「古典力学/イントロダクション」の版間の差分

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==== 座標系の変換 ====
;1. 平行移動
平面上の物体の位置 <math>\boldsymbol{x}</math> について、座標系を平行移動させ平面上のある点 <math>\boldsymbol{X}</math> を原点としたものを新たに <math>\boldsymbol{x}'</math> と表せば<ref>ここで <math>\boldsymbol{x}'</math> のプライムは <math>\boldsymbol{x}</math> の微分を意味していません。</ref>、
:<math>\boldsymbol{x}' = \boldsymbol{x} - \boldsymbol{X}</math>
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と書き換えられます。このことから直ちに分かるように、座標系を平行移動しても物体間の距離は変化しません。
 
;2. スケール変換
平行移動以外の代表的な座標系の変換として、'''スケール変換''' (scale transformation) があります。スケール変換された座標系における物体の位置を <math>\boldsymbol{x}'</math> とし、変換前の座標系における物体の位置を <math>\boldsymbol{x}</math> とすると、スケール変換は以下のように表すことができます。
:<math>\boldsymbol{x}' = s \boldsymbol{x}</math>
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となり、<math>s > 1</math> の場合は <math>\left|\boldsymbol{x}'\right| > \left|\boldsymbol{x}\right| </math>、<math>s < 1</math> の場合は <math>\left|\boldsymbol{x}'\right| < \left|\boldsymbol{x}\right| </math> という関係が成り立ちます。これらの関係は物体間の距離に関しても成り立ちます。「実際の」距離はスケール変換によって変わらないとすれば、この変換は長さの基準を変えることに他ならず、<math>s > 1</math> の変換は基準の長さを小さくする変換であり、<math>s < 1</math> の変換は基準の長さを大きくする変換であると考えることができます。
 
;3. 回転
平行移動とスケール変換は一次元の場合にも同様に行うことができますが、二次元の場合と一次元の場合で扱い方の異なる変換も存在します。その中でも最も基本的なものとして座標系の回転操作、特に原点を中心とする回転が挙げられます。[[w:右手系|右手系]]で座標系を反時計回りに[[w:角度|角度]] <math>\theta</math> だけ回転させる場合、物体の位置は変換後の座標系において以下のように表されます。
:<math>\boldsymbol{x}' = \textrm{R}_\theta\boldsymbol{x}
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\end{pmatrix}</math>
 
行列 <math>\textrm{R}_\theta</math> は[[w:回転行列|回転行列]] (rotation matrix) と呼ばれます。座標系の回転について、物体間行列距離や物体各成分原点の間の距離は変わして与えず、次れる回転角 <math>\theta</math> の関係が成り立数 <math>\cos,\,\sin</math> をそれぞれ余弦関数 (cosine function) および正弦関数 (sine function) といい、これらは[[w:三角関数|三角関数]]と呼ばれる関数たの一つに数えられます。
 
座標系の回転について、物体間の距離や物体と原点の間の距離は変わらず、次の関係が成り立ちます。
:<math>|\textrm{R}_\theta\boldsymbol{x}| = \left|\boldsymbol{x}\right|.</math>
成分表示をすると、
:<math>\sqrt{\left\{\left(\cos\theta\right)^2 + \left(\sin\theta\right)^2\right\}\left(x_1^2 + x_2^2\right)} = \sqrt{x_1^2 + x_2^2}</math>
すなわち
:<math>\left\{\left(\cos\theta\right)^2 + \left(\sin\theta\right)^2\right\} = 1</math>
という関係が得られます。
という関係が得られます。また、座標系の回転について、回転角の和が等しければ回数や順序によらず同じ座標系が得られるので、次の関係が成り立ちます。
座標系の回転に対して距離が変化しないという性質は、距離を行ベクトルと列ベクトルの積の形に書き直せば、左辺について
:<math>|\textrm{R}_\theta\boldsymbol{x}|
= \sqrt{(\textrm{R}_\theta\boldsymbol{x})^\mathrm{T}\textrm{R}_\theta\boldsymbol{x}}
= \sqrt{\boldsymbol{x}^\mathrm{T}\textrm{R}_\theta^\mathrm{T}\textrm{R}_\theta\boldsymbol{x}}
</math>
となるので、これが右辺の <math>|\boldsymbol{x}| = \sqrt{\boldsymbol{x}^\mathrm{T}\boldsymbol{x}}</math> に等しいことから回転行列 <math>\textrm{R}_\theta</math> は
:<math>\textrm{R}_\theta^\mathrm{T}\textrm{R}_\theta = \textrm{R}_\theta\textrm{R}_\theta^\mathrm{T} = \textrm{I}</math>
という関係を満たすことが分かります。ここで <math>\textrm{I}</math> は[[w:単位行列|単位行列]] (identity matrix) であり
:<math>\textrm{I} = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}</math>
と書くことができます。自身の転置行列との積が単位行列となるような実正方行列は[[w:直交行列|直交行列]] (orthogonal matrix) と呼ばれ、回転行列はその一種であることが分かります。
 
という関係が得られます。また、他にも座標系の回転について、回転角の和が等しければ回数や順序によらず同じ座標系が得られるので、次の関係が成り立ちます。
:<math>\textrm{R}_\phi\textrm{R}_\theta = \textrm{R}_\theta\textrm{R}_\phi = \textrm{R}_{\theta + \phi}.</math>
これらの行列の積をあらわに書くと、