「高校化学 天然高分子化合物」の版間の差分

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== 糖類 ==
デンプンを加水分解していくと、最終的にはグルコース(ブドウ糖)になり、それ以上は分解できない。
グルコースのような炭水化物を構成する最小の糖類を'''単糖類'''(たんとうるい、monosaccharide)という。
単糖類にはグルコース、フルクトース、ガラクトースがある。
グルコース、フルクトース、ガラクトースの分子式はC<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>である。
 
スクロースは加水分解されると、2個の単糖類を生じる。スクロースのように、加水分解されると、2個の単糖類を生じるものを'''ニ糖類'''(にとうるい、disaccharide)という。デンプンやセルロースのように加水分解されて多数の単糖類を生じるものを'''多糖類'''(たとうるい、polysaccharide)という。
 
単糖類の水溶液は還元性を持つ。
単糖類や多糖類を総称して'''糖類'''(saccharides)または'''炭水化物'''(carbohydrate)という。
 
単糖類や二糖類は、水溶性がある。単糖類の水溶液は還元性を持つ。
 
 
=== グルコース ===
* グルコース glucose(ブドウ糖, grape sugar )C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>
 
グルコースは、デンプンを加水分解することによって得られる。
水溶液中のグルコースは、一部のグルコースの環構造が開き鎖式構造に変わる。アルデヒド基を持つ。したがって還元性を示す。
:(C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>)<sub>n</sub> + nH<sub>2</sub>O → nC<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>
 
グルコースは甘味をもち、また、水によく溶ける。水溶液中のグルコースは、一部のグルコースの環構造が開き鎖式構造に変わる。アルデヒド基を持つ。したがって還元性を示す。
その結果の特性として、'''フェーリング液'''を還元し銀鏡反応を示すという'''フェーリング反応'''を起こす特性を持つ。
 
グルコースは三種類あり、'''αグルコース'''と'''鎖式グルコース'''と'''βグルコース'''とがある。
αグルコースを水に溶かすと、上記のように一部が鎖式グルコースになり、さらにその一部が鎖式構造を経てβグルコースになる。最終的に3種類のグルコースのα形、鎖式、β型の混じりあった平衡状態になる。
 
グルコースのようなアルデヒド基をもつ糖を'''アルドース'''という。
 
[[File:Alpha-D-Glucopyranose.svg|thumb|150px|left|αグルコース]]
[[File:Beta-D-Glucopyranose.svg|thumb|150px|center|βグルコース]]
 
グルコースのようなアルデヒド基をもつ糖を'''アルドース'''(aldose)という。(アルドースも高校の範囲内。第一学習社の教科書に記述あり。)
 
そのほか、酒の製造のアルコール発酵のさい、おもにグルコースが原料に使われる。
 
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=== フルクトース ===
フルクトース,fructose(果糖, fruit sugar )C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>
 
フルクトースはグルコースの異性体である。
 
フルクトースも3種類ある。六員環βフルクトースと鎖式グルコースと五員環βフルクトースがある。
 
六員環のβフルクトースを水に溶かすと、一部が鎖式グルコースを経て、さらに一部が五員環βフルクトースになり、三種類のフルクトースが平衡状態になる。
フルクトースにはアルデヒド基は無いが、フルクトースの鎖式中にはケトン基が含まれ、このフルクトースのケトン基は還元性を示すので、フェーリング液を還元する能力を示す。
 
フルクトースのようなケトン基をもつ糖を'''ケトース'''という。
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C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub> → 2C<sub>2</sub>H<sub>5</sub>OH + 2CO<sub>2</sub>
 
=== ガラクトース ===
寒天の成分であるガラクタンを加水分解すると、ガラクトースが得られる。ヘミアセタール構造があるので、水溶液は還元性をしめす。
 
=== ニ糖類 ===
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[[ファイル:Sucrose-inkscape.svg|thumb|250px|スクロース]]
* 構造
スクロース(sucrose)は、αグルコースとβフルクトースが縮合した構造をスクロース(sucrose)はもつ。
 
スクロースの水溶液は還元性を示さない。これは、グルコースとフルクトースの還元性をしめすヘミアセタール構造の部分で縮合が行われていることによる。
 
作物は、サトウキビやテンサイなどにスクロースが含まれる。
 
* 加水分解
希酸または酵素インペルターゼでスクロースは加水分解すると、グルコースとフルクトースの等量混合物になる。
 
C<sub>11</sub>H<sub>22</sub>O<sub>11</sub> (スクロース) + H<sub>2</sub>O → C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>(グルコース) + C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub> (フルクトース)
 
この反応を'''転化'''(てんか、inverton)と言い、転化で得られた糖を'''転化糖'''(てんか、invert sugar)といい、転化糖の水溶液は還元性を示す
 
還元性を示さない。ヘミアセタール構造で縮合が行われていることによる。
 
作物は、サトウキビやテンサイなどにスクロースが含まれる。
 
==== マルトース ====
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(乳糖)
* 構造
ラクトース(lactose)は、ガラクトースとαグルコースが縮合した構造。
 
* 特徴
ラクトースの水溶液は還元性を示す。
 
* 加水分解
酵素ラクターゼによってラクトースは加水分解され、ガラクトースとグルコースになる。
 
牛乳など、哺乳類の乳汁にラクトースは含まれる。
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[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)(OCOCH<sub>3</sub>)<sub>2</sub>]<sub>n</sub>
 
