「高校化学 16族元素」の版間の差分
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酸素の単体には、原子2個で1つの分子を作っている'''酸素'''(O<sub>2</sub>)と、原子3個で1つの分子を作っている'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)がある。いずれも常温では気体であるが、大きく異なった性質を示す。
==== 酸素 ====
[[File:Dioxygen-3D-vdW.png|right|100px]]
'''酸素'''(O<sub>2</sub>)は常温で無色無臭の気体であ
工業的な製法は、液体空気の分留によって酸素を得る。
実験室で酸素を得るには、過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を加えればよい。この反応で酸化マンガン(IV)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素を発生する。
: 2H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> → 2H<sub>2</sub>O + O<sub>2</sub>↑
また、塩素酸カリウムと酸化マンガン(IV)を混合して加熱してもよい。この反応でもやはり酸化マンガン(IV)は触媒として働く。
: 2KClO<sub>3</sub> → 2KCl + 3O<sub>2</sub>↑
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==== オゾン ====
[[File:Ozone-3D-vdW.png|right|100px]]
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は、酸素中で無声放電を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。▼
'''オゾン'''(O<sub>3</sub>)は淡青色・特異臭の人体には有害な気体である。酸素原子が3つ結合して1つの分子を作っている。大気中には上空25000mほどにオゾンが豊富に含まれる層があり、オゾン層と呼ばれる。オゾン層は人体に有害な紫外線を吸収する働きがあるが、近年このオゾン層が南極付近で局所的に薄くなっており(オゾンホール)、環境問題として取り上げられることが多くなっている。▼
▲オゾンは、酸素中で無声放電を行うか、強い紫外線を当てることで生成する。
: 3O<sub>2</sub> ⇄ 2O<sub>3</sub>
オゾン O<sub>3</sub> は分解しやすく、
また、オゾンの酸化作用は、ヨウ化カリウムデンプン紙を青変する。
: 2KI + O<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O → 2KOH + O<sub>2</sub> + I<sub>2</sub>
このためオゾンの検出法は、水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙でオゾンを検出できる。
▲
=== 酸素の化合物 ===
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酸化物は、酸や塩基との反応のしかたから3通りに分類される。
* '''酸性酸化物''' : 水に溶けて酸性を示したり、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、'''酸性酸化物'''という。
* '''塩基性酸化物''' : 水に溶けて塩基性を示したり、酸と反応して塩を生じる酸化物を、'''塩基性酸化物'''という。
* '''両性酸化物''': 酸・塩基のどちらとも反応して塩を生じる酸化物を、'''両性酸化物'''という。
一般に、非金属元素の酸化物は酸性酸化物であり、金属元素の酸化物は塩基性酸化物である。
;酸性酸化物の例
二酸化炭素や二酸化硫黄など、非金属元素の酸化物の多くは、酸性酸化物である。
二酸化窒素(NO<sub>2</sub>)は水に溶けて硝酸(HNO<sub>3</sub>)となる。
: 3NO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O → 2HNO<sub>3</sub> + NO
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;塩基性酸化物の例
金属元素の酸化物の多くは、塩基性酸化物である。酸化カルシウムや酸化ナトリウムなどが、塩基性酸化物である。
酸化カルシウム(CaO)は水に溶けて水酸化カルシウム(Ca(OH)<sub>2</sub>)となる。
: CaO + H<sub>2</sub>O → Ca(OH)<sub>2</sub>
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;両性酸化物の例
酸化アルミニウム(Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)や酸化亜鉛は、酸とも塩基とも反応して塩を生じる。
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 6HCl → 2AlCl<sub>3</sub> + 3H<sub>2</sub>O
: Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 2NaOH + 3H<sub>2</sub>O → 2Na[Al(OH)<sub>4</sub>]
==== オキソ酸 ====
酸性酸化物を水に溶かすと、水と反応して酸を生じる。このようにして得られる、分子中に酸素を含む酸を'''オキソ酸'''(oxoacid)という。中心元素が同じであれば、酸素の数が多いほど酸性は強くなる。
たとえば窒素のオキソ酸として亜硝酸(HNO<sub>2</sub>)と硝酸(HNO<sub>3</sub>)があるが、硝酸の方が強い酸である。 また、中心元素が第3周期のリン、硫黄、塩素であるようなオキソ酸は、この順に酸性が強くなる。リン酸(H<sub>3</sub>PO<sub>4</sub>)は弱酸であるが、硫酸(H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)は強酸であり、過塩素酸(HClO<sub>4</sub>)はさらに強い酸性を示す。 塩素のオキソ酸の酸性の順は、
:(つよい側) HClO<sub>4</sub> > HClO<sub>3</sub> > HClO<sub>2</sub> > HClO (よわい側)
である。
名称は、
: HClO<sub>4</sub> 過塩素酸。 HClO<sub>3</sub> 塩素酸。 HClO<sub>2</sub> 亜鉛素酸。HClO 次亜鉛素酸。
=== 硫黄の単体 ===
'''硫黄'''(S)の単体には
;斜方硫黄(S<sub>8</sub>)
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;ゴム状硫黄(S<sub>x</sub>)
ゴム状硫黄は褐色の無定形固体である。数十万の硫黄原子がジグザグに結合しているため、引っ張ると結合角が変わり弾力性がある。
斜方硫黄を加熱するとコハク色の液体となる。これを加熱し続けると次第に暗褐色となり、粘性が増してくる。さらに加熱すると濃青色の液体となり、これを水中に入れ急冷するとゴム状硫黄となる。
* 反応性
硫黄は、高温で反応性が高い。
[[File:Sulfur-burning-at-night.png|right|150px]]
硫黄は高温では多くの元素と化合して硫化物となる。たとえば鉄粉と硫黄の粉末を混合して加熱すると、硫化鉄(II) FeS が生じる。
: Fe + S → FeS
また、空気中で青白い炎をあげて燃焼し、二酸化硫黄となる。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
=== 硫黄の化合物 ===
==== 硫化水素 ====▼
'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。▼
: H{{sub|2}}S ⇄ HS{{sup|-}} + H{{sup|+}} ⇄ S{{sup|2-}} + 2H{{sup|+}}▼
火山ガスや温泉に豊富に含まれるが、実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。▼
: FeS + 2HCl → FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}S↑▼
: FeS + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → FeSO{{sub|4}} + H{{sub|2}}S↑▼
: 2H{{sub|2}}S + SO{{sub|2}} → 2H{{sub|2}}O + 3S↓▼
多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。▼
: Fe{{sup|2+}} + H{{sub|2}}S → 2H{{sup|+}} + FeS↓▼
==== 二酸化硫黄 ====
'''二酸化硫黄'''(SO<sub>2</sub>)は腐卵臭をもつ無色
酸性酸化物であり、水に溶けて弱酸性を示す。
: SO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O ⇄ HSO<sub>3</sub><sup>-</sup> + H<sup>+</sup>
実験室では、
:FeS + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → FeSO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>S↑
その他、銅を濃硫酸に加えて加熱するか、亜硫酸塩を希硫酸と反応させることにより得られ、下方置換で得る。
: Cu + 2H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → CuSO<sub>4</sub> + 2H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: NaHSO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → NaHSO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
: Na<sub>2</sub>SO<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → Na<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> + H<sub>2</sub>O + SO<sub>2</sub>↑
