど、音も高い。
 
音の大きさは振幅(しんぷく、amplitude)で決まる。振幅が大きいほど、音も大きくなる。
 
 
波長の式は、
:波長[m] = 音の速さ[m/s] ÷ 振動数[Hz]
である。
 
式から分かるように、音の速さが同じなら、波長が長いほど、振動数は小さくなる。
 
{{clear}}
 
===力と圧力===
 
ここでは、[[w:力]](ちから、force)と[[w:圧力]](あつりょく、pressure)について述べる。一般に「力が強い」、「強い力が働く」、「学力」「気力」など力という言葉はいろいろな意味で用いられる。しかし、科学的な考え方をする時には、力は常に1つの意味で用いられる。
 
力は大きさの他に方向という性質が有る。反対向きの力は打ち消しあう。
 
<!-- 力にはいくつかの働きがあるが、それらは力が大きさと方向という2種類の量で特徴づけられることを示す。実際にはこのように大きさと方向で表わされる量は[[w:ベクトル]]と呼ばれ、高等学校数学で導入される。詳しくは[[高等学校数学II]]を参照。ベクトルを用いて、力の性質を書き表すことが出来るが、これは大学1年での範囲である。詳しくは[[古典力学]]を参照。-->
ここでは、力の性質のうちで特に基本的な性質を扱う。
 
;圧力
ある面積あたりに働く力を圧力(あつりょく、pressure、プレッシャ)という。
さて、ある面に働く圧力が一定だとすると、働く面積に比例してその面に働く力の合計は大きくなる。
 
;大気圧
地表を取り巻く空気の層を大気(たいき、atmosphere、アトモスフィア)という。大気にも質量があるので、この質量により重さの力がかかり、大気中の物体に重さがかかるので、大気中の物質は大気から力を受ける。この大気から受ける力は、圧力で表示できる。大気がおよぼす圧力を[[w:大気圧]](たいきあつ、atmospheric pressure)という。
 
;浮力
液体の中にあるものに対しては、[[w:浮力]](ふりょく、buoyancy)が働くことが知られているが、これは物体の上面に働く圧力と、下面に働く圧力との差によって与えられる。
 
 
ここからは、力と圧力の性質についてより詳しく見ていく。
 
====力の性質====
 
止まっている物体を動かしたいときには、その物体を手で押したり、道具を使って押したりする。ここで、そのように'''止まっている物体を動かす性質'''を持つものを[[w:力]](ちから、force、フォース)と呼ぶ。力は、手を使ったり道具を使ったりして物体に対して与えることが出来る。また、磁石などを用いることで、物体に触れることなく力を与えることも出来る。
 
物体を動かす時、対象が粘土などの柔らかいものなら、物体を変形させることができる。この様に力には'''物体を変形させる働き'''もある。
 
* 注意
実際には、あらゆる物体が[[w:分子]](ぶんし、molecule、モルキュール)の集合によって出来ていることを考えると、物体を変形させることは、分子の並びを変化させることであり、物体を動かす働きの一つとして考えられることに注意。分子については後に扱う。
 
ここでは力のつりあいの条件について考える。力のつりあいとは、物体に複数の力が働いていて、しかも物体が動いていない情況のことを指す。変形しない物体に対して様々な方向から複数の力を働かせる実験を行なう。この実験の結果によると、物体に対して反対向きの方向に、同じ大きさの力をかけているときには、物体は動かないことが知られる。この情況を、物体に働く力がつりあっているという。また、同じ方向に2つの力をかけたときには、物体に働く力はそれら2つの力の和と同じだけの力がかかった時と同じ振舞いを示す。また、反対方向に2つの力をかけたときには、物体に働く力はそれら2つの力の差と同じだけの力がかかった時と同じ振舞いを示す。このように、物体にかかった力は、互いに強めあったり弱めあったりすることがわかる。
また、全く反対向きで同じ大きさの力がかかったときには、物体が動かないことがわかる。これは、物体について力のつりあいがおこっている状態と、物体に全く力がかかっていない状態は、同じ状態であることを示している。
 
力の大きさは単位に[[w:ニュートン]]をもちいて測定される。単位ニュートンは記号 N で表わされる。1Nはおよそ質量が100gの物体に働く[[w:重力]]に近い。中学では、100Nに働く重力の大きさとして、1ニュートンを扱って良いだろう。
 
(高校レベルだが、ニュートンの定義を正確に言うと、1kgの物体を静止状態から秒速1m/sに加速させる力の大きさで1ニュートンが定義される。また、重力の大きさを重力加速度というが、地球での重力加速度が9.81 N/kg と、大きさが約10 N/kg なので、近似で100gの物体に働く重力として扱える。
高校で物理を習うときや就職後の実務では、ニュートンの単位は、加速度にもとづいて定義が修正されるので注意のこと。)
 
ニュートンは他の単位によって合成することもできるが、これは[[高等学校理科 物理I]]の範囲である。
 
* ニュートンの厳密な定義
質量が1kgの物体に、1<math>m/s^2</math>の[[w:加速度]]を与えるのに必要な力で、1ニュートン(1N)は定義される。
 
なお、重さと質量は区別する必要が有る。地球と月とで重力の大きさは、異なる。また惑星などの星から遠く離れた宇宙の空間では無重力になる。このように重力の大きさは惑星や場所によって変わるので、もし重さと質量を同じ単位で扱うと混乱してしまう。
 
質量とは、その物体の物質の量のことである。
質量の単位は、'''グラム'''[g]と'''キログラム'''[kg]を用いる。
1kgは1000gである。
 
重さの単位はニュートンを用いる。なぜなら、重さとは物体にかかる重力による力なので、したがって重さの単位にはニュートンを用いる。
 
;(参考 単位系の国際標準化)
昔は、製造業の機械工業などでは、力の単位に、ニュートンの他にも、グラム重(グラムじゅう)やキログラム重といった単位が使われていた時代もあった。
しかし、現在では、力の単位は、ニュートンを原則的に使用することが推奨されている。読者が中学生なら、学校の試験などでは原則的にニュートンを力の単位に用いるべきである。
 
さて、古い設備の有る工場などでは、キログラム重の単位を用いている測定機器が残っている場合も有るので、その場合は、換算が必要になる。換算は、
:1ニュートン = 約100グラム重
である。
 
 
力の単位をニュートン単位に統一した理由は、昔は国や業界ごとに物理量で用いる単位が別々であり、不便であったので、その不便を解消しようと国際的な取り決めがなされたからである。その国際的な取り決めによって、力の単位にはニュートンを用いることが決まり、質量の単位にはグラムまたはキログラムを用いることが決まり、重さと質量とを区別することが決まったのである。
また、この国際的に取り決めた単位系を'''国際単位系'''(こくさい たんいけい)と言い、略称ではフランス語を語源としてSI単位(エスアイたんい)とも言う。
 
