「高校化学 16族元素」の版間の差分

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酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている'''酸素'''(O<sub>2</sub>)と、原子3個で1つの分子を作っている'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。
 
地球上ではあらゆる生物にとって重要な元は空気中約21%ふくまれる。また、酸素は地殻を構成する主な元素でもあり、およそ半分は酸素である。
 
==== 酸素 ====
[[File:Dioxygen-3D-vdW.png|right|100px]]
'''酸素'''(O<sub>2</sub>)は常温で無色無臭の気体である。2つの酸素原子が二重結合して1つの分子を作っている。空気中で様々な物質と激しく反応して酸化物となる。この反応は光や熱を放出することが多く、'''燃焼'''と呼ばれる。
 
工業的な製法は、液体空気の分留によって酸素を得る。
酸素は空気中におよそ20%含まれている。生物の呼吸に不可欠であり、空気中の酸素は一般に植物の光合成により作られている。
 
実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。
: 2H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> &rarr; 2H<sub>2</sub>O + O<sub>2</sub>↑
 
また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。
: 2KClO<sub>3</sub> &rarr; 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
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==== オゾン ====
[[File:Ozone-3D-vdW.png|right|100px]]
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は、酸素中で無声放電を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は淡青色・特異臭の人体には有害な気体である。酸素原子が3つ結合して1つの分子を作っている。大気中には上空25000mほどにオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、近年このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなっており(オゾンホール)、環境問題として取り上げられることが多くなっている。
 
オゾンは、酸素中で無声放電を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
: 3O<sub>2</sub> ⇄ 2O<sub>3</sub>
 
オゾン O<sub>3</sub> は分解しやすく、酸素となる。また分解のさいに強い酸化作用を持ち示す。オゾンは淡青色・特異臭の気体でヨウ化カリウムデ人体には有害である。オゾプン紙の分子は、酸素原子が3つ結合して1つの分子青変す作っている。
 
また、オゾンの酸化作用は、ヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。
: 2KI + O<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O &rarr; 2KOH + O<sub>2</sub> + I<sub>2</sub>
 
この酸化作用から水道水の殺菌に用いられている所もある。
このためオゾンの検出法は、水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙でオゾンを検出できる。
 
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は淡青色・特異臭の人体には有害な気体である。酸素原子が3つ結合して1つの分子を作っている。大気中には上空25000mほどにオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、近年このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなっており(オゾンホール)、環境問題として取り上げられることが多くなっている。
 
=== 酸素の化合物 ===
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酸化物は、酸や塩基との反応のしかたから3通りに分類される。
* '''酸性酸化物''' : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、'''酸性酸化物'''という
* '''塩基性酸化物''' : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という
* '''両性酸化物''': 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、'''両性酸化物'''という
一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。
 
;酸性酸化物の例
二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。
 
二酸化窒素(NO<sub>2</sub>)は水に溶けて硝酸(HNO<sub>3</sub>)となる。
: 3NO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O &rarr; 2HNO<sub>3</sub> + NO
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;塩基性酸化物の例
金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。
酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)<sub>2</sub>)となる。
: CaO + H<sub>2</sub>O &rarr; Ca(OH)<sub>2</sub>
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;両性酸化物の例
酸化アルミニウム(Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)や酸化亜鉛酸とも塩基とも反応して塩を生じる。
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 6HCl &rarr; 2AlCl<sub>3</sub> + 3H<sub>2</sub>O
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 2NaOH + 3H<sub>2</sub>O &rarr; 2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]
 
==== オキソ酸 ====
酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。このようにして得られる、分子中に酸素を含む酸を'''オキソ酸'''(oxoacid)という。中心元素が同じであれば、酸素の数が多いほど酸性は強くなる。

たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)があるが、硝酸の方が強い酸である。

また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>)は弱酸であるが、硫酸(H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)は強酸であり、過塩素酸(HClO<sub>4</sub>)はさらに強い酸性を示す。
 
塩素のオキソ酸の酸性の順は、
 
:(つよい側) HClO<sub>4</sub> > HClO<sub>3</sub> > HClO<sub>2</sub> > HClO (よわい側)
 
である。
名称は、
: HClO<sub>4</sub> 過塩素酸。 HClO<sub>3</sub> 塩素酸。 HClO<sub>2</sub> 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。
 
=== 硫黄の単体 ===
'''硫黄'''(S)の単体には3つ、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄などの同素体があり、それぞれ異な性質をもつ。単体は火山地帯から多く産出され、また重油の精製過程のひとつである'''脱硫'''(だつりゅう)の工程において多く得られる。
 
;斜方硫黄(S<sub>8</sub>)
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;ゴム状硫黄(S<sub>x</sub>)
[[File:שרשרת גופרית פלסטית.JPG|100px]]
ゴム状硫黄は褐色の無定形固体である。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。
 
斜方硫黄を加熱するとコハク色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。
 
 
* 反応性
硫黄は、高温で反応性が高い。
 
[[File:Sulfur-burning-at-night.png|right|150px]]
硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。
: Fe + S &rarr; FeS
 
