「政治学概論」の版間の差分

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==== 正義 ====
[[ファイル:Platon-2.jpg|thumb|right|150px|プラトン(前427-347年)はアテナイの哲学者。貴族市民階級の出身で政治家を目指していたが後に哲学を志す。哲学者ソクラテスから教えを受けた経験があり、アカデメイアに入学した後に教育にも従事した。理性によって把握する世界の本質であるイデアを提唱し、人間や国家が備えるべき正義イデアについて研究を進めた。政治学に関する著作には『国家』、『法律』など。]]
政治(politics)は古代ギリシアの都市国家(polis)に由来する言葉であり、政治とは国事と特徴付けられる。ならば政治とは国家がどのような状態にあることを促す活動であるのか。この問題に対する最も古い学説は正義と関係している。古代ギリシアの哲学者プラトンは当時のアテナイの政情を批判的に検討することで、正しい国家のモデルを構築していった。そのモデルでは正義を備えた理想国家を目的とし、また国家が堕落することを回避するための理性的な活動として政治の役割が期待されている。プラトンによれば正しい国家が保持しなければならない正義は理論的には三つに区分され、理知的部分の叡智、気概的部分の勇気、そして欲望的部分の節制である。これら三部分はそれぞれ哲人である守護者、国防を担う軍人、そして生産活動に従事する庶民という三つの社会階級によって分担されている。これら三種類の正義が正しく分担され、また正しく機能している状態で調和していることが国家の基礎である。この調和が失われれば人間の魂は不必要な快楽や過剰な消費願望のために「野獣」のそれへと堕落し、国家もまた最悪な状態「豚の国家」へと堕落する。プラトンの政治哲学は国家の正義を通じて個人の精神をも正義へ方向付けることを試みている。このような正義と政治を総合して把握する見方はプラトンだけでなく、古代ギリシアの哲学者アリストテレスによっても示されている。アリストテレスはあらゆる存在は素材を通じて目的に沿った自己形成するものと捉え、人間もまた善を追求する存在と考えた。そして節制、賢慮、友愛、中庸などの個人の善についての倫理学的な研究を進め、さらに国家の善を明らかにする「最高の倫理学」として政治学を位置づけている。ただしアリストテレスが模索していたのはプラトンのような国家の道徳的モデルではなかった。彼は人間が生まれながらにして政治的な動物であり、人間集団として家族、村落の延長線上に国家があることを主張する。そして国家を構成する君主制や僭主制などそれぞれ特徴があるいくつかの政体は変化するものであり、最善の政体はそれらを組み合わせた中間の混合政体であると考えた。そしてその担い手となる社会的基盤として統治者にも被治者にもなりうる中流階級という市民の存在意義を強調した。そしてその国家が果たすべき正義については市民の同質性に関わる一般的正義と市民の平等性に関わる特殊的正義の二つを以って政治の役割を描き出している。