また、国際単位系では、長さの単位にはメートルやミリメートル、センチメートルといったメートル法を用い、時間の単位には秒・分・時間を用いることが原則となっている。
 
高校入学から先の、高校や大学での理科の学習では、物理量の単位系には、原則としてSI単位が用いられる。
中学でも、原則として、SI単位を用いるので、質量の単位はグラムやキログラムだし、重さの単位はニュートンだし、長さはメートル法である。
中学でSI単位以外を用いるとすれば、せいぜいグラム重とニュートンとの換算の計算練習をするときぐらいだろう。
 
読者は「長さがメートル法とか、重さがグラム単位なんて、当然じゃないのか?」と思うかもしれないが、日本では明治頃の古くから、メートルやグラムに親しみがあるが、実は外国では、国によってはメートル法やグラム単位はあまり当然では無かったのである。
たとえば、外国では、長さにインチ単位や、重さにポンド単位を用いている国も存在していたのである。
 
ともかく、読者が中学生なら、原則として物理量の単位系には、
* 力の単位には、原則としてニュートンを用いること。
* 重さと質量は区別をすること。
* 質量の単位にはグラムまたはキログラムを用いること。
* 重さの単位にはニュートンを用いること。
* 長さの単位はメートルやセンチメートル、キロメートルなどのメートル法を用いること。
 
以上に従うことが、中学の理科でも、高校・大学の理科でも原則である。
 
[[ファイル:Balance de type Beranger 1kg.jpg|上皿天秤|thumb]]
[[ファイル:Balance (PSF).jpg|thumb|上皿天秤に分銅を追加する図]]
 
質量を測定するときは、'''上皿天びん'''(うわざらてんびん)などの'''天びん'''(てんびん)を用いる。
;上皿天びんの操作方法
物質の質量を測定する場合は、片側に被測定物をのせ、反対側に分銅を載せる。分銅を質量の基準とする。
両方の皿の釣り合いを見て、質量を判断する仕組みである。
なので、皿に物を乗せる前に、両方の皿が釣り合っているかどうかを確認する必要が有る。もし、釣り合っていなかったら天びん本体に調整用のねじ等が付いているので、それで両方の皿が吊り合うように調整してから、皿に物を乗せる。
粉末などを測定する場合は、粉末が溢れたりしないように薬包紙(やくほうし)などを用いる。この場合は薬包紙を分銅を載せる側の皿にも置いた上で上記の調整を施したり、もしくは薬包紙の質量をあらかじめ測定しておく。
 
分銅は、あまり直接には、手で触らないようにする。
手の皮脂などが分銅につくと、その皮脂などの質量が追加した分だけ、重さが変わってしまうからである。
軽い分銅を皿に載せたりおろしたりする場合なら、専用のピンセットが天びんに付属していることがあるので、その付属のピンセットなどを用いる。
 
上皿天びん以外の天びんでは、ピンセットでは運べないような重い分銅を用いる場合も有る。このような場合、ピンセットでの持ち運びが危険な場合なので、他の方法で分銅を運ぶ。たとえば理科実験用の手袋(一般の手袋や軍手は、不可。)などをして、手袋をした手で分銅をつかんで持ち運ぶ場合も有る。
 
 
重さをの力を測定する場合は、ばねばかりや台はかりなどを用いる。
 
 
 
;フックの法則
[[File:Hookes-law-springs.png|thumb|フックの法則。<br>力は伸びに比例する。]]
ばねの伸びは、ばねに働く力の大きさに比例する。このことを'''フックの法則'''という。このことを利用すると、ばねの伸びからばねに働いた力の大きさを知ることができる。これを応用した器具が[[w:ばねばかり|ばねばかり]]である。
 
 
;弾性
ばねなどから荷重を取り除くと元に戻るように、物体の中には、力を加えて変形しても、力を取り除くと元に戻る性質を持つものが有る。このような性質を'''弾性'''(だんせい)という。
ばねばかりのばねや、ゴムひもなどが、弾性の有る物体である。
また、ばねなどの弾性のある物体が、弾性によってものを引っ張ったり押したりする力のことを'''弾性力'''(だんせいりょく)という。
 
;(参考 塑性)
いっぽう、力を加えて変形すると、力を取り除いても元に戻らない性質の物体も有る。たとえば、工作用の粘土などがそうである。このような、力を取り除いても元に戻らない性質を塑性(そせい)という。
 
;摩擦力
[[File:Friction.svg|thumb|摩擦力の図。<br>たとえば図中の左向きの矢印の方向に押したとすると、右向きに摩擦力が働く。摩擦力の大きさは、物体と床との重さに比例する。下向きの矢印が物体に掛かる重力で、上向きの矢印が床からの反作用。]]
物体を押して動かすとき、重さが同じでも、物体の置かれている床がデコボコしていたりザラザラしていたり、あるいは物体がデコボコしていたりザラザラしていると、動かすのに、余計な力が必要になる。このような動かそうとする力に対する抵抗を、'''摩擦'''(まさつ)といい、摩擦による抵抗力のことを'''摩擦力'''(まさつりょく)という。
 
もし、摩擦がなければ、少しでも力を加えれば物体が動いてしまうが、実際には、どんな物体にも摩擦があるので、そのようなことは起きない。
 
ボールや、コロ(丸太のような円柱状のもの)などが転がりやすい仕組みは、接触面を減らすことによって、摩擦を減らしているからである。
 
人間が、ぬれた床や道路などを歩くときに滑りやすいのは、床や道路の表面のザラザラした隙間に水が入り、ザラザラした隙間が埋まってしまうので、摩擦が減るからである。
 
摩擦について、一種の「抵抗力」というと損失と同一視されやすいが、ぬれた床の例のように、摩擦は必ずしも無ければ良いというものではない。もし摩擦がなければ、われわれ人間は歩くたびに滑って転んでケガをしてしまう。
 
{{clear}}
====圧力の性質====
 
[[w:圧力]](あつりょく)とは、単位面積当たりに働く力のことである。体の一部分を指で押した場合と、とがった針のようなもので押した場合とでは、同じ力で押したとしても結果に違いが出る。前者では皮膚がへこむ程度で済むが、後者では皮膚が破れてしまうこともある。これは、後者の方が皮膚に働く圧力が強いことによる。
 
圧力は単位面積当たりに働く力のことであり、働く面積が小さいときには単位面積当たりに働く力は強くなる。そのため、鋭くとがった針に力をかけたときには、皮膚に対して強い圧力がかかったのである。
 
