「高校化学 天然高分子化合物」の版間の差分

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=== 多糖類 ===
==== デンプン ====
デンプン(starch)は、植物が光合成によって体内につくる多糖類である。二糖類とちがい、デンプンは甘味をしめさない。また、デンプンは、還元性を示さない。
デンプン(starch)多数のαグルコースが脱水縮合して出来た構造を多糖類の高分子化合物である。
(C<sub>6</sub>H<sub>10</sub>O<sub>5</sub>)<sub>n </sub>の構造を持つ。nは数百から数万、数十万である。(数値で表せば、nは10^2~10^5 程度の規模)
 
* デンプンの性質
デンプンは冷水には溶けにくいが、約80℃の熱水に溶けてコロイド構造になる。状の デンプンは冷水のり は溶けにくいなる
 
酵素'''アミラーゼ'''によって、デンプンは加水分解される。このアミラーゼによるデンプンの加水分解の結果、デンプンの重合数が少なくなった'''デキストリン'''(C<sub>6</sub>H<sub>10</sub>O<sub>5</sub>)<sub>n </sub>を生じる。そしてデキストリンは、さらに二糖類の'''マルトース'''に分解される。
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===== ヨウ素デンプン反応 =====
ヨウ化カリウム水溶液KIにより、デンプンは青紫色に呈色する。加熱すると、無色になる。この反応を'''ヨウ素デンプン反応'''(iodine-starch reaction)という
 
デンプンは水溶液中では、分子内の水素結合により、らせん構造をとる。このらせん構造の中にヨウ素が入り錯体を形成こむことで、呈色する。
加熱で無色になっても、冷却すると、再び、もとの青紫色の呈色を示すようになる。
 
デンプンは水溶液中では、分子内の水素結合により、らせん構造をとる。このらせん構造の中にヨウ素が入り錯体を形成する。
加熱によって無色になるのは、熱運動によって、ヨウ素との錯体を維持しないほうが、エネルギー的に安定になるからである。熱水で無色になっても、冷却すると、再び、もとの青紫色の呈色を示すようになる。
 
===== アミロースとアミロペクチン =====
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[[File:Amylopektin Sessel.svg|thumb|right|アミロペクチンの分子構造]]
 
デンプンの種類のうち、αグルコースが直鎖状に結合したものを'''アミロース'''(amylose)と言う。αグルコースが、ところどころ枝分かれした構造のデンプンを'''アミロペクチン'''(amylopectin)という。枝分かれの割合はαグルコース数十個につき、一個の枝分かれの程度である。
 
もち米のデンプンは、アミロペクチンが100%である。ふつうの植物のデンプンには、アミロースが20%程度でアミロペクチンが80%程度ほど含まれている。
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[[File:Glycogen structure.svg|thumb|260px|グリコーゲンの断面図]]
 
'''コースが縮合重合したもゲン'''(glycogen)は、動物肝臓に多い多糖類で、そうち構造はアミロペクチンと似ているが、アミロペクチンよりも枝分かれが多いものが'''グリコーゲン'''(glycogen)である。分岐の頻度は、おおむね8~12基に一回の程度の分岐である。枝分かれが多いため放射したような網目構造をとり、らせん構造をとらない。このため、極性をもった部分が外側に出やすく、水溶性が高い。
ヨウ素デンプン反応では、グリコーゲンは赤褐色を示す。
 
* グリコーゲンを含む生体には、動物の体内で栄養素として多いことから、'''動物デンプン'''ともよばれる。
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[[File:Alg-frut-6.jpg|left|thumb|200px|綿花から取れる綿は天然のセルロースである。]]
 
'''セルロース'''(cellulose)[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>3</sub>]<sub>n </sub>は植物の細胞壁の主成分である。木綿、パルプ、ろ紙は、ほぼ純粋なセルロースである。セルロースの構造は、多数のβグルコースが、直線状に縮合した構造である。セルロースの構造では、各グルコースの向きが交互に表・裏・表・裏を繰り返すので、セルロース全体で見れば直線状になっている。
'''セルロース'''(cellulose)の構造は、多数のβグルコースが、グリコシド結合によって、縮合した構造である。
 
