「古典力学/イントロダクション」の版間の差分

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物体の速度 <math>v(t)</math> の時間変化率を考えると、<math>v(t)</math> の時間微分は <math>\dot{v}(t) = a</math> となることが分かる。速度の時間微分は'''[[w:加速度|加速度]]''' (acceleration) と呼ばれる。先ほど示した関係は、この問題における物体の加速度が一定であることを示している。加速度が一定であるような状況はたとえば、物体を地表付近で投射したときの物体の運動について、空気抵抗などを無視できるような場合などが当てはまる。あるいは傾斜が一定の斜面を物体が滑る場合についても同様に、物体の受ける加速度が一定であると見なすことができる。
 
日常的な意味で「加速」とは速度が増すことを言い、速度が遅くなることは「減速」と言って区別するが、物理学においてはどちらの結果が生じる場合でも、速度の時間変化率は「加速度」と呼ばれる<ref>ただし分かりやすさを求める上で、速度を減じるような加速度を特別に'''減速度''' (deceleration) と呼ぶことはときどきある</ref>。また、「負の加速度」が必ずしも物体の速度を遅くするわけではなく、同様に「正の加速度」が加わっても物体の速度が増すとは限らないことに注意。たとえば「負の速度」を持つ物体に「負の加速度」を加えれば、物体より速く負の方向へ動いていくことになる。このことは一次元的な運動から離れて平面上の自由な物体の運動を考えてみると分かりやすい。平面上の運動では、正負の二方向に限らずあらゆる方向に速度を持つことができ、同様に加速度も平面上の様々な方向へ加えられる。このとき、速度や加速度が正であったり負であったりということの区別はそれほど意味を持たない。
 
;(c)
160 行
&= \sum_{k=0}^{n} \left\{kf(k)\tau^{-k}t^{k-1}\right\}.
\end{align}</math>
 
;(e)
<math>x(t) = \frac{1}{2}at^2 + Vt + x(0)</math> で表される物体の運動について、物体の位置 <math>x(t)</math> が <math>x(t) = X</math> となる時刻 <math>t(X)</math> および物体の位置に関する微分 <math>\frac{dt(X)}{dX}</math> を求めよ。ただし <math>a</math>、<math>V</math> および <math>x(0)</math> は定数とする。
;[解]
<math>t = t(X)</math> のとき <math>x(t) = X</math> である。すなわち、
:<math>x(t(X)) = X.</math>
このとき、物体の位置を具体的に書き下せば、
:<math>\frac{1}{2}at^2(X) + Vt(X) + x(0) = X</math>
と書けるので、これを <math>t(X)</math> について解けば、<math>a</math> が 0 でない場合について、
:<math>t(X) = -\frac{V}{a} \pm \frac{\sqrt{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}}{a}</math>
と求まる。物体の位置に関する微分 <math>\frac{dt(X)}{dX}</math> について、
:<math>\begin{align}
\frac{dt(X)}{dX} &= \lim_{h \to 0} \left\{\frac{1}{h}\left(
\left(-\frac{V}{a} \pm \frac{\sqrt{V^2 + 2a\left(X + h - x(0)\right)}}{a}\right)
- \left(-\frac{V}{a} \pm \frac{\sqrt{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}}{a}\right)
\right)\right\} \\
&= \pm \lim_{h \to 0} \left\{\frac{1}{ah}\left(
\sqrt{V^2 + 2a\left(X + h - x(0)\right)}
- \sqrt{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}
\right)\right\} \\
&= \pm \frac{2}{\sqrt{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}}
\lim_{h \to 0} \left\{ \frac{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}{2ah}\left(
\sqrt{1 + \frac{2ah}{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}} - 1
\right)\right\}
\end{align}</math>
と表すことができる。ここで
:<math>\varepsilon^2 = 1 + \frac{2ah}{\sqrt{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}}</math>
と置き換えれば、
:<math>\begin{align}
\frac{dt(X)}{dX} &= \pm \frac{2}{\sqrt{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}}
\lim_{\varepsilon \to 1} \left\{
\frac{1}{\varepsilon^2 - 1}\left(
\varepsilon - 1
\right)\right\} \\
&= \pm \frac{2}{\sqrt{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}}
\lim_{\varepsilon \to 1}
\frac{1}{\varepsilon + 1} \\
&= \pm \frac{1}{\sqrt{V^2 + 2a\left(X - x(0)\right)}}
\end{align}</math>
が得られる。ところで <math>X = x(t)</math> と再び置き換えれば、<math>2a\left(x(t) - x(0)\right) = a^2t^2 + 2aVt</math> だから、
:<math>\left.\frac{dt(X)}{dX}\right|_{X = x(t)} = \pm \frac{1}{|V + at|} = \pm\frac{1}{|v(t)|}</math>
となる。ここで例題 (b) の結果を使った。右辺は物体の瞬間速度の[[w:絶対値|絶対値]] <math>|v(t)|</math> について[[w:逆数|逆数]]をとったものになっている。物体の瞬間速度 <math>v(t)</math> が正のとき、位置の変化量 <math>dX</math> は正であり、他方、物体の瞬間速度 <math>v(t)</math> が負のとき、位置の変化量 <math>dX</math> は負である。時間の向きを正に取るなら、瞬間速度 <math>v(t)</math> の向きが正負のいずれの場合でも時間の変化量 <math>dt</math> は正である。従って、速度の絶対値を取らず
:<math>\left.\frac{dt(X)}{dX}\right|_{X = x(t)} = \frac{1}{v(t)}</math>
と表せる。瞬間速度が位置の時間微分であったことを思い出せば、上記の関係は以下のように整理することができる。
:<math>\left.\frac{dt(X)}{dX}\right|_{X = x(t)}\frac{dx(t)}{dt} = 1.</math>
ここまで <math>a \ne 0</math> の場合についてを解いたが、<math>a = 0</math> の場合はより単純で、
:<math>X = Vt(X) + x(0)</math>
より
:<math>t(X) = \frac{X - x(0)}{V}</math>
となる。また、物体の位置 <math>X</math> に関する微分は
:<math>\frac{dt(X)}{dX} = \frac{1}{V}</math>
となる。<math>a \ne 0</math> の場合と同様に、時刻を位置に関して微分したものは物体の瞬間速度の逆数として与えられる。
 
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