「高等学校物理/物理I/波/音波と振動」の版間の差分

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高等学校理科 物理I 波 2015年7月23日 (木) 18:52‎ から、この単元の部分を、こちらのページに移動する。
 
うなりの公式の簡易な導出。教科書にある式。
1 行
== 音 ==
=== ドップラー効果うなり ===
振動数の少しだけ違う2つの おんさ(音叉) を鳴らすと、周期的に音が大きくなったり小さくなったりするのが聞こえる。
[[画像:Doppler_effect_diagrammatic.png|right|500px|ドップラー効果の図]]
 
なお実験で音叉(おんさ)を準備するにあたって、音叉に おもり をつけると振動数が下がるので、軽い おもり を音叉の先端のほうにつけることで、振動数の少しだけ低い おんさ を作れるので、実験の際の参考に。
波源や観測者が動くと、振動数が変化する現象が見られる。これを、'''ドップラー効果'''(Doppler effect)という。
 
:[[media:Physics_wave_interference_unari.ogg|"うなり"の音声ファイル(440Hz正弦波と442Hz正弦波)]]
以下、波の速さを''V''[m/s]、波の振動数を''f''[Hz]、波源の速さを''v<sub>s</sub>''[m/s]、観測者の速さを''v<sub>o</sub>''[m/s]、観測される振動数を''f' ''[Hz]として考える。
この現象を "うなり"(beat) という。この時、音の大きさが変化する周波数は2つの波の振動数の差に等しい。
つまり、
うなりの周波数を f[Hz] とすると、もとの2つの音叉の振動数をそれぞれ f1[Hz] および f2[Hz] とすると、
:<math> f=|f_1 - f_2|</math>
である。
 
こうなるわけを理論的に考えると、うなりの周期を T[s] とすると、時間Tの間には 振動数 f1 の音叉は f1T 回の振動をして、同じ時間 T の間に 振動数 f2 の音叉は f2T 回の振動をする。
まず、静止している観測者に波源が近づく場合を考える。
時刻0[s]には波源も波も0[m]の位置にある。
時刻''T''[s]になると、波は''VT''[m]、波源は''v<sub>s</sub>T''[m]の位置に来る。
ここで、波源から波の到達点までの距離は''VT-v<sub>s</sub>T''[m]である。
この距離を時間''T''[s]で割ると、''V-v<sub>s</sub>''[m/s]になるが、観測者はこの速さを波の速さと観測する。
すると、観測される波長''&lambda;' ''[m]は
<math>\lambda'=\frac{V-v_s}{f}</math>
であり、
<math>f'=\frac{V}{\lambda'}=\frac{V}{V-v_s}f</math>
となる。
 
そして、音叉を鳴らしてからT秒後に始めて、時刻0の時と同じ波形を繰り返すことになるはずだが、そのためにはf1音叉とf2音叉の波の数が1個だけ違えばよい。
=== 音の伝わり方 ===
なので、
 
:<math> |f_1 T - f_2 T|=1</math>
音はどの方向にもおおよそ
同じ速さ伝わる。
音の速さは有限であり、
速度は常温付近では気温<math>t</math>[℃]にほぼ比例しており<math>0.6t+331.5</math>で表される。15℃の時はおよそ、340[m/s]である。
 
両辺を T で割れば、
=== 音の干渉と共鳴 ===
:<math> |f_1 - f_2 |= \frac{1}{T} </math>
だが、うなりの振動数を f とすれば、振動数と周期の公式により
:<math> \frac{1}{T} = f</math>
であるので、
つまり
:<math> |f_1 - f_2 |= \frac{1}{T}=f </math>
これを整理して、
:<math> f=|f_1 - f_2|</math> (証明おわり)
 
空気中の音については、通常は'''重ね合わせの原理'''が成り立つ。このことを用いて波の重ね合わせの様子を調べてみる。
 
*発展 うなりの計算の、別の証明
*実験
三角関数の和積・積和の公式および、三角関数の加法定理を知っていれば、音波を三角関数で近似して、その三角関数の計算によって、うなりの公式を証明することもできる。
2つの同じ振動数の正弦波を用意し、位相の差が<math>\pi</math>の奇数倍の場合と<math>\pi</math>の偶数倍の場合を観察してみよ。実際には各音源からの距離の差が、<math>\lambda/2</math>の奇数倍と偶数倍に対応する。
 
:※ 詳しい解説は次の発展を参照。かなり計算が難しいので、高校1年の人や、始めてこの単元を学習する高校2年生の人は、この発展の項目(三角関数による、うなりの公式の導出)を飛ばして良い。
この場合距離の差が<math>\lambda/2</math>の奇数倍の時には、音の大きさは2倍になり、偶数倍の時には音はほとんど聞こえなくなるはずである。これは同じ形の波が符号が同じで足された場合と、符号が反対で足された場合に対応するからである。
 