セルロースのグリコシド結合では、各グルコースの向きが交互に表・裏・表・裏を繰り返すが、これを'''βグリコシド結合'''という。また、βグリコシド結合の結果、構造はまっすぐであり、直鎖状である。正確には、回転角が約+20°と約-20°の結合を繰り返すので、平均的にセルロース分子は直鎖状になる。
 
(なお、デンプンを構成するグリコシド結合はαグリコシド結合であり、およそグルコース6個でらせんの回転が1回転する。)
 
* セルロースは、還元性を持たず、また、ヨウ素デンプン反応も示さない。
* セルロースは、冷水や熱水には溶けない。セルロースは、エーテルやアルコールなどにも溶けない。
* セルロースは'''シュバイツアー試薬'''に溶ける。
 
セルロースは'''シュバイツアー試薬'''に溶ける。
シュバイツアー試薬とは、水酸化銅Cu(OH)2を濃アンモニア水に溶かしたものである。水溶液中でイオンが、'''テトラ アンミン イオン''' [Cu(NH<sub>3</sub>)<sub>4</sub>]<sup>2+</sup> になる。
 
 
* セルロースは、冷水や熱水には溶けない。セルロースは、エーテルやアルコールなどにも溶けない。
* セルロースは、還元性を持たない。
 
セルロースの示性式は、[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>3</sub>]<sub>n </sub>である。グルコース1単位あたり3個のヒドロキシル基OHを持つ。したがって、酸と反応させるとエステルを作りやすく、酢酸や硝酸とエステルをつくる。
 
セルロースは、酸をくわえて長時間加熱すると、最終的にグルコースになる。
 
このほか、酵素セルラーゼによって、セルロースは分解される。
 
工業上は硝酸とのセルロースのエステルである「ニトロセルロース」(後述する。)が、特に重要である。
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==== セルロースの誘導体 ====
===== ニトロセルロース =====
セルロース[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>3</sub>]<sub>n</sub>に、濃硝酸および濃硫酸の混合溶液を作用させると、セルロースのOH基の一部または全部がエステル化される。セルロース中のグルコース1単位あたり、3個のOH基の一部または3個全部が硝酸エステル化されたものをニトロセルロース(nitrocellulose)という。特にセルロース中のグルコース1単位のうち、3個のOH基すべてが硝酸エステル化されたもの [C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(ONO<sub>2</sub>)<sub>3</sub>]<sub>n</sub> を'''トリニトロセルロース'''という。
 
 
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このトリニトロセルロースは火薬の原料である。
 
===== コロオンニトロセルロース =====
セルロース中の2個のOH基がエステル化したものはジニトロセルロースという。このジニトロセルロースは、有機溶媒に溶ける。

* コロジオン
このジニトロセルロースを、エタノールとエーテルの混合液に溶かしたものを'''コロジオン'''という。混合液には水分などを含まないので「水溶液」では無いことに注意。
コロジオンの溶液を蒸発させると、薄い膜が残る。これは半透膜の材料に使われる。コロジオンから得られた半透膜のことをコロジオン膜ともいう。
 
=====* セルロイド =====
ニトロセルロースをエタノールに溶かし、ショウノウを加えて得られる樹脂をセルロイドという。
 
 
 
===== アセテート類 =====
セルロースを無水酢酸、氷酢酸および少量の濃硫酸との混合物を反応させる。すると、分子中のOH基のHがCOOH基で置換される'''アセチル化'''が起きて、'''トリアセチルセルロース'''が生成する。
 
