神道の信仰法(しんとうのしんこうほう)では神道を信仰する方法についてまなびます。

教典 編集

神道には、イスラム教の『クルアーン』(『コーラン』)、キリスト教の『聖書』に相当する教典はありませんが[1]、『古事記』、『日本書紀』、『古語拾遺』、『宣命』といった「神典」とよばれる古典を規範としています。

神社への参拝 編集

参拝する前に 編集

参拝をおこなう日は毎月1日と15日がよいとされます。ただし、身内に不幸があった人は、死穢の観念から50日間(仏式の49日)を経過するまで参拝はひかえる必要があります[2]

参拝する前に、本来は神の前にむかう前に心身をきよめる禊が必要です。これは神が「穢れ」をきらうとされることによりますが[2]、現代であれば、一般参拝では、入浴・シャワーなどで身体を清潔にしてから参拝する心がけがのぞましいです。神社に到着し、鳥居をくぐる際は「一揖(身体を45度おりまげる会釈)」するのがのぞましいです。このときには服装もきちんとととのえるようにします。

手口をあらう 編集

次に、手水舎にて手水をつかい、手口をあらいます[3]。これは拍手と祝詞をおこなう手口(さらには心)をきよめる意味合いをもつ、一つの禊です。手水の作法としては、

  1. まず、柄杓を右手でもって水をすくい、その水を左手に3回かけてきよめる[3]
  2. 同様に、柄杓を左手にもちかえ、右手を3回あらいきよめる[3]
  3. 柄杓を、再度、右手にもちかえ、すくった水を左手にうけてため、この水で口をすすぐ[3]。おわったら、再度、左手に水をかけてあらう。口をすすぐ際には口が直に柄杓にふれないようにする。
  4. これらがおわった後、つかった柄杓をあらいきよめるが、このときは水をいれた柄杓をたて、柄に水をながすようにしてあらう[3]。柄杓をあらうのには次の人のための配慮という意味合いもある。
  5. あらいおわった柄杓は元の位置にふせておき、最後に口と手を拭紙やハンカチなどでぬぐう。

手水をつかいおわったら、拝礼をおこなうために参道をとおり、神前へとむかいますが、その際に、参道の中央は避けてあるくことがのぞましいです。これは、参道の中央が「正中」とよばれ、神のとおる道とされているからです。百度参りやはだしまいりのように、裸足になって参拝することもあります。これは、脱帽のように、神に敬意をしめすためだとされます[4]

拝礼 編集

神前では、まず、神への供物として賽銭箱に賽銭を奉納します。次に、賽銭箱の近くにある鈴鐘をならしますが、これには、邪気をはらう[2]、音色で神をよびよせて儀式をはじめるための合図などの意味合いがあるとされます。

鈴鐘をならした後に拝礼をおこないます。拝礼の基本的な作法は「二拝二拍手一拝」です[2]

  1. 拝(直立姿勢から身体を90度おりまげる礼)を二度おこなう[3]
  2. 拍手を二度うつ[3] - より具体的には、両手を胸の高さでそろえてあわせ、右手を下方向に少し(指の第一関節ほど)ずらし、その状態で両手を二度うちあわせて音をだし、ずらした右手をふたたびそろえて祈念をこめ、最後に両手をおろす。
  3. 再度一拝する[3](祝詞を奏上する場合は奏上した後におこなう)。

神棚 編集

設置場所 編集

神棚は、できるだけあかるく清浄な場所の[5]、最上階(または上に上階の床のない箇所)の天井近くに南向きまたは東向きに設置するのがよいとされます。最上階の設置が困難な場合は、「天」または「雲」とかいた紙を天井にはり、その下に設置するのがよいとされます。神札をおさめる宮形には神札をいれる箇所が3ヶ所のものと1ヶ所のものがおおいですが、大型の神棚では5ヶ所あるいは7ヶ所以上のものもあります。通常、3ヶ所ある場合は、中央に伊勢神宮の神札(大麻)、むかって右に氏神の神札、左にその他の崇敬する神社の神札をおさめます。1ヶ所の場合は前から伊勢神宮・氏神・崇敬神社の神札の順にかさねておさめます[5]

神具 編集

神棚の正面には神鏡、左右に榊、灯明を配し、神棚の前方に注連縄をかけます[6]。このほか、真榊(まさかき、ミニチュア)、雄蝶・雌蝶といった御酒口(ミキグチ)をあつらえた飾り徳利(多くは九谷焼風)、御幣(金幣)などが神具セットにふくまれている場合があり、ほかにも各家庭でさまざまな縁起物(破魔矢、熊手など)がかざられている例がめずらしくありません。

なお、神鏡をおく理由は諸説あり、神は鏡のようにあるがままをみとおすものであるとか、あるいは鏡のようにみる人によってちがってみえるものであるから、そのつもりで神の前にたてという意味であるという説や、自らのなかにある神性とむきあえという意味であるとする説、あるいは、鏡は太陽の光を反射するように神の光をうつすものであるとする説などがあります。

神饌(お供え) 編集

神饌(お供え)としては、洗米(またはご飯)、塩、水、酒が基本ですが、そのほか、青果物、生魚、干物、菓子類などがそなえられます。米、塩、水は毎朝、酒および榊は月に2度(通常は1日と15日、ほかに、まつっている神札の祭神にゆかりの日)あたらしいものととりかえるのがよいとされています。ほかに、合格通知や祝物の熨斗紙などがささげられる場合もあります。

神饌の置き方は、米・塩・水の場合、むかって左から水・米・塩、もしくはむかって左から水・塩、2列目に米とします。米・塩・水・酒の場合、むかって左から水・酒・米・塩、もしくはむかって左から水・塩、2列目に酒・米、むかって左から水・塩、2列目に酒・酒、3列目に米とします[6]

神へそなえた食べ物は後で「お下がり」としていただくようにします[5]

拝礼 編集

神饌をそなえたら家族そろって日ごろの神の加護を感謝し、これからの安全と幸福をいのるのがのぞましいですが、これができない場合は各自外出前にいのってもよいです。神社本庁が推奨する神棚への拝礼方法は神社と同様「二礼二拍手一礼」ですが[5]、「二礼四拍手一礼」などさまざまな流儀があります。

脚注 編集

  1. ^ 井上順孝 『神道』 18・140頁。
  2. ^ 2.0 2.1 2.2 2.3 井上順孝 『神道』 120頁。
  3. ^ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 井上順孝 『神道』 121頁。
  4. ^ 嘉門安雄 (1972-04-25). “裸体”. 世界大百科事典. 31 (1972年版). 平凡社. pp. 301.
  5. ^ 5.0 5.1 5.2 5.3 井上順孝 『神道』 202頁。
  6. ^ 6.0 6.1 井上順孝 『神道』 203頁。

参考文献 編集

  • 井上順孝 『神道』 ナツメ社〈図解雑学〉(原著2006-12-04)、初版。ISBN 9784816340628