「高等学校化学I/物質と原子」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
分子やイオンの概略的な定義については、中学理科であつかってるため、削除。
編集の要約なし
212 行
 
==== 同位体 ====
===== 同位体 =====
ある二つの原子について、原子番号が同じでも質量数が異なることがある。言い換えると、原子番号は陽子の数であるため、陽子の数が同じ二つの原子であっても、その原子核に含まれる中性子の数が違うことがある。
天然の存在する水素原子の大部分は、原子核が陽子1個だけからなる <math>_{1}^{1} \mathrm{H}</math> であるが、水素には、この他にも陽子1個と中性子1個からなる <math>_{1}^{2} \mathrm{H}</math> も少量ながら存在する。
このような、同じ元素でも質量数のことなる原子を互いに'''同位体'''(どういたい、isotope)と呼ぶ。あるいは'''アイソトープ'''(isotope)と呼ぶ。
 
このよう原子番号が同じ元素でも質量数のことが異なる原子のこと、たがいに'''同位体'''(どういたい、isotope)である呼ぶいう。あるいは同位体のことを'''アイソトープ'''(isotope)と呼ぶもいう
 
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 同位体と存在比
! 元素 !!   !! 同位体 !! 存在比(%)
|-
! rowspan="2"| 水素
| rowspan="2"| <math>_{1}^{} \mathrm{H}</math> || <math>_{}^{1} \mathrm{H}</math> || 99.9885
|-
| <math>_{}^{2} \mathrm{H}</math> || 0.0115
|-
! rowspan="2"| 炭素
| rowspan="2"| <math>_{6}^{} \mathrm{C}</math> || <math>_{}^{12} \mathrm{C}</math> || 98.93
|-
| <math>_{}^{13} \mathrm{C}</math> || 1.07
|-
! rowspan="3"| 酸素
| rowspan="3"| <math>_{8}^{} \mathrm{O}</math> || <math>_{}^{16} \mathrm{O}</math> || 99.757
|-
| <math>_{}^{17} \mathrm{O}</math> || 0.038
|-
| <math>_{}^{18} \mathrm{O}</math> || 0.205
|-
|}
 
水素の同位体には、さらに <math>_{1}^{3} \mathrm{H}</math> も、ごくわずかにある。
 
なお、「同位体」という名前が「同素体」と似ているが、異なる概念なので、混同しないように読者は注意のこと。
 
<math>_{1}^{2} \mathrm{H}</math> のことを重水素(じゅうすいそ)といい、のことを <math>_{1}^{3} \mathrm{H}</math> 三重水素という。
 
同位体であってもどうしは質量が異なるが安定化学反応同位体の化学的性質はとんど等しいぼ同じである。なぜなら、原子核に含まれる陽子の数が同じだからである。
 
炭素Cの代表的な同位体には、<sup>12</sup>C と<sup>13</sup>C がある。
 
 
炭素Cの同位体には<sup>14</sup>Cも存在する場合もあるが、この<sup>14</sup>Cは不安定であり、すぐに崩壊して質量数が変わってしまう。原子核が壊れるとき、一般に放射線をだすので、不安定な同位体が壊れたときも放射線を出す。<sup>14</sup>Cも崩壊するときに放射線を出す。
===== 放射性同位体 =====
炭素Cの同位体には<sup>14</sup>Cも存在する場合もあるが、この<sup>14</sup>Cは不安定であり、すぐに崩壊(ほうかい)して質量数が変わってしまう。原子核が壊れるとき、一般に放射線をだすので、不安定な同位体が壊れたときも放射線を出す。<sup>14</sup>Cも崩壊するときに放射線を出す。
<sup>14</sup>Cのような、すぐに崩壊して放射線を出す同位体を'''放射性同位体'''(ほうしゃせいどういたい、ラジオアイソトープ,radioisotope)という。
これに対して安定して存在できる同位体を'''安定同位体'''(stable Isotope)という。
 