[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>3</sub>]<sub>n</sub> + 3n (CH<sub>2</sub>CO)<sub>2</sub> O → [C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OCOCH<sub>3</sub>)<sub>3</sub>]<sub>n</sub> + 3n CH<sub>3</sub>COOH
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== 酵素 ==
ある種のタンパク質には触媒の働きを持つものがある。この触媒として機能するタンパク質を'''酵素'''(こうそ、enzyme)という。酵素は、無機触媒や金属触媒とは、ことなる性質をもつ。酵素は、ある特定の物質にしか作用しない。これを'''基質特異性'''(きしつとくいせい、substrate specificity)という。そして酵素が作用する物質および分子構造を'''基質'''(きしつ、substrate)という。
ただし、酵素は、一般の無機触媒や金属触媒と異なる性質も持つ。酵素は有る特定の物質にしか作用しない。これを'''基質特異性'''(きしつとくいせい)という。そして酵素が作用する物質および分子構造を'''基質'''(きしつ)という。
 
酵素には、基質と立体的にむすびつく'''活性部位'''(かっせいぶい、active site)があるため、このような反応が起こる。活性部位のことを、'''活性中心'''(かっせいちゅうしん、active center)ともいう。
たとえば、酵素インペルターゼはスクロースの加水分解にしか作用せず、マルトースやラクトースなどの他の二糖類にはインペルターゼは作用しない。また、マルターゼは、マルトースにしか作用しない。
[[File:酵素基質複合体 模式図.svg|thumb|600px|center|酵素基質複合体の模式図]]
たとえば、だ液にふくまれるアミラーぜはデンプンを加水分解するが、タンパク質を加水分解できない。酵素インペルターゼはスクロースの加水分解にしか作用せず、マルトースやラクトースなどの他の二糖類にはインペルターゼは作用しない。また、マルターゼは、マルトースにしか作用しない。
 
=== 失活 ===
また、酵素はタンパク質であるので、タンパク質が変性する状況では、酵素はその能力を失う。熱変性などで、タンパク質が修復不可能になると、酵素の触媒能力もまた修復不可能となり、酵素を冷却しても、もはや触媒として機能しなくなる。このように酵素が触媒としての能力を失って、もはや酵素ではなくなったことを'''失活'''(しっかつ、deactivation)という。
 
=== 最適温度 ===
酵素の触媒作用が最も働く温度があり、酵素にもよるが、一般に、それは動物の体温にちかい、35℃から40℃といった温度である。
 
つまり、動物の体温の温度の周辺である。50℃以上など、これらより高温では熱変性で酵素の構造が破壊される。最適温度より低温にした場合は、低温の間は酵素としての作用が弱まるが、適温に戻すと、再び酵素としての触媒能力を取り戻す。
低温で酵素としての能力を失うことは一般には失活とは呼ばない。
 
 
=== 最適pH ===
[[File:酵素と最適pH.svg|thumb|300px|酵素と最適pH]]
酵素には、その場所のpHによって、触媒の働きの反応速度が変わる。もっとも酵素が働くpHを'''最適pH'''(さいてきペーハー、optimum pH)という。
最適pHの値の傾向は、酵素の種類にもよるが、おおむねpH=6~8といった、中性付近か、弱酸性の付近で、もっともよく働く。たとえばアミラーゼはpH=6~7の付近が最適pHである。すい臓の中で働く酵素のトリプシンはpH=8の弱い塩基性が最適pHである。
 
なお、胃酸の中で働く酵素の'''ペプシン'''は最適pHがpH=2の付近の強い酸性である。このpH=2は、胃液のpHに近い。このように、酵素は、その酵素が働く環境下に近いpHで、よく働く性質になっている場合が多い
 
== 油脂や脂肪 ==
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なお、油脂も脂肪も、炭水化物には含めない。油脂も脂肪もタンパク質では無い。
植物はブドウ糖から油脂を合成する。
 
== 核酸 ==
:[[高等学校生物 生物I‐遺伝]]
 
[[Category:高等学校化学]]