2014 年 4 月に消費税率が 5% から 8% に引き上げられたとき、缶ビールや車、家電、住宅などの駆け込み購入が生じて 3 月の消費は大きく増加し、その反動で 4 月になって消費は大きく減少した。
このように家計はいろいろなモノ(=財やサービス)を消費して、経済的な満足度を高める消費活動を行います。
ある時点の消費量が増加すれば、その時点での効用水準(消費から得られる満足度)も増加する。 しかし、消費が増えるにつれ、効用が増える程度はだんだんと小さくなる。 その財の消費量の増加分とその財の消費から得られる効用の増加分との比率を限界効用(すなわち「効用の微分」)という。 すでに出た限界メリットと似た概念であるが、限界メリットは効用をお金で評価したものであり、限界効用は効用を主観的に評価したものである。
- 限界効用=効用の増加分/消費の増加分
この式は、モノ 1 単位分だけ消費が増加したとき、そのモノからどの程度効用が追加的に増加するかを示している。
たとえばブランドバックを 1 個買って(消費の増加分)、その日の気分がウキウキだった(効用の増加分)。 その満足感の増加分が、限界効用である。
限界効用逓減の法則
編集限界効用には、次のような特徴がある。
①限界効用はプラスである ②限界効用は提言する(=だんだんと減る)
財を消費すると必ず満足が得られる。最初に少しだけ消費したときは、その財が新鮮に感じられるから、満足の増加も大きいだろう。 つまり限界効用が大きい状態である。
しかし、同じ財をたくさん消費したあとでは、その財の追加的な消費はあまり新鮮には感じられなくなる。 その財の消費にかなり飽きがきた状態では、追加的な消費から得られる効用の増加分も、最初ほど大きくはない。
つまり限界効用はプラスであり、その財の消費とともに次第に減少していくといえるのである。 これを経済学では、限界効用逓減の法則という。「逓減」というのは普段まず使わない言葉であるが、要は「だんだんと減る」ということである。
ビール 1 杯目の満足度は、だんだん減っていく
編集この法則は、皆さんもきっと日常生活でよく感じるのではないだろうか。
例えば、仕事帰りの居酒屋で、まずはよく冷えたビールで乾杯。きっと信じられないくらいとてもおいしく感じるだろう。 しかし、2 杯目、3 杯目とお代わりをしていくと、最初の 1 杯目ほどのおいしさは感じなくなってくるだろう。 それで、だんだんチューハイを頼んだり、ハイボールを頼んだりするはず(なかには乾杯からお開きまでビール一筋という無類のビール党の方もいるが……)。
なお、限界効用が低下しても、その財を消費することが得られる満足度の全体量は増加している。つまり、消費量の増加とともに効用水準自体は増大する。 限界効用は、効用が増えるスピードについての概念で、限界効用が小さくなると効用が拡大するテンポは小さくなるが、必ずしも効用全体の量が低下することを意味しない。
リンゴとミカンで考える家計の効用最大化
編集それでは家計の効用最大化行動を、ある予算制約の範囲内でリンゴとミカンという二つの財をどう購入するかという配分問題で考えてみよう。 おさらいになるが、家計にとって効用が最大になるのは、限界メリットと限界デメリットの均衡点であった。 つまり消費の主体的な均衡点は、選択対象となっているものを追加的に拡大したときの追加的なメリットと追加的なデメリットが一致する点に求められる。
リンゴの消費量が増加すれば、効用水準も増加する。そして、効用の増加のスピード(=限界効用・効用の微分)はプラスになるが、消費量が大きいほどそのスピードは小さくなる。 リンゴの消費から得られる効用曲線は右上がりですが、その傾き(=限界効用=効用の微分)はだんだんと小さくなる。 つまり限界効用は逓減する(限界効用逓減の法則)。
リンゴの消費を 1 単位拡大することの追加的なメリットは、リンゴの消費から得られる限界効用である。 限界効用は逓減しますから、追加的なメリットもリンゴの消費とともに減少する。 限界メリット曲線は右下がりの曲線となる。
一方でリンゴの消費の限界的なデメリットは、リンゴの消費を拡大することで他の財・サービスの購入に回す資金量が減少することである。 リンゴの価格が 1 個 100 円とすれば、もう 1 個追加にリンゴを購入すれば、他の財・サービスに回せる資金が 100 円少なくなる。 だから、限界デメリットはリンゴの価格と同じになる。限界デメリット曲線はリンゴの市場価格で与えられ、水平となる。
主体的な均衡点(最適な消費を決める点)は、限界メリット曲線と限界デメリット曲線との交点である。 交点より左側では、リンゴを追加的に購入するメリットの方がデメリットよりも大きいから、リンゴの購入を拡大することが望ましい。 逆に交点の右側では、リンゴの購入の追加的拡大のデメリットのほうがメリットよりも大きいため、リンゴの購入を減らす方が望ましいことになる。