圧力の単位は力の単位を面積の単位で割ったもので与えられる。力の単位はN([[w:ニュートン]])で与えられる。面積の単位はここでは<math>m^2</math>で与える。このとき、 圧力の単位は、N/m<sup>2</sup>(ニュートン毎平方メートル)となる。この単位は、Pa([[w:パスカル]])と略される。
 
ここで、空気が与える大気圧と、空気に重さがあることとの関係について述べる。
 
;発展: マグデブルグの半球
[[ファイル:Magdeburg.jpg|thumb|360px|マクデブルクの半球実験]]
17世紀のドイツのマグデブルク市で行われた、物理学者ゲーリケによる古典的な実験として、大気圧の大きさを見せびらかすために、2つに割ることが出来る 鉄球を用意し、鉄球の中を[[w:真空]]にして、その2つの鉄球を分割しようとしたときに、非常に大きな力でないと鉄球を引き離せないことを実験した例が有る。
鉄球を引き離すには、一人の人間では到底は不可能で、馬を何頭も用意して、馬たちに引っ張らせて、やっと鉄球が引き離せる結果になった。
 
このような巨大な大気の力を、大気中にいる我々が普段の生活では、なぜ、感じないのだろうか。なぜ、われわれの体は大気の巨大な力に押しつぶされないのだろうか。それは、我々の体の中は真空ではないので、中からも空気の圧力がかかっているため、外側の力と打ち消し合い、押しつぶされないのである。(力には方向があった。逆向きの力は打ち消し合って、差引の力が物体に掛かるのであった。圧力もまた同様に、方向があって、逆向きの力は打ち消しあう。)
 
;大気圧の起きさ
[[File:Baro 0.png|100px|thumb|left|トリチェリの実験]]
大気圧の大きさを測定するには、真空を利用すれば良さそうである。イタリアの物理学者のトリチェリは、ガラス管に液柱を満たして逆さまにする実験で、簡単に真空を作り、この液中の重さが大気圧と釣り合うことから、大気圧を測定した。
 
大気圧の大きさは、地表ではおよそ100,000Paである。高山では大気圧は山のふもとよりも低いため、ふもとから密閉された袋を持って行くと袋がふくらむ。なお100Paをヘクトパスカル[hPa]という。大気圧の100,000Paをヘクトパスカル単位で表せば、1000 hPaである。
 
;※ 注意
トリチェリが実験で用いた液体は水銀(すいぎん)である。この水銀は'''猛毒'''なので、中学生は、この実験は行わない方が良い。トリチェリが実験で水銀を用いた理由は、水銀は比重が大きいので、実験のガラス管の長さを節約できるからである。
 
なお、トリチェリの実験で、逆さまにしたガラス管の上部に出来た真空を'''トリチェリの真空'''(トリチェリのしんくう)という。
 
{{clear}}
* 写真
このことから、大気圧は高度が低いところではより大きいことがわかる。これは、空気に[[w:質量]]があるからである。高度が低い地点での空気は上方により多くの空気があるため、それらを支えるためにより多くの圧力を与えることになり、大気圧も大きくなるのである。空気に重さがあることは、後に気体を用いた実験を行なうことでわかる。
 
==== 水圧と浮力 ====
水中の物体がまわりの水から受ける圧力を'''水圧'''(すいあつ)という。水圧は,同じ深さなら同じ大きさであり,深さが深いほど大きくなる。また,水圧は,あらゆる物体の面に垂直にはたらく。
 
水圧が深さが深いほど大きくなるのは、水圧が上にある水の重さによって生じているからである。
 
水中などの液体中にある物体や水面にある物体が、水から受ける、浮き上がる上向き方向の力のことを'''浮力'''(ふりょく)という。この浮力の原因は、物体の下の面が受ける水圧のほうが、物体の上の面が受ける水圧よりも大きいことによって生じる。
 
:;浮力の大きさ(N) = 空気中で測定した値(N) - 水中で測定した値(N)
 
 
 
==身の回りの物質==
我々の身の回りには様々な物がある。例えば、教科書やノートなどの本は紙でできており、机や椅子などの家具のうち多くは、木でできている。他にも物を作るための材質としてプラスチックや金属があるが、金属はどれも同じなのではなく、それぞれが異なった性質を持つ。例えば、[[w:鉄]](てつ)や[[w:銅]](どう)、[[w:アルミニウム]]ではそれぞれ色が異なっている。
 
物を作っている物体の材料の種類を'''物質'''(ぶっしつ)という。例えばノートを材料について考えた時、「紙」は物質である。
ガラス製のコップについては、「ガラス」が物質名である。
 
ガラス、鉄、銅、アルミニウム、紙、水、油、食塩などが物質である。
 
「物質」と言った場合は、その形や大きさや用途は考えていない。
いっぽう、物の形や大きさを含めて考えた場合を'''物体'''(ぶったい)という。
 
ここでは、物質の性質について調べ、物質間で共通な部分とそうでない部分について学習する。物質の性質としては、上であげた色という性質以外にも、[[w:密度]](みつど)、[[w:電気伝導度]](でんきでんどうど)、[[w:融点]](ゆうてん)、[[w:沸点]](ふってん)などがあげられる。ここではそれらの性質の定義と代表的な物質での傾向についても後に解説する。
 
===物質のすがた===
 
ここでは物質の性質について調べる。まず上であげた物質の性質について簡単に解説する。最初にここで扱う物質の分類について説明する。
 
物質の中にはいくつかの物質が混ざってできているものがある。 例えば、空気は[[w:酸素]](さんそ)や[[w:窒素]](ちっそ)などいくつかの気体が混ざってできている。このようにいくつかの物質が混ざってできている物質のことを[[w:混合物]](こんごうぶつ、mixture)と呼ぶ。いっぽう、混合物でなく、混じりけのない物質のことを[[w:純物質]](じゅんぶっしつ、pure substance)と呼ぶ。
 
<!--純物質の中にはある手順を取ることで更に分解できる物質があるが、その物質が純物質であるためには、この手順は必ず[[w:化学変化]]を含んでいる必要がある。-->
 
純物質についての詳細は、化学変化を扱う項で説明する。
 
==== 有機物と無機物 ====
木材や砂糖などは燃えると二酸化炭素を発生する。木材は炭素を含み、木材も炭素を含む。このように炭素を含み、天然に存在する物質を'''有機物'''(ゆうきぶつ、organic compound)という。
いっぽう、ガラスや食塩などのように炭素を含まない物質を無機物(むきぶつ inorganic compound)という。
 
==== 物質の状態変化 ====
水を摂氏0℃まで冷やすと氷(こおり)になったり、100℃にすると沸騰して水蒸気になるように、同じ物質でも、温度によって状態が変わる。
 
