「高等学校生物/生物II/生物の進化」の版間の差分

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種分化
工業暗化など
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地理的隔離をしていなくても、同じ場所に住んでいても生殖隔離をする場合もある。ある種の一部に繁殖時期が変化する突然変化がおきれば、その二種は生殖する機会が無くなり、種分化をしていく。
 
種分化に至らない小規模な進化を'''小進化'''という。一方、種分化にいたるほどの大きな進化を'''大進化'''という。
 
=== 適応放散と収束進化 ===
ある1つの生物種が、さまざまな環境に適応した結果、いくつもの生物種に分かれて進化する現象を'''適応放散'''(てきおう ほうさん)という。
 
オーストラリアにいるカンガルーやコアラなど、おなかに袋を持って子育てする生物を有袋類(ゆうたいるい)という。一方、ウシやウマなどのような他の大陸の一般の動物を真獣類(しんじゅうるい)という。
 
オーストラリアには、フクロモモンガという生物がいる。これは他の大陸のモモンガと形態が似ている。他にも、フクロオオカミがおり、これは他の大陸のオオカミと形態が似ている。オーストラリアにはフクロモグラがおり、他の大陸のモグラと行動が似ている。
 
このように、オーストラリアの動物では、他の大陸と似ている別種の生物がいる。そして、ある真獣類と似た環境で生活する有袋類は、その真獣類と似た形態を持つ。
 
この、オーストラリアの現象の原因は、まずオーストラリア固有の動物が共通の祖先を持つことと考えられている。そのオーストラリアの有袋類が、環境に応じて変化した結果だと考えれる。
 
また、フクロモモンガとモモンガのように、遺伝的には異なる生物が、似た自然選択を受けた結果、似たような形態に進化することを'''収束進化'''(しゅうそく しんか)という。
 
=== 工業暗化 ===
近代19世紀のイギリスの工業地帯(マンチェスターなど)で、ガの一種のオオシモフリエダシャクで、体色が黒っぽく変化した個体が増えるという現象が起きた。
 
オオシモフリエダシャクの体表の色には二型があって、白っぽい明色型と、黒っぽい暗色型がいた。
 
イギリスでは木の幹に白っぽい地衣類が生えており、白型白っぽい明色型のオオシモフリエダシャクの白色は保護色になっていたので、捕食者の鳥などに見つかりにくかった。
 
工業化の進む前の時代は明色型のほうが多く、暗色型の個体数は、明暗全体の1%程度であった。
 
しかし、工業により大気汚染が進んだことで、白い地衣類が減ったり、また大気汚染の黒煙などにより、黒色のほうが目立たなくなった。このため暗色型が増えた。リバプールでは、暗色型は90%を超えるほどになった。
 
この現象を'''工業暗化'''(こうぎょう あんか)という。オオシモフリエダシャクの工業暗化は、小進化の例でもある。
 
現在では大気汚染への規制や対策が進み、その結果、暗色型の個体数は減っており、地域にもよるが、暗色型の個体数は、明暗全体の個体数のうちの10%~20%程度である。