「高等学校生物/生物II/生物の進化」の版間の差分

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中学校社会 歴史/人類の出現 2014年6月18日 (水) 22:27‎ から引用。高校生物用に書き換え。
中立進化、遺伝的浮動など
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人類は約10万年前にアフリカ大陸を出て、世界中に散らばった。
 
== 進化のしくみ証拠 ==
進化の大まかな仕組みは、以下の仕組みである。
 
:進化を起こす主な原因は、生殖などにおける、遺伝子の変化である。有性生物だろうが無性生物だろうが、遺伝子は突然変異により、世代ごとに少しずつ変わっていく。遺伝子の変化により、多様な個体が生まれる。環境が変化した場合、その環境に適応した個体が多く生き残り、やがて、その適応した遺伝子を持つ個体が増えていく。その適応した個体の遺伝子も、少しずつ変化していき、また、同様に、環境が変化した場合には、その環境に適応した個体が生き残り繁栄していく。
 
この仕組みの証拠を、地質時代の化石や遺伝子などの変化を追って、確かめていこう。
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=== 分子に見られる事実と解釈 ===
:(未記述)
 
== 進化のしくみ ==
=== 遺伝子頻度 ===
交配して生殖可能な集団に存在する遺伝子全体の集合を'''遺伝子プール'''という。
 
ある遺伝形質について、対立形質のそれぞれの遺伝子の割合を'''遺伝子頻度'''(いでんし ひんど、gene frequency)という。
 
==== 遺伝的浮動 ====
たとえば、白黒の碁石が50個ずつ計100個の入った不透明の袋から、中を見ないで10個の石を取り出した場合、たまたま白6個で黒4個だったり、あるいは白3個で黒7個だったりする場合もあり、必ずしも白5個かつ黒5個とは限らない。もちろん、たまたま白5個かつ黒5個を取り出す場合もある。
 
遺伝子の進化でも、子供の世代での、ある遺伝子の頻度が、親の世代とは同じとは限らない。子供の世代で、たまたまある遺伝子の頻度が増える場合もあれば、減る場合もある。
 
仮に先ほど、白6個で黒4個を取り出したとしよう。
次に、先ほどの結果を反映して、今度は白石60個と黒石40個を用意したとして、それを不透明の袋に入れたとしよう。そして、中を見ないで、石を10個だけ取り出したとしよう。
 
結果で、たまたま白7個で黒3個の場合もあれば、たまたま白6個で黒4個と先ほどと同じ場合もあれば、たまたま白5個で黒5個という場合もある。
 
このように、自然選択や突然変異などの生物的な過程が起きて無くても、偶然という確率的な過程によって遺伝子頻度は変動していく。このような遺伝子頻度の偶然による変化の現象を'''遺伝子浮動'''(いでんし ふどう)という。
 
==== ハーディ・ワインベルグの法則 ====
ある集団で交配が自由に行われる場合、単純計算では、遺伝子頻度は変化しないことになる。(だが実際は、仮定どおりにいかないので遺伝子頻度は変化する。)
 
単純計算では、つぎのような計算が成り立ち、なので遺伝子頻度は変化しない。
 
まず、ある個体群の集団で、対立遺伝子Aとaの頻度を、それぞれAの頻度はpとして、aの頻度はqとする。(p+q=1)
 
次世代の遺伝子型はAA、Aa、aaの三種類である。
 
それぞれの遺伝子型の頻度は、<math>(pA+qa)^2=P^2AA+2pqAa+q^2a</math>の展開式より、AAはp<sup>2</sup>であり、Aaの頻度は2pqであり、aaの頻度はq<sup>2</sup>である。
 
この世代のA遺伝子の頻度は、<math>2p^2+2pq=2p(p+q)=2p</math> である。(p^2の係数の2は、AAではAが2文字あるから。)
 
同様に、この世代のa遺伝子の頻度は、<math>2pq+2^q=2(p+q)q=2q</math> となる。
 
Aとaの遺伝子頻度の比は、A:a=2p:2q=p:qとなり、親の世代と同じにA:a=p:qになる。
 
よって、このような集団では、遺伝子頻度は、その後の世代でも同じである。これを'''ハーディ・ワインベルグの法則'''という。
 
この法則の前提として、
 
:・ 突然変異が起こらない。
:・ 集団の個体数が充分に大きい。
:・ 他の同種集団への移住は無く、他の同種集団との流入・流出も無い。
:・ 個体間に生存能力・生殖能力の差が無く、自然選択が起こらない。
:・ 交配の相手が任意(ランダム)。
 
という前提がある。
 
==== びん首効果 ====
個体数が少ないと、ハーディ・ワインベルグの法則が成り立たない。では、個体数がが少なくなると、遺伝子頻度はどうなるかを、具体的に考えてみよう。たとえば、親の世代の遺伝子頻度がA:a=p:qであっても、子供の数が少なくて、たったの4個体しかない場合、
子供の形質が仮に全員aaという場合も起こりうる。(計算の都合上、子世代の男女比は無視する。無性生殖の場合を考えると計算が簡単である。) この場合、子供の世代以降は、A:a=0:1となり、親の世代とは遺伝子頻度が変わる。
 
このように、個体数が小さくなると、遺伝子頻度が変わりやすくなる現象を'''びん首効果'''という。
 
そして、いったん遺伝子頻度が変わると、今度はその遺伝子頻度が受け継がれていく。
 
先ほどの例では、極端な例としてA遺伝子が失われる場合を挙げたが、べつにA遺伝子が失われなくても個体数が少数の世代のときに遺伝子頻度が変わってしまえば、以降の世代では、その頻度が受け継がれていく。
 
=== 分子進化 ===
==== 分子時計 ====
いろいろな生物種のヘモグロビンのα鎖のアミノ酸配列を調べてみると、生物種に関わらず、生物種どうしのアミノ酸配列の違いが、その2種の生物が進化的に分かれてからの時間に比例して増えていくことが分かった。そして生物種に関わらず、この配列の変化速度が、ほぼ一定だということが分かった。同様に、他のタンパク質のアミノ酸配列でも、DNAの塩基配列でも、変化速度が一定だということが分かった。
 
このような、遺伝される配列の変化の速度を'''分子時計'''(ぶんしどけい)という。
分子時計は、種間の類縁関係を測定する手段の一つとして用いられる。
 
また、DNAやタンパク質の変化など分子レベルでの進化を'''分子進化'''(ぶんし しんか)という。
 
遺伝子の種類によって、分子進化の起こりやすさは違う。その遺伝子が少しでも変化してしまうと生存に不利な遺伝子の場合、分子進化は遅い。
 
==== 中立説 ====
DNAのある箇所の塩基配列が突然変異したとしても、発現されるアミノ酸が変わらない場合もある。(コドンやイントロンなどを参照せよ) 
このような場合、そのDNAの変化は、生存に有利でも不利でもないのが普通である。
 
このような、生存に有利でも不利でもない形質も、遺伝によって受け継がれていく。このような有利でも不利でも形質は、自然選択(いわゆる「自然淘汰」のこと)を受けない。進化では、このような場合が大多数であるという説を'''中立説'''といい、木村資生(もとお)などが分子的な解析にもとづいて提唱した。また、このような、自然選択に掛からないで起こる進化を'''中立進化'''(ちゅうりつしんか)という。
 
塩基配列などの分子レベルの変化(つまり分子進化)で中立進化が多く見られるが、表現型でも中立進化は起こる場合もある。