水に限らず、物質は温度によって、状態が変わり、個体、液体、気体の三種類のうちのいずれかをとる。
 
* 個体
氷(こおり)や鉄や木や紙や布などのような物体。
 
* 液体
水(みず)やアルコールなどのような、流れることのできる物体。
液体は、容器によって、形は変わるが、体積は変わらない。
 
* 気体
空気や酸素や二酸化炭素のような物体。
容器の仲に広がり、容器によって体積は変わるし、形も変わる。
 
物質が、個体から液体に変化したり、液体から個体に変化したり、液体から気体に変化したり、気体から液体に変化することを'''状態変化'''(じょうたいへんか)という。
 
状態変化をしても、物質そのものは変化せず、また質量は変化しない。
 
液体が気体になることを'''気化'''(きか)という。
水を熱して100℃に近づけると、容器の底の方の水が泡立つが、これは水に溶けていた空気が気化したものである。この現象を'''沸騰'''(ふっとう)という。
水が気体になったものを'''水蒸気'''(すいじょうき、water vapor、ウォーター ベイパー)という。
 
沸騰の実験を行うときは、急激に沸騰すると、湯が吹き飛んで危険なので、急激な沸騰を防ぐために'''沸騰石'''(ふっとうせき、boiling chip)を加える。なお、急激に沸騰することを突沸(とっぷつ)という。
 
一度、使用した沸騰石は再利用してはいけない。沸騰石が突沸を防止できるのは最初の一回だけである。また、長期間、液体につけた沸騰石も能力を失う。
 
 
 
* 気体の集め方
 
;水上置換法
科学実験で発生させた気体を集める場合、気体が'''空気よりも軽い'''物質の場合は、空気中を上昇していくので、補集用のフラスコなどは'''下'''向きにして集める必要がある。
水に溶けない気体の場合は、水を満たした水槽に、フラスコを開いた口を下向きにして入れ、フラスコの内部は水(みず)で満たしておき、このフラスコの中にガラス管などで気体を導く。この方法を'''水上置換法'''(すいじょうちかんほう、)という。
 
酸素や水素は水に溶けにくいので、水上置換法で集められる。
 
水に溶ける物質でも、'''溶けにくい'''物質ならば、水上置換法で集める場合もある。
 
;上方置換法
空気よりも'''軽い'''気体を集める場合で、'''水に溶けやすい物体を集める場合'''や、水に溶けにくい気体でも水に溶かしたくない場合などは、水を使わない方法で集める必要がある。フラスコの開いた口を'''下'''向きにし、そのフラスコの内部にガラス管などで気体を導く。このとき気体を導くための管は、フラスコの奥の上の方まで入れる必要がある。このような集め方を'''上方置換法'''(じょうほうちかんほう)という。
 
;下方置換法
空気よりも軽い気体を集める場合は、補集用のフラスコなどは、開いた口を上向きにして集める必要がある。
この集め方を'''下方置換法'''(かほうちかんほう)という。
 
====物質の融点と沸点====
 
ここでは物質の[[w:沸点]]と[[w:融点]]について説明する。物質は温度や圧力を変化させることで"気体"(きたい、gas、ガス)、"液体"(えきたい、liquid、リキッド)、"固体"(こたい、solid、ソリッド)の間を移り変わることが知られている。
 
ここでは特に、温度による変化について述べる。
 
上であげた"気体"、"液体"、"固体"のことを物質の[[w:三態]](さんたい)と呼び、これらの間の変化を[[w:状態変化]](じょうたいへんか)と呼ぶ。特に、状態変化のうち固体から液体への変化を[[w:融解]](ゆうかい、Melting)と呼び、液体から気体への状態変化を[[w:蒸発]](じょうはつ、evaporation)と呼ぶ。また、融解が起こる温度を'''融点'''(ゆうてん、melting point)と呼び、蒸発が起こる温度を'''沸点'''(ふってん、boiling point)と呼ぶ。日常的な例では水の温度を 摂氏0度 にすることで水を固体にすることができる。また、水の温度を摂氏100度にすることで、水を[[w:水蒸気]]にすることができる。これらは状態変化の例である。
 
純物質の状態変化の際に物質の温度変化を観察すると、特徴的な結果が観察できる。
 
===== 液体の沸点 =====
* 実験
水などの物質を状態変化させその温度変化を観察せよ。特に物質の状態変化が続いているときの温度に着目せよ。
 
この実験では、熱を加え続けても、状態変化が続いているときには物質の温度は変化しないことが観察できる。これは、熱を加える働きと、物質が、融解(蒸発)の際に周囲から熱を吸収する働きとが、つりあっているためである。
 
一般に純物質の融点と沸点は、(同じ圧力では)物質ごとに決まった値を持つ。このことは、混合物を分離するために利用することができる。
「(同じ圧力では)」と書いたのは、沸点は気圧によって変わるからである。たとえば高い山の頂上付近では、沸点が下がる現象がある。
通常の標高の低い場所では水の沸点は100℃だが、たとえば日本の富士山の頂上付近では水の沸点は約88℃で沸騰が始まる。
 
;食塩水の加熱
 
食塩水などのように、かなりの高温にしないと融解しない固体の物質(食塩の主成分の塩化ナトリウムの融点は約800℃と、水の沸点を大きく上まわっている。)が溶けている水溶液を考える。
 
まず、食塩水は、沸点が100℃よりも少しだけ高くなる。この現象を沸点上昇(ふってんじょうしょう、boiling-point elevation)という。
 
食塩水を加熱すると、沸点で水だけを含む純粋な水蒸気が得られる。水蒸気には、塩は含まれていない。
 
この蒸気を冷ませば、純粋な水が得られる。このように蒸発を利用して、溶液から液体を分離する方法を'''蒸留'''(じょうりゅう、distillation)という。
 
 
 
;水とエタノールの混合液体の加熱
水とエタノールの混合液体のような液体どうしの混合物について、加熱をした時の温度変化を観察する同じ実験を行うと、状態変化の最中にも混合物全体の温度が変化することが観察できる。
たとえば、純粋なエタノールの沸点は、約78℃だが、混合液体だと、78℃くらいで沸騰が始まってからも、温度の上昇は緩やかになるが、それでも温度はなだらかに上昇していく。これが純物質の蒸発とは違う性質である。78℃くらいで蒸発が始まった時の蒸気にはエタノールの成分が多く含まれているが、少しだけ水蒸気も含まれている。このように、純物質の蒸発とは、少しちがう現象がおきる。
 
水とエタノールの混合液体の加熱をつづけて、80℃から82℃、85℃、88℃、92℃、93℃、95℃・・・・・・と加熱を続けていくと、100℃の手前で、温度上昇がゆるやかになり、100℃以上は上がらない。
この100℃あたりの蒸気を調べると、水を多く含むが、エタノールもすこしだけ含む。
 