==== うなり ====
同じ事柄に基づいた話題だが、ある周波数の音と、それと少しだけちがう周波数の音を重ねて聞くと、音が大きくなったり小さくなったりするように聞こえる。
:[[media:Physics_wave_interference_unari.ogg|"うなり"の音声ファイル(440Hz正弦波と442Hz正弦波)]]
これを"うなり"(beat)と呼ぶ。この時音の大きさが変化する周波数は2つの波の振動数の差に等しい。
 
"うなり"は上の例と同様三角関数の計算によって見ることができる。詳しい解説は次の発展を参照。
 
*発展 うなりの計算
うなりの計算は三角関数の計算に帰着する。このとき、波の振幅の式が振動数が2つの波の振動数の差となる三角関数となればよい。
 
まず、2つの波を
<math>A\sin (\omega t + \delta)</math>
:<math>
および
A\sin (\omega t + \delta), B \sin (\omega t + \Delta \omega t)
<math>B \sin (\omega t + \Delta \omega t)</math>
</math>
とおく。
とおく。ここで、<math>\delta,\omega,\Delta \omega,A,B</math>はそれぞれ2つの波の位相差、片方の波の角振動数、2つの波の角振動数の差、各波の振幅に対応する。
 
ここで、<math>\delta,\omega,\Delta \omega,A,B</math>はそれぞれ2つの波の位相差、片方の波の角振動数、2つの波の角振動数の差、各波の振幅に対応する。
 
2つを足しあわせて、三角関数の加法定理([[高等学校数学II]])などを用いると、
72 ⟶ 68行目:
となる。ただし、<math>\gamma </math>は条件を満たす位相である。
 
最後の式は、ルートの中の部分が振幅であり、つまりルートの中の部分が音の大きさである。このルートの中の部分に、tを変数とする三角関数が入っているので、そのルート中の三角関数の振動数こそが、うなりの振動数である。
最後の式は、角振動数<math>\omega</math>の振動の式と、時間的に変化する振幅の積になっており、確かに'うなり'の現象を説明する。
 
=== ドップラー効果 ===
[[画像:Doppler_effect_diagrammatic.png|right|500px|ドップラー効果の図]]
 
波源や観測者が動くと、振動数が変化する現象が見られる。これを、'''ドップラー効果'''(Doppler effect)という。
 
以下、波の速さを''V''[m/s]、波の振動数を''f''[Hz]、波源の速さを''v<sub>s</sub>''[m/s]、観測者の速さを''v<sub>o</sub>''[m/s]、観測される振動数を''f' ''[Hz]として考える。
 
まず、静止している観測者に波源が近づく場合を考える。
時刻0[s]には波源も波も0[m]の位置にある。
時刻''T''[s]になると、波は''VT''[m]、波源は''v<sub>s</sub>T''[m]の位置に来る。
ここで、波源から波の到達点までの距離は''VT-v<sub>s</sub>T''[m]である。
この距離を時間''T''[s]で割ると、''V-v<sub>s</sub>''[m/s]になるが、観測者はこの速さを波の速さと観測する。
すると、観測される波長''&lambda;' ''[m]は
<math>\lambda'=\frac{V-v_s}{f}</math>
であり、
<math>f'=\frac{V}{\lambda'}=\frac{V}{V-v_s}f</math>
となる。
 
=== 音の伝わり方 ===
 
音はどの方向にもおおよそ
同じ速さで伝わる。
音の速さは有限であり、
速度は常温付近では気温<math>t</math>[℃]にほぼ比例しており<math>0.6t+331.5</math>で表される。15℃の時はおよそ、340[m/s]である。
 
=== 音の干渉と共鳴 ===
 
空気中の音については、通常は'''重ね合わせの原理'''が成り立つ。このことを用いて波の重ね合わせの様子を調べてみる。
 
*実験
2つの同じ振動数の正弦波を用意し、位相の差が<math>\pi</math>の奇数倍の場合と<math>\pi</math>の偶数倍の場合を観察してみよ。実際には各音源からの距離の差が、<math>\lambda/2</math>の奇数倍と偶数倍に対応する。
 
この場合距離の差が<math>\lambda/2</math>の奇数倍の時には、音の大きさは2倍になり、偶数倍の時には音はほとんど聞こえなくなるはずである。これは同じ形の波が符号が同じで足された場合と、符号が反対で足された場合に対応するからである。
 
 
==== 弦の振動 ====