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=== 行為無価値論·結果無価値論 ===
====概要====
数ある刑法学の論点の中でも、現在最も激しく、極めて多くの論点に関係してくるものである。すなわち、刑法における違法性は法益を侵害したという結果の無価値(及びその危険性)によるもの(結果無価値論)か、それとも行為の反規範性に求める(行為無価値論)のか、である。ただ日本においては純粋な行為無価値一元論はほとんど主張されておらず、結果無価値一元論と、結果無価値に加えて行為無価値も併せて考慮する結果無価値・行為無価値二元論の対立となっている。
 
====議論の歴史====
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その後戦後の新憲法を背景に、[[w:平野龍一|平野博士]]によって[[w:団藤重光|団藤博士]]を始めとする従前の刑法体系を価値の押し付け的な行為無価値論であるとして批判し、刑法の違法性はあくまで結果無価値によるべきとする論が展開された。
 
行為無価値論の代表とされた団藤博士や[[w:大塚仁|大塚博士]]らがそれぞれ主に主観主義刑法、目的的行為論等との論議に目を向け、積極的に結果無価値論に対する反論をしてこなかったために結果無価値論は隆盛し学会において多数説化する。とりわけ東京大学においては、早世した[[w:藤木英雄|藤木博士]]の逝去後任に結果無価値論者の[[w:内藤謙|内藤]]が招かれたことによって、実務は未だいわゆる行為無価値論(正確には結果無価値行為無価値二元論)を採るにもかかわらず刑法講座は全て結果無価値論者で占められる事態となり理論と実務の乖離が進んでしまう。
 
その後[[w:大谷実|大谷教授]]や[[w:前田雅英|前田教授]]らによる対立の止揚が試みられる一方で、[[w:山口厚|山口教授]]による平野説を基本とした結果無価値の徹底的な純化も図られた。
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*関西結果無価値一元論
*:[[w:中山研一|中山]]、[[w:山中敬一|山中]]、[[w:松宮孝明|松宮]]等。関西系の学者は条文の国語的解釈をより重視する傾向にあると言われることがあり、関東系とは若干基本とする立場が異なる場合がある。基本的には[[w:瀧川幸辰|瀧川博士]]の法系。
*二元的結果無価値論
*:前田、木村等。前田教授は結果無価値論の代表的論者と言われる事が多いが、行為無価値論に立つ藤木博士の実質的犯罪論の立場を受け継ぎつつも行為無価値的な判例を結果無価値的に読み替えようとする立場であるため結果無価値論の中でも異端であり、典型的な結果無価値論とは異なる。
 
*二元的行為無価値論
*:団藤、大塚、[[w:福田平|福田]]、川端、[[w:佐久間修|佐久間]]、[[w:平川宗信|平川]]、[[w:井田良|井田]]、[[w:高橋則夫|高橋]]、[[w:野村稔|野村]]、大谷等。一般に行為無価値論という場合には、こちらを指す。行為無価値を基本に結果無価値をも合わせて考慮しようという立場。いわゆる通説である。
*一元的行為無価値論
*:藤木、[[w:板倉宏|板倉]]、[[w:伊東研祐|伊東]]等。「国民にわかりやすい刑法」をスローガンに処罰の必要性を重視した刑法体系(実質的犯罪論)を構築し実務へも影響を与えたが、行為無価値の過度な重視として学者からはイデオロギー的な反発を受けたが、実務においては少なからず受け入れられた。