原子力発電所の原子炉内では、質量数3の水素<sup>3</sup>Hも存在する。この水素<sup>3</sup>Hを'''トリチウム三重水素'''(さんじゅうすいそ、tritium トリチウム)という。<sup>3</sup>Hは放射性同位体である。
同位体であっても、安定な同位体の化学的な性質は、ほとんど等しい。なぜなら、原子核に含まれる陽子の数が同じだからである。
 
他の多くの元素にも同位体は存在する。
たとえば水素Hには、自然界には<sup>1</sup>H と<sup>2</sup>Hがある。<sup>1</sup>Hの存在比率は、およそ99.98%である。<sup>2</sup>Hの存在比率は、およそ0.02%である。質量数2の水素<sup>2</sup>Hのことを重水素(じゅうすい)あるいはジュウテリウム(deuterium)という。
原子力発電所の原子炉内では、質量数3の水素<sup>3</sup>Hも存在する。この水素<sup>3</sup>Hを'''トリチウム'''(tritium)という。<sup>3</sup>Hは放射性同位体である。
 
なお、すべての元素に、自然界で同位体が存在するわけではない。
Be,F,Na,Al,P,Sc,Mnなどには、天然には同位体は存在しない。
 
放射性同位体の活用としては、化学反応のしくみを追跡するときに利用される。ほかにも、年代測定などにも利用される。
 
なお、放射性に関する用語として、放射線を出す性質のことを「放射能」(radioactivity)という。放射線を出すなどして、原子が他の原子に変わることを「崩壊」という。
 
原子ごとに、原子核が変わるまでの、だいたいの時間が異なる。半分の量の原子核が変わるまでの時間を'''半減期'''(はんげんき、half life)という。
 
<sup>14</sup>Cの半減期は5830年である。
 
 
=== 電子殻と価電子 ===
[[File:Electron-shell jp.svg|thumb|300px|電子殻の配置]]
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 希ガス原子の電子配置
!    !! K !! L !! M !! O !! P
|-
! He
| 2 || || || ||
|-
! Ne
| 2 || 8 || || ||
|-
! Ar
| 2 || 8 || 8 || ||
|-
! Kr
| 2 || 8 || 18 || 8 ||
|-
|}
[[Image:Electron shell 008 Oxygen (diatomic nonmetal) - no label.svg| thumb |200px| 酸素原子Oの電子は、K殻に2個の電子。L殻に6個の価電子を持つ。]]
[[File:Electron shell 001 Hydrogen (diatomic nonmetal) - no label.svg|thumb|200px| 水素原子Hの電子は、K殻に1個の価電子を持つ。]]
 
 
原子の構造のうち、電子が並んでいる原子核の周りの部分について、より詳しく見ていこう。
; 電子殻(でんしかく、electron shell) : 電子が飛び回っている部分全体を指す。階層構造になっている。
この電子殻は何重かにわかれており、内側から'''K殻'''(ケーかく、K shell)、'''L殻'''(エルかく、L shell)、'''M殻'''(M shell)、……と呼ぶ。それぞれの層に入ることのできる電子の数は決まっており、その数以上の電子が一つの層に入ることは無い。たとえば、K殻に入ることのできる電子の数は2つまでである。また、電子は原則的に内側の層から順に入っていく。M殻以降では例外もあるが、高等学校の化学ではこれについては扱わない。興味のある人は、[[w:電子殻]]などを参考にしてほしい。内側から数えてn番目の電子殻に入ることのできる電子の数は、最大2n<sup>2</sup>と表されまでである。
 
また、いちばん外側の電子殻にある電子を'''最外殻電子'''(いがいかく でんし、outermost-shell electron)呼ぶ。最外殻電子は原子の性質に大きな影響を与えるいう。ある原子とある原子との接点が、実際には電子殻であるため、原子の結合の仕方などはこの最外殻電子の個数が重要になってくる。ある原子性質を決める最外殻電子の数特別に'''価電子'''(かでんし、valence electron)と呼ぶいう
最外殻にそれ以上電子が入ることのできない状態を'''閉殻'''(へいかく)という。閉殻になっている原子の価電子の個数は'''0'''であると約束する。
 