また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。
: S + O<sub>2</sub> &rarr; SO<sub>2</sub>
 
=== 硫黄の化合物 ===
==== 硫化水素 ====
'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
: H{{sub|2}}S ⇄ HS{{sup|-}} + H{{sup|+}} ⇄ S{{sup|2-}} + 2H{{sup|+}}
 
火山ガスや温泉に豊富に含まれるが、実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
: FeS + 2HCl &rarr; FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}S↑
: FeS + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} &rarr; FeSO{{sub|4}} + H{{sub|2}}S↑
 
強い硫化水素は、おおくの場合に還元剤でありとして働き、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
: 2H{{sub|2}}S + SO{{sub|2}} &rarr; 2H{{sub|2}}O + 3S↓
 
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
: Fe{{sup|2+}} + H{{sub|2}}S &rarr; 2H{{sup|+}} + FeS↓
 
 
==== 二酸化硫黄 ====
'''二酸化硫黄'''(SO<sub>2</sub>)は腐卵臭をもつ無色刺激臭人体にはな気体で、刺激臭がある。酸性酸化物でありまた火山ガスや温泉など溶けて弱酸性を示す含まれる
 
酸性酸化物であり、水に溶けて弱酸性を示す。
: SO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O ⇄ HSO<sub>3</sub><sup>-</sup> + H<sup>+</sup>
 
実験室では、銅を濃化鉄加えて加熱するか、亜硫酸や希希硫酸と反応させることによりくわえて、得られる。
:FeS + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → FeSO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>S↑
 
 
その他、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で得る。
: Cu + 2H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> &rarr; CuSO<sub>4</sub> + 2H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: NaHSO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> &rarr; NaHSO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> &rarr; Na<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
 
工業的には、硫黄の燃焼により製造される。
: S + O<sub>2</sub> &rarr; SO<sub>2</sub>
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二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。
 
硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨け込み液は弱い酸性雨の原因となるを示す
 
硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。
==== 硫化水素 ====
'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
: H{{sub|2}}S ⇄ HS{{sup|-}} + H{{sup|+}} ⇄ S{{sup|2-}} + 2H{{sup|+}}
火山ガスや温泉に豊富に含まれるが、実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
: FeS + 2HCl &rarr; FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}S↑
: FeS + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} &rarr; FeSO{{sub|4}} + H{{sub|2}}S↑
 
強い還元剤であり、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
: 2H{{sub|2}}S + SO{{sub|2}} &rarr; 2H{{sub|2}}O + 3S↓
 
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
: Fe{{sup|2+}} + H{{sub|2}}S &rarr; 2H{{sup|+}} + FeS↓
 
==== 硫酸 ====
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は工業的に'''接触法'''(contact process)により、酸化バナジウムを主成分として触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は硫黄のオキソ酸であり、化学実験において、また工業的にも非常に重要な物質である。通常はH{{sub|2}}SO{{sub|4}}の水溶液を硫酸と呼ぶ。無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度の濃いものを'''濃硫酸'''、薄いものを'''希硫酸'''と呼ぶ。
 
硫酸は工業的に'''接触法'''により次のような工程で製造されている。
# 硫黄を燃焼させ、二酸化硫黄を作る。
#: S + O{{sub|2}} &rarr; SO{{sub|2}}
# 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、酸化バナジウム(V{{sub|2}}O{{sub|5}})を触媒として反応させて三酸化硫黄を作る。
#: 2SO{{sub|2}} + O{{sub|2}} &rarr; 2SO{{sub|3}}
# 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、発煙硫酸とする。
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# 発煙硫酸を希釈し、濃硫酸とする。
 
 
濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解熱が非常に大きいためである。これを逆にし、濃硫酸に水を加えるようにすると、溶解熱によって水が蒸発し濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})硫黄のオキソ酸であり、化学実験において、また工業的にも非常に重要な物質である。通常はH{{sub|2}}SO{{sub|4}}の水溶液を硫酸と呼ぶ。硫酸は無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度の90%以上てうどの濃いものを'''濃硫酸'''(concentrated sulfuric acid)といい、薄いものを'''希硫酸'''(diluted sulfuric acid)と呼ぶ。
 
 
濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解熱が非常に大きいためである。けっして、これを逆にしてはならない。もし、濃硫酸に水を加えるようにすると、溶解熱によって水が蒸発し濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。
 
硫酸は沸点が高い、不揮発性の酸である。したがって、塩酸や硝酸のような揮発性の酸の塩と反応して塩を作り、揮発性酸が遊離する。
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* 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を熱濃硫酸と呼ぶこともある。
*: Cu + 2H{{sub|2}}SO{{sub|4}} &rarr; CuSO{{sub|4}} + 2H{{sub|2}}O + SO{{sub|2}}↑
* '''脱水作用'''(だっすいさよう、dehydration): 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H{{sub|2}}Oとして奪う。たとえば紙に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。
* 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、乾燥剤として用いられる。
* 不揮発性:
 
希硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。一方濃硫酸は水をほとんど含まないため電離度が小さく、ほとんど酸性を示さない。