このように、温度によって、蒸気に多く含む物質が異なるので、異なる今度での蒸気を分けて集めることで、物質の純度を高めることができ、この方法で純度を高めることを'''分留'''(ぶんりゅう)という。
 
;水とエタノールの分留
例えば沸点がより低い物質の沸点近くに温度を保ったとき、蒸発した気体には沸点が低いほうの物質が多く含まれると考えられる。
蒸気を集めて、それを冷やして液体に戻すと、沸点の低いほうの物質を多く含む液体が得られる。
 
この手法で物質を分離することを'''蒸留'''(じょうりゅう)と呼ぶ。蒸留は[[w:原油]](げんゆ)を精製する際に用いられるなど多くの応用がある。(詳しくは[[w:蒸留]]を参照。)
 
水の蒸気にも少しだけエタノールが含まれるように、分留では完全に分離することは不可能である。純度を上げるためには、分留で分離した異なる温度での蒸気を、冷まして液化させた後に、また蒸発させて分留をして、さらにその異なる温度での蒸気を冷まして液化させたものを再び分流して・・・・というふうに、何回も分留を繰り返すことによって、純度をあげている。
 
;気圧と沸点
融点と沸点は物質にかかる、大気の圧力によって変化することが知られている。例えば、高山で水を沸騰させるには100度より低い温度で十分なことが知られている。これは高山では[[w:大気圧]]がより低いため、水を蒸発させるのに必要なエネルギーが減るからである。
 
<!--(圧力の変化に対する沸点、融点の変化については[[w:クラウジウス-クラペイロンの式]]などが知られているが、この式は大学レベルなので、これについては、詳しくは述べない。)-->
 
;質量との関係
物質が状態変化を起こすとき物質の体積は変化するが物質の質量は変化しないことを説明する。このことは例えば、"氷をコップに入れて重さを測り、氷が融けた状態での重さと比較する"などの実験を行うことで確認できる。
状態変化は分子と分子と間の相互作用を変化させるが、分子自体は変化させない(物質が分子と呼ばれる小さい粒でできていることは後に説明する)。例えば、固体では個々の分子間の距離は近く分子が自由に動くことができない一方、気体では分子が自由に動くことができる。このときにも分子自身の数や重さが変化するわけではないため、状態変化によって物質の質量は変化しない。
 
===== 融解と凝固 =====
;凝固
水(みず)を冷やすていくと摂氏0℃で氷(こおり)になる。このように、ほとんどの液体は、冷やしていくと固体になる。液体が固体になることを'''凝固'''(ぎょうこ、freezing)と言い、そのときの温度を'''凝固点'''(ぎょうこてん、freezing point)と言う。
凝固が終わりきるまでの、水(みず)と氷(こおり)が混じっている混合物のときの温度は0℃のままである。
 
凝固が終わり、水(みず)がすべて氷(こおり)になった氷(こおり)を冷やしていくと、さらに温度を下げることが可能である。
 
いっぽう、氷を加熱していくと、摂氏0℃で溶け始め水になっていく。溶け終わるまでの間は、氷と水の混合物の温度は0℃のままである。
 
;融解
このように、固体は加熱していくと、たいていの物質では液体になる。加熱された固体が液体になることを'''融解'''(ゆうかい)という。
そして、加熱された物質が融解するときの温度を'''融点'''(ゆうてん、melting point)と言う。
 
一般に、ほとんどの物質で、凝固点と融点とは同じ温度である。
 
 
;過冷却
凝固点まで冷やしても、凝固が開始しない場合がある。この場合、ほんの少しの振動などを液体に加えたりすると、凝固が開始するのが一般である。
 
凝固点で凝固が開始しない場合に、凝固を開始させないように静かに冷却を続けていくと、凝固点より低い温度でも、液体でいられる。この現象を'''過冷却'''(かれいきゃく、supercooling、スーパー・クーリング)という。
 
 
====気体の性質====
ここでは、理科の実験でよく用いられる気体の性質についてまとめる。
 
* 酸素
[[w:酸素]](さんそ、oxygen、英:オキシジェン)は空気中に20%ほどの割合で含まれる気体であり、我々にとって身近な気体である。我々は[[w:呼吸]](こきゅう、breathing、ブリジング)をする際体内に酸素を取り入れている。これは、我々が生命活動を行うのに必要なエネルギーを生産するために、食物から吸収した栄養素と酸素とが必要になるからである。
 
また、酸素は物体が燃えるために必要である。例えば、木に火をつける際、よく火が起こりかかった所に息を吹きかけて火を起こすが、これは木が燃えるために必要な酸素を送り込んでいるのである。より詳しくいえば、木の表面は炭素を含んだ物質でできており、物質中の炭素と空気中の酸素が結合する反応によって熱が発生するのである。
 
[[File:Manganese-dioxide-sample.jpg|thumb|二酸化マンガン]]
実験室では、薄い'''過酸化水素水'''(かさんかすいそすい)を用いて酸素を発生させることが多い。[[w:過酸化水素水]](hydrogen peroxide)は平時でも酸素と水とに分解するが、'''二酸化マンガン'''(にさんかマンガン、manganese dioxide)を加えることでその反応を促進することができる。ただし、このとき反応を行うのはあくまで過酸化水素水のみであり、[[w:二酸化マンガン]]は反応の際に変化しない。このように反応の際に自身は変化せずに他の反応を促進する働きがある物質を、'''触媒'''(しょくばい、catalyst、カタリスト)と呼ぶ。([[w:触媒]]について詳しくは[[高等学校化学]]などを参照。)
 
;オキシドール
なお、消毒薬で「オキシドール」というものがあるが、これは過酸化水素水の水溶液である。
 
過酸化水素水は血液に混ざると、血液中に含まれる'''カタラーゼ'''という物質が触媒の作用をし、過酸化水素水を分解して、酸素と水に分解する。
消毒薬のオキシドールを傷口につけると発泡するのは、酸素が発生したためである。
 
 
* 水素
[[w:水素]](すいそ、英: hydrogen、ハイドロジェン)は非常に軽い気体であり、空気中で燃える。このとき、水素が酸素と結合することで水が発生する。
 
実験室では、[[w:塩酸]](えんさん、hydrochloric acid、ハイドロクロリック・アシッド)などの酸性の溶液と、金属(例えば[[w:アルミニウム]]や[[w:鉄]])を反応させることで水素を発生させることができる。水素は空気よりも軽い物質なので、水素を[[w:捕集]]する際は、捕集用の器具を水素を発生させる器具の上方に置く必要がある([[w:上方置換]])。
 