各々の原子の電子の、電子殻への配列の仕方を'''電子配置''' (でんしはいち、electron configuration)という。
[[File:Electron shell 002 Helium - no label.svg|thumb|left|200px| ヘリウム原子Heの電子は、K殻に2個の電子を持つ。ヘリウムは閉殻構造である。閉殻なのでヘリウムの価電子は0と数える。]]
 
 
各々の原子の電子の、電子殻への配列の仕方を'''電子配置''' (electron configuration)という。K殻に2個の電子が全て収められた場合の電子配置は、希ガスであるヘリウムHeの電子配置と同じである。L殻まで電子が全て収められ、L殻に8個の電子とK殻に2個の電子の合計10個の電子が全て収められた場合の電子配置は、希ガスであるネオンNeの電子配置と同じである。
ヘリウムやネオンは、安定しており、化合物をつくりづらい。ヘリウムガスは、化合してないヘリウム原子が気体そのものの成分であり、分子化合物ではない。同様にネオンガスも原子の気体であり、分子ではない。
同様に、M殻の終わりまで全て電子が収められた状態は、希ガスであるアルゴンArの電子配置と同じである。
 
ヘリウムの電子配置は、K殻に2個ぜんぶの電子が配置されていて、安定しているので、このような化学的安定をしている。
 
同様に、ネオンの電子配置は、L殻に8個ぜんぶの電子が配置されてるので、安定している。
 
このように、最外殻にそれ以上電子が入ることのできない状態を'''閉殻'''(へいかく)という。閉殻になっている原子の価電子の個数は'''0'''であると約束する。
 
なお、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの原子のことを'''希ガス'''(きガス、rare gas)原子という。希ガス原子は、ほかの原子とは化合せず、希ガスどうしとも化合しておらす、希ガスそのものが分子と同様に安定してふるまうので、「単原子分子」(たんげんし ぶんし、monoatomic molecule)である。
 
[[File:Electron shell 002 Helium - no label.svg|thumb|left|200px| ヘリウム原子Heの電子は、K殻に2個の電子を持つ。ヘリウムは閉殻構造である。閉殻なのでヘリウムの価電子は0と数える。]]
 
<gallery widths=250px heights=250px>
259 ⟶ 322行目:
 
=== 電荷 ===
 
原子の構造を理解する助けとして、これから先になって必要になってくる概念である'''電荷'''という言葉については、ここで簡単な説明を加えておく。
; 電荷(electric charge) : 粒子にある電気的な性質のこと。プラスの量とマイナスの量があり、当然ながら0も存在する。
267 ⟶ 329行目:
:* 同じ符号の電荷を持った粒子同士は反発する力が働く。
:* 逆の符号の電荷を持った粒子同士は引き合う力が働く。
:* 電荷を持った粒子同士どうしに働く力は、距離が近いほど大きくなる。
 
ある原子核に陽子が3つ含まれているとき、原子核全体の電荷は
301 ⟶ 363行目:
 
== 原子に関する諸概念 ==
 
=== 原子の分類 ===
原子の化学反応的な性質は、その原子の原子核に含まれる陽子の数で決まる。なぜなら、電子殻上の電子が、化学反応では媒介(ばいかい)になるのだが、電子殻上のその電子の数は、原子核中の陽子の数と、同じだからである。このため原子番号の定義を、陽子の数として定義することは、合理的である。
534 ⟶ 595行目:
|}
 
<small>:このセクションで用いられた「共有結合」「イオン結合」「金属結合」に関しては、詳しくは化学IIで扱う。そのため、ここではそのような種類がある、という理解に留めておいてかまわない。</small>
 
[[Category:化学|ふしつとけんし]]