工業的には、硫黄の燃焼により製造される。
: S + O<sub>2</sub> → SO<sub>2</sub>
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二酸化硫黄は還元性があり、漂白作用がある。ただし、硫化水素のような強い還元剤がある場合は、酸化剤として作用する。
硫黄を含む物質は燃焼により二酸化硫黄を生じる。
硫黄は石油や石炭に多く含まれているため、このような化石燃料を大量に燃焼させると、大気中に多量の二酸化硫黄が放出され、雨水に溶け込み、酸性雨の原因となる。
▲==== 硫化水素 ====
▲'''硫化水素'''(H{{sub|2}}S)は無色腐卵臭の気体である。人体に有毒であるため、使用時には十分な換気に注意しなければならない。硫化水素は水に溶け、弱酸性を示す。
▲: H{{sub|2}}S ⇄ HS{{sup|-}} + H{{sup|+}} ⇄ S{{sup|2-}} + 2H{{sup|+}}
▲火山ガスや温泉に豊富に含まれるが、実験室では硫化鉄(II)に強酸を加えることで得られる。
▲: FeS + 2HCl → FeCl{{sub|2}} + H{{sub|2}}S↑
▲: FeS + H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → FeSO{{sub|4}} + H{{sub|2}}S↑
▲強い還元剤であり、二酸化硫黄を還元して硫黄の単体を生じる。
▲: 2H{{sub|2}}S + SO{{sub|2}} → 2H{{sub|2}}O + 3S↓
▲多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿を作るため、金属イオンの分離や検出に多く用いられる。
▲: Fe{{sup|2+}} + H{{sub|2}}S → 2H{{sup|+}} + FeS↓
==== 硫酸 ====
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は工業的に'''接触法'''(contact process)により、酸化バナジウムを主成分として触媒をもちいて、次のような工程で製造されている。▼
'''硫酸'''(H{{sub|2}}SO{{sub|4}})は硫黄のオキソ酸であり、化学実験において、また工業的にも非常に重要な物質である。通常はH{{sub|2}}SO{{sub|4}}の水溶液を硫酸と呼ぶ。無色透明で粘性があり、密度の大きい重い液体である。濃度により性質が異なり、濃度の濃いものを'''濃硫酸'''、薄いものを'''希硫酸'''と呼ぶ。▼
▲硫酸は工業的に'''接触法'''により次のような工程で製造されている。
# 硫黄を燃焼させ、二酸化硫黄を作る。
#: S + O{{sub|2}} → SO{{sub|2}}
# 二酸化硫黄と酸素との混合気体を乾燥させ、
#: 2SO{{sub|2}} + O{{sub|2}} → 2SO{{sub|3}}
# 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させ、発煙硫酸とする。
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# 発煙硫酸を希釈し、濃硫酸とする。
濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解熱が非常に大きいためである。これを逆にし、濃硫酸に水を加えるようにすると、溶解熱によって水が蒸発し濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。▼
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▲濃硫酸を水で希釈することで希硫酸が得られる。希釈する際は水を入れたビーカーを水を張った水槽中に入れ、冷却しながら濃硫酸を静かに加えるようにする。これは、硫酸の水への溶解熱が非常に大きいためである。けっして、これを逆にしてはならない。もし、濃硫酸に水を加えるようにすると、溶解熱によって水が蒸発し濃硫酸が跳ねることがあり、たいへん危険である。
硫酸は沸点が高い、不揮発性の酸である。したがって、塩酸や硝酸のような揮発性の酸の塩と反応して塩を作り、揮発性酸が遊離する。
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* 酸化作用: 金属を加え加熱すると、銅などのイオン化傾向の小さい金属を酸化するようになる。加熱した濃硫酸を熱濃硫酸と呼ぶこともある。
*: Cu + 2H{{sub|2}}SO{{sub|4}} → CuSO{{sub|4}} + 2H{{sub|2}}O + SO{{sub|2}}↑
* '''脱水作用'''(だっすいさよう、dehydration): 有機化合物の分子内に含まれている酸素原子や水素原子を、水分子H{{sub|2}}Oとして奪う。たとえば紙に濃硫酸を垂らすと、その部分から酸素と水素が奪われ、炭化する。
* 吸湿作用: 強い吸湿作用があり、乾燥剤として用いられる。
* 不揮発性:
希硫酸は強酸であり、多くの金属と反応して水素を発生する。一方濃硫酸は水をほとんど含まないため電離度が小さく、ほとんど酸性を示さない。
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