* 二酸化炭素
[[w:二酸化炭素]](にさんかたんそ、carbon dioxide、カーボン・ダイオキサイド)は、空気中に0.03%程含まれる気体であり、酸素原子に炭素原子が2つ結合した分子からなる気体である。二酸化炭素は我々に取って身近な気体である。我々は呼吸をする際、酸素を吸収して二酸化炭素を排出している。これは我々が食物からエネルギーを取り出すさいに酸素を消費すると同時に、二酸化炭素を排出することと対応している。一方、植物は[[w:光合成]](こうごうせい、photosynthesis、フォウトー・シンセシース)によって二酸化炭素を吸収しつつ、酸素を排出する。これは呼吸と逆の反応である。光合成について詳しくは、[[中学校理科 第2分野]]を参照。
 
二酸化炭素は炭素と酸素が結合する(炭素が燃える)ことで生じる。我々の身の回りにある物の多くも炭素を含んでいる。例えば[[w:綿]](めん、cotton、コットン)などの[[w:天然繊維]](てんねんせんい、natural fiber)でできた衣類は炭素を含んでおり、それらが燃えるときには二酸化炭素が発生する。また、[[w:石油]](petroleum、ペトロレウム)やガソリン(gasoline)も炭素を含んでおり、燃えるときには二酸化炭素を発する。
 
二酸化炭素は空気よりも重い気体であるので、二酸化炭素を集める時には捕集器具を下方に置く('''下方置換法''' [[w:下方置換]])。二酸化炭素を水に溶かした溶液は、[[w:炭酸]](たんさん、carbonic acid)と呼ばれ、弱い酸性の水溶液になる。
 
二酸化炭素を石灰水に通すと、石灰水が白く濁るので、化学実験で発生した気体が二酸化炭素かどうかの確認方法に、この石灰水との反応が用いられる。
 
 
* 窒素
[[w:窒素]]は大気の80%を占める気体であり、水に溶けにくく、化学反応を起こしにくい性質を持つ。
 
* アンモニア
[[w:アンモニア]](英:ammonia)は窒素と水素からなる分子であり、性質は匂いの強い気体であり、また水に溶けやすい。アンモニアの水溶液はアルカリ性を示す。アンモニアは空気よりも軽く、補集するときには器具を上に置いて捕集する。(アンモニアは水に溶けるので、水上置換法では集められず、'''上方置換法'''でアンモニアを集める必要がある。)
 
なお、アンモニアのにおいを確認するときは、手であおぐなどして、アンモニアから鼻のほうへ風を送って、においを確認する。
 
けっして、直接、鼻を近づけて確認してはいけない。鼻を近づけて確認すると危険である。
 
 
====物質の密度と電気的性質====
 
物質の性質として目につきやすいものとして、その物質の色があげられる。残念ながら物質の色について一般的に述べることは難しい。これは、物質に色がついて見えるのは、物質がある色([[w:波長]])の光を選択的に反射していることに対応するのだが、その仕組みが物質のミクロの構造によることが多いからである。例えば、[[w:ダイヤモンド]](diamond)と[[w:黒鉛]](こくえん、graphite、'''グラファイト''')は同じ[[w:炭素|炭素]][[w:原子|原子]](たんそげんし)からできていることが知られているが、これらの色は全く異なる。
:[[画像:Brillanten.jpg|200px|ダイヤモンド]][[画像:GraphiteUSGOV.jpg|200px|黒鉛]]
 
これは、これら2つの物質では原子の並び方が異なっており、光に対する反応が違うからである。このように物質の色について調べるには光についての知識が必要となるため、ここでは細かく扱うことはしない。(詳しくは[[高等学校物理]]などを参照。)
 
<!--*注意(発展)
上の例では物質からの光は物質からの反射によるものと述べたが、物質自体もそれが持つ熱によってある波長の光を放射していることに注意が必要である。ただし、その波長は通常は[[w:赤外線]]に属するものであり、人間の目で見ることはできない。[[w:赤外線]]、[[w:黒体輻射]]を参照。-->
 
ここからは色以外に上で述べた性質についてまとめる。物質の'''密度'''(みつど、density、デンシティ)とは、物質の単位体積あたりの質量を表す値である。例えば、同じ体積の紙と銅とで重さを比べた場合、銅の方が重い。このことは、銅の密度が紙の密度よりも大きいことを示している。
 
* 実験
同じ体積の紙と銅を用意し、その重さの違いを確かめよ。重さの違いを確かめるには[[w:天秤]](てんびん、balance、バランス)などを利用することができる。
 
;密度について
よく知られた物質の密度は、例えばwikipediaの対応する記事に記載されている。例えば、銅の密度については[[w:銅]]を参照。密度はあらゆる物質が持つ物理量であり、その値は物質によって非常に異なっている。水のような液体や、空気のような気体の密度は通常固体の密度よりも小さい。すぐ後で扱うが、多くの物質は温度(と圧力)によってその状態を"気体"、"液体"、"固体"に変化させる。このとき、物質の状態変化に伴って、物質の密度はこの順に大きくなることが普通である。ただし、水はこの変化の例外であり、"固体"(氷)の密度が"液体"(水)の密度よりも小さい。これは"氷が水に浮かぶ"性質につながっている。
 
密度の単位は kg/m<sup>3</sup> (キログラム毎立方メートル) で与えられる。
 
;電気的な性質について
次に電気伝導度(でんき でんどうど)について説明する。後に扱うが、物質に流れる電気とは、[[w:電子]](でんし、electron、'''エレクトロン''')の流れのことであり、物質に電気が通りやすいかどうかは、物質の性質によって決まる。電気伝導度は、物質が電気を通しやすいかどうかを表す値であり、物質ごとに決まる定数である。この値は、物質が持つ電子の状態によっており、密度と同様に微視的に決まる値である。
 
例えば、流れて来た電子が入り込む部分が、既に他の電子によって埋まっている場合には、その物質は電気を通しにくくなる。一方、電子が非常に動きやすい状態になっている物質では、流れてきた電子が他の電子を押し出して電子の流れを伝えるため、電気が流れやすくなる。これらは物質ごとの結合の性質によって変化することが知られているが、ここでは詳しくは扱わない。(詳しくは[[高等学校化学]]などを参照。)
 
さいわいにも電気の通りやすさには物質の種類ごとにある程度の共通性がある。ここではその性質についてまとめる。
 
* 実験
物質に対して電気を流す実験を行う。特に、いくつかの金属について電気が通りやすいことを確認する。水溶液について実験を行うときには十分に安全上の注意を払うこと。
 
実験の結果から金属については電気が通りやすいことがわかる。(これは、金属原子間の結合方法によっているが、これについては[[高等学校化学]]、[[w:金属結合]]などを参照。)。
一般に電気を流すためには[[w:導線]]が用いられるが、導線の材質には通常何らかの金属が用いられる。これは金属の電気伝導度が高いことに加え、丈夫であることや加工が可能であることによるものである。
 