になる。このジアセチルセルロースはヒドロキシル基をもつので、アセトン溶媒に溶解するようになる。このジアセチルセルロースの溶けたアセトンやメタノールなどは有機媒の中では液を細孔から押し出してアセトンを蒸発・乾燥させて極性がやや大きい。ま紡糸し、クロロホルムなど極性の小さを'''アセテート繊維'''と溶媒う、あるいは単はトリ'''アセチルセルロスは溶解するト'''という
 
これを細孔から押し出して乾燥させて、紡糸したものを'''アセテート繊維'''という。
語「アセテート」の意味は、「酢酸エステルの」という意味である。
 
アセテート繊維のように、天然繊維を化学的に処理してから紡糸した繊維を'''半合成繊維'''(semisynthetic fiber)という。
 
===== レーヨン =====
天然繊維を溶媒に溶かしたのち、再び繊維に戻したものを'''再生繊維'''(regenerate fiber)という。セルロースの再生繊維は'''レーヨン'''(rayon)と呼ばれ、レーヨンにはビスコースレーヨンと銅アンモニアレーヨンがある。
 
* 銅アンモニアレーヨン
水酸化銅(II)であるCu(OH)<sub>2</sub>を濃アンモニア溶液に溶かした溶液を'''シュバイツアー試薬'''という。このシュバイツアー試薬溶液にセルロース(具体的には脱脂綿など)を溶かすと、粘度のある液体が得られる。この粘い液体を細孔から希硫酸の中にゆっくり押し出すと、セルロースが再生する。こうして得られた繊維を'''銅アンモニアレーヨン'''または'''キュプラ'''といい、光沢があり、滑らかであり、柔らかいので、衣服の裏地に利用される
 
 
* ビスコースレーヨン
セルロース(具体的には脱脂綿など)を濃い水酸化ナトリウム溶液に浸す処理をして'''アルカリセルロース'''(化学式は[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>2</sub>ONa]nである。)にしてから、紙などで挟んでから絞って水気を切って、つぎに二硫化炭素C2SCS<sub>2</sub>と反応をさせると、'''セルロースキサントゲン酸ナトリウム'''(式は[C<sub>6</sub>H<sub>7</sub>O<sub>2</sub>(OH)<sub>2</sub>OCSSNa]<sub>n</sub>である。)という物質になる。これを水酸化ナトリウム水溶液に溶かすと、赤褐色のコロイド溶液になが得られる。こうして、セルロースから得られた赤褐色のコロイド溶液を'''ビスコース'''(viscose)という。このビスコースを、細孔から希硫酸の中に押し出して、セルロースを再生させて紡糸したものが、'''ビスコースレーヨン'''(viscose rayon)という繊維である。
 
そして、ビスコースを細孔からではなく、細長いすきまから膜上に押し出したものを'''セロハン'''(cellophane)といい、テープや包装材に利用される
 
 
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パーマの還元剤には、チオグリコール酸アンモニウムが用いられる。パーマの酸化剤には、臭素酸ナトリウム NaBrO<sub>3</sub> や過酸化水素などが用いられる。
 
== 天然繊維 ==
=== 総論 ===
繊維(fiber)とは、細くて糸状のものをいうが、その繊維のうち天然にある糸状の繊維を'''天然繊維'''(natural fiber)という。石油などから合成した繊維は'''合成繊維'''(synthetic fiber)という。
 
天然繊維のうち、植物からとれるもの(たとえば綿や麻など。主成分はセルロースなど)を'''植物繊維'''(vegitable fiber)といい、動物から取れるもの(羊毛や絹など。主成分はタンパク質。絹とはカイコから取れる繊維。)を'''動物繊維'''(animal fiber)という。
 
=== 具体例 ===
* 木綿
木綿(もめん、cotton)は、植物のワタから取れる植物繊維であり、主成分はセルロースである。木綿は、繊維の内部に中空部分があり、吸湿性が高い。
 
* 絹
絹は、カイコガのまゆから取り出される繊維である。絹の主成分と構造は、フィブロインというタンパク質を、セリンと呼ばれるタンパク質がくるんだ構造である。
 
* 羊毛
絹の主成分はフィブロインである。羊毛の主成分はケラチンである。
 
羊毛は、動物繊維であり、主成分はケラチンである。羊毛の表皮が鱗(うろこ)状で、クチクラ(キューティクル)と呼ばれる構造である。
羊毛は、伸縮性が大きく、また、水をはじく撥水性(はっすいせい)がある。羊毛は保温性があるので、毛布やコートなどに使われる。
 
天然繊維のうち、植物からとれるもの(たとえば綿や麻など。主成分はセルロースなど)を'''植物性繊維'''といい、動物から取れるもの(羊毛や絹など。主成分はタンパク質。絹とはカイコから取れる繊維。)を'''動物性繊維'''という。
絹の主成分はフィブロインである。羊毛の主成分はケラチンである。
羊毛や絹はタンパク質であるので、キサントプロテイン反応を呈する。
 
=== 化学繊維 ===
合成繊維や、天然繊維を溶媒に溶かしたり化学反応させたりと化学的に処理させたものなど、素材の合成に化学的な処理を必要とする繊維を'''化学繊維'''という。
天然繊維を溶媒に溶かしたのち、再び繊維に戻したものを'''再生繊維'''(regenerate fiber)という。セルロースの再生繊維として、たレーヨンれ、レーヨンにはビスコースレーヨンと銅アンモニアレーヨンがある。
 
いっぽう、天然繊維を化学的に処理して組成を変化させたものは'''半合成繊維'''という。半合成繊維としては、たとえばアセテート繊維がある。
 
== 酵素 ==