「量子力学/量子力学の発展」の版間の差分

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=== 原子モデルと放射スペクトル ===
ここで再び1900年代初頭に戻ると、その時期には既に分子や原子の存在が理論的に予想され、分子はいくつかの原子の組み合わせで出来ていて、また原子も何らかの素粒子の組み合わせで出来ていると考えられていました。[[w:アーネスト・ラザフォード|アーネスト・ラザフォード]]の指示の下、[[w:ハンス・ガイガー|ハンス・ガイガー]]と[[w:アーネスト・マースデン|アーネスト・マースデン]]らによって行われた[[w:ガイガー=マースデンの実験|アルファ粒子の散乱実験]]の結果を得て、ラザフォードはアルファ粒子の[[w:ラザフォード散乱|散乱モデル]]を考え、正の[[w:電荷|電荷]]を持つ小さな核が原子質量の大部分を担い、負の電荷を持つ[[w:電子|電子]]が[[w:原子核|原子核]]の周りを運動するという[[w:ラザフォードの原子模型|ラザフォードの原子モデル]]を提案しました。この発表の後に原子核が正の電荷を持ち、電子が負の電荷を持つことが実験的に明らかにされ、また水素やヘリウムが持つ電子の個数がボーアによって実験的に推定されています。ラザフォードの原子モデルの提案により、[[w:周期表|元素周期表]]の[[w:原子番号|原子番号]]と原子核の電荷との関連性が追求されるようになり、このことはボーアの原子模型モデルの発見のモチベーションの一つとなりました。
 
上述のラザフォードの原子モデルは、散乱実験の結果に支持されるものでしたが、理論的には 2 つの大きな難点を持っていました。
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ボーア理論における量子条件の物理的な意味は、やがて別の研究から明らかにされることとなります。ド・ブロイやシュレーディンガーらは光の粒子性と波動性を通常の物質について適用することを考え、物質の運動を物質場の波として記述する方法に辿り着きました。この物質波によって、量子論における離散性は物質波が定常状態になることによって引き出されるという物理的解釈が与えられ、明らかに定常状態でないような状態についても同じ形式で取り扱うことが可能となりました。シュレーディンガーによって与えられた、物質波の運動方程式を'''シュレーディンガー方程式''' (Schrödinger equation) といいます。またシュレーディンガー方程式の解として与えられる[[w:複素解析|複素関数]]を'''[[w:波動関数|波動関数]]''' (wave function) と呼びます。波動関数は元々、物質の分布そのものを表すと考えられていましたが、後に測定に関する系の統計的・情報理論的な性質を表すものと読み替えられるようになりました。
 
== 参考文献 ==
量子力学の歴史に関する記述は以下を参考にした。
* {{cite|last=ローゼンフェルト|first=L.|last2=江沢|first2=洋|title=ボーア革命|publisher=日本評論社|date=2015-1-25}}
:ボーアが自身の原子モデルを発見する過程が詳しく解説されている。
* {{cite|last=高林|first=武彦|title=量子論の発展史|publisher=筑摩書房|date=2010-10-10}}
:量子論の黎明期から場の量子論が形成されるまでの全体的な歴史が描かれている。
* {{cite|last=江沢|first=洋|title=量子力学 I|publisher=裳華房|date=2002-4-15}}
:量子力学の入門的な教科書。少ない紙数の中で量子力学の歴史や実験の設定に関する記述について多く語られている。前半は前期量子論について、後半は量子力学の一般論とシュレーディンガー方程式が厳密に解ける例を扱っている。前期量子論の理論的な展開については必要最小限にまとめられているため、たとえばゾンマーフェルトによるボーア理論の拡張などについては触れていない。
 
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