*発展 雷と金属
電気が関わる現象として[[w:雷]]がある。
:[[画像:Thunder.jpg|200px|雷]]
雷は、雲の中の水滴と地面との間に非常に高い電圧が生じた結果、本来なら電気を通しにくい大気中を電気が通過していく現象である。電気は基本的に電気を通しやすい物質に向かっていく傾向があるため、電気伝導度の高い金属製の物体は雷を呼びやすく、注意が必要である。一方、この性質を利用して雷を誘導する器具として[[w:避雷針]]がある。
 
また、物質によっては固体の時に電気を通さなかった物質で、水溶液にすることで電気を通すようになる物質もある([[w:食塩]]など)。これらの物質は大抵は[[w:イオン結合]](ionic bond)によって結合する物質である。(詳しくは[[高等学校化学]]を参照。)
 
 
===水溶液===
 
====水溶液の性質と再結晶====
砂糖を水に溶かすと砂糖水ができる。このとき、砂糖のように水に溶けている物質を'''溶質'''(ようしつ、solute、ソリュート)といい、水のように溶質を溶かしている液体を'''溶媒'''(ようばい、solvent、ソルベント)という。また、溶質が溶媒に溶けた液を'''溶液'''(ようえき、solution、ソリューション)という。溶媒が水の溶液を'''水溶液'''(すいようえき、aqueous solution)という。
 
水溶液は透明である。また、溶液中での溶質の濃さはどの部分でも同じである。
 
 
ある物質を一定量の水に溶かしていき、その物質がもうこれ以上は溶けきれなくなったときのことを'''飽和'''(ほうわ、saturation、サチュレイション)といい、その水溶液を'''飽和水溶液'''(ほうわすいようえき、saturated solution など)という。水100gに物質を溶かして飽和水溶液にしたとき、溶けた溶質の質量の値をその物質の'''溶解度'''(ようかいど、solubility、ソリュビリティ)という。
 
 
水溶液から出てきた固体をルーペや顕微鏡で観察すると、その物質に特有な規則正しい形をしていることがわかる。純粋な物質で規則正しい形をした固体を'''結晶'''(けっしょう、crystal、クリスタル)という。
 
物質をいったん溶媒に溶かし、温度を下げたり溶媒を蒸発させたりして再び結晶として取り出す操作を'''再結晶'''(さいけっしょう)という。再結晶により物質をより純粋にすることができる。
 
====質量パーセント濃度====
水溶液の溶質の濃さを数値化したものを'''濃度'''(のうど、concentration、コンセントレイション)と言う。
水溶液の濃度を表す場合は、いろいろな表し方がある。このうち、よく用いられる質量パーセント濃度の表し方を説明する。
水溶液の全体の質量(溶媒の質量だけでなく、水溶液全体の質量)に対する、溶質の質量をパーセント表示したものが、質量パーセント濃度である。
 
式で表すと、
 
:質量パーセント濃度[%] = { 溶質の質量[g] / (溶質の質量[g] + 溶媒の質量[g] ) }× 100
 
である。
 
===プラスチック===
 
[[File:Plastic bottle.jpg|thumb|150px|ペットボトル容器(画像の左側)の例。右上の試験官のような形のものを金型で圧延して、ボトルの形にしている。]]
プラスチック材料は,天然には産出せず、石油などを原料として人工的につくられた物質で'''合成樹脂'''(ごうせいじゅし、synthetic resin、シンセティク・レジン)ともよばれる。
 
プラスチックは,炭素をふくむ物質であり、有機物のなかまである。そのため共通して加熱するととけてやわらかくなったり、燃え出したりする性質がある。また、熱や電気を通しにくい性質をもっている。しかし、近年は電気を通すものが開発されている。
 
プラスチックにはいろいろな種類がある。例えば、ペットボトルに使われている栓はポリエチレン(PE)でできており、本体はポリエチレンテレフタラート(PET)とよばれるプラスチックである。
 
* ポリエチレン(PE)
水に浮く。加熱するととけながらよく燃え,けむりはほとんど出ない。
 
<gallery>
File:LDPE_bottle.jpg|ポリエチレンの容器
</gallery>
 
* ポリエチレンテレフタラート(PET)
水に沈む。加熱するととけながら燃え,黒いけむりを出す。
 
プラスチックは軽くて、割れにくく、加工しやすいので、いろいろな形のものをつくることができ、我々の生活を快適にしている物質といえる。
 
== 熱と温度 ==
=== 摂氏温度 ===
[[ファイル:Clinical thermometer 38.7.JPG|thumb|300px|セルシウス温度計]]
 
さて、「温かい、暖かい、暑い、熱い」とか「寒い、冷たい、冷える」とかを定量化したものを、温度(おんど)と呼ぶことにしよう。
温度の単位として実用上、多く用いられている℃単位の'''摂氏温度'''(せっしおんど)を用いる。摂氏温度は、'''セルシウス温度'''(degree Celsius)とも言う。
 
この摂氏温度では、温度の値の基準として、大気圧 1atm(=約101.3kPa。Paとは圧力の単位のひとつ。)のもとで、純水と氷の共存する温度を'''0℃'''と定め、また、同じ大気圧1atmのもとで純水が沸騰するときの温度を'''100℃'''と定めらている。
そして、0℃と100℃の間の温度を'''100等分'''している。
 
温度計の種類にアルコール温度計や水銀温度計などあるが、これらは物体の温度が上がることによる膨張を、温度の測定器として利用した器具である。
 
読者は、もしかしたら「温度の単位が摂氏温度なんて、当然じゃないのか?」と思うかもしれないが、日本以外の外国では、国によっては「ファーレンハイト温度」(いわゆる華氏温度、Fahrenheit)と言って、摂氏温度と異なる温度単位を用いる国もあるのである。
 
=== 熱量 ===
「熱量(ねつりょう)とは何か」を述べる前に、たとえ話をする。
1kgの物体と、べつの1kgの物体を合わせて、重量計に載せれば、測定値は2kgになる。
だが、容器に入った10℃の水に、等量の10℃の水を注いでも、20℃にはならない。
 
いっぽう、温度を上げるには、エネルギーが必要だが、エネルギーは足しあわせができる。
このような理由から、加熱された物体に蓄えられた熱エネルギーと温度とを区別する必要がある。
そこで、熱エネルギーのことを'''熱量'''(ねつりょう、heating value)といい、これは温度とは区別する。
 
熱量の単位は'''カロリー'''(フランス語: calorie)といい、単位の記号はcalと書く。1cal は、水 1g の温度を 1℃ 上昇させるのに必要な熱エネルギーのことである。ここでいう「水」とは、50℃のお湯だろうが、80℃のお湯だろうが、沸騰していない液体のH<sub>2</sub>Oのことであるとする。
 
ともかく水の熱量の式は、
 
:熱量(カロリー) = 水の質量(グラム単位g) × 温度差(℃単位)
 
である。
栄養学の分野ではカロリーが用いられることが多い。中学でも、熱量の計算にはカロリーを用いても良いだろう。
 
 
=== 熱の伝わり方 ===
熱は、外部から手を加えなければ、自然と温度の高い所から、温度の低いところへと移動していく。
その結果、温度の高かった場所は、熱を手放していき、だんだんと温度は低くなる。逆に、周囲と比べて温度の低かった場所は、しだいに温度が高くなる。そして、いつしか、ふたつの箇所の温度は同じになる。このような熱の移動が無い状態を'''熱平衡'''(ねつへいこう)という。
いっぽう、熱が、温度の低いところから、温度の高い所へと自然に移動することは、無い。
 
さて、静止した物体での熱の伝わり方には、大きく分ければ、'''熱伝導'''(ねつでんどう、thermal conduction、サーマル・コンダクション)と'''対流'''(convection、コンベクション)と'''熱放射'''(radiation、ラディエイション)の三つに分けられる。
 
 
==== 対流 ====
[[File:ConvectionCells.svg|thumb|right|300px|上と下とで温度差のある場所での、対流の一例。下から入力された熱は、対流によって上部へと運ばれ、流体表面からの熱放出によって冷やされた後は下部へと潜る。]]
 
熱を持った物体そのものが静止していても、となりにある気体や液体などが運動すれば、その気体などが熱を運ぶ。これを対流(convection、コンベクション)という。
気体や液体などでは、温度差があると、温度が高いほど密度が軽く浮力がかかるので、自然に対流が起こりやすい。
 
密度変化による対流の場合は、循環運動をする場合が多い。なぜなら、暖められて密度が軽くることで浮力が発生し、そのため暖められた物体が上方に移動し、かわりに元から上部にあった冷たい物体が押しのけられ、押しのけられた冷たい物体は重力によって降りてくる。
 
{{clear}}
==== 熱伝導 ====
対流が起きなくても、個体などの物質どうしが接触していけば、熱は伝わっていく。これを熱伝導(ねつでんどう、thermal conduction、サーマル・コンダクション)という。
 
==== 熱放射 ====
[[Image:Hot metalwork.jpg|250px|thumb|right|可視光の熱放射が、このような熱された金具で見ることができる。赤外線領域での放射は、人間の目と画像で撮影されたカメラには見えないが、赤外線カメラでは撮影できる。]]
 
実は、どの物体も、人間の目には見えないが、'''電磁波'''という電気と磁気の波を出している。電磁波を出すことを'''放射'''(radiation、ラディエイション)という。その放射する電磁波が、人間の眼に見えないのは、単に放射電磁波の周波数が、人間の目の可視領域で無いからという理由である。
 
この放射する電磁波は、常温では周波数が低く、赤外線の領域である。高音になるほど、物体の放射電磁波の周波数が高くなり、可視領域へと入っていく。溶鉱炉などで、高温で溶けた金属が光るのは、この放射光によるものである。このような高温物体から電磁波がでることを'''熱放射'''(ねつほうしゃ)、あるいは単に'''放射'''という。熱輻射(ねつふくしゃ)と言う場合もある。
この放射電磁波によっても、エネルギーが高温側の物体から低温側の物体に輸送される。低温側からも放射電磁波が出るが、高温側の物体のほうが放射電磁波のエネルギーが大きいので、差し引きして、結局は、高温側から低温側へとエネルギーが移る。
 
 
{{clear}}
 
==== 発展的な説明 ====
;発展 ボイルの法則
[[File:Legge di Boyle dati originali.jpg|thumb|400px|ボイルの法則<br>縦軸が圧力。横軸が体積。値はロバート・ボイル本人のオリジナルデータ。]]
ボイルという人物が、容器内の気体の温度を変えずに、一定温度での気体の圧力と気体の体積との関係を調べたところ、法則性を発見した。
 
外部から、ピストンを押しこむなどして、気体の体積を半分にすると、気体の圧力が'''2倍'''になる。
(ピストン内の気体の圧力を測るには、たとえばピストンの可動部に外側から重りを載せるなり、あるいはバネばかりを利用するなりと、ともかく工夫すれば可能である。)
 
同様に、気体の体積を<math>\frac{1}{3}</math>'''倍'''にすると、圧力が'''3倍'''になる。同様に、気体の体積を<math>\frac{1}{4}</math>'''倍'''にすると、圧力が'''4倍'''になる。
以下、気体体積の<math>\frac{1}{5}</math>'''倍'''や<math>\frac{1}{6}</math>'''倍'''でも同様である。べつに気体体積は整数倍でなくても、たとえば
:<math>\frac{1}{3.942}</math>'''倍'''とか、どんな数字でも、同様の法則が成り立つ。
 
これ等をまとめると、気体の圧力p[Pa]と体積V[m<sup>3</sup>]との関係には、以下の関係式がある。
 
:'''pV=K'''
 
(Kは定数)
 
 
この関係式を、'''ボイルの法則'''(ボイルのほうそく、Boyle's law)という。
 
{{clear}}
 
;シャルルの法則
[[File:Gay-lussac schema.jpg|thumb|right|300px|シャルルの法則の概念図<br>縦軸は体積で、このグラフではミリリットル単位。横軸の温度はこのグラフでは℃単位。]]
 
さて、シャルルという人物が、温度と容積の関係を測って研究したところ、法則性を発見した。大気圧の状況下では、気体を1℃温、上昇させると、0℃の体積の<math>\frac{1}{273}</math>ずつ膨張することを、シャルルは発見した。
 
これを式で表すと、0℃のときの気体の体積をV0として、一般の温度の体積をVとすると、温度t[℃]のときの関係式は、
 
:<math>V=V_0(1 + \frac{t}{273})</math>
 
であることを、シャルルは発見した。
この法則を'''シャルルの法則'''(英: Charles's law)という。
 
;絶対零度
シャルルの観測結果をグラフに書くと、マイナス273℃で、理論上では気体は体積が0になる。このマイナス273℃を'''絶対零度'''(ぜったいれいど、absolute zero、アブソリュート・ゼロ)という。絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、理論上は考えらない。
また実験的にも絶対零度以下の温度は、測定誤差の範囲程度を除けば、確認されていない。たとえばマイナス300℃とかマイナス500℃とかは、実在しない。
 
なお、現代では、測定によって、絶対零度の、より正確な値がマイナス273.15℃だと、知られている。
 
絶対零度のマイナス273℃とは、熱運動の全くない状態である。