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言葉の変化?
編集資本主義経済、社会主義経済の理解が進むにつれて、これらの言葉自体が実態を表さないと考える人が多くなりました。現代の経済学(Economics)においては、これらの言葉はあまり使用頻度が高いとはいえません。しかしながら、現在のさまざまの国の経済システムを考えると、何らかの分類が出来ると多くの人は考えるでしょう。この項目では、資本主義経済ではなく分権的市場経済(decentralized market economy)、社会主義ではなく中央集権的計画経済(central planned economy)と呼ばれるようになった理由を考えます。
分権的市場経済
編集資本主義経済と呼ばれてきた経済システムでは、市場を用いて財・サービスの分配が行われています。市場では、人々は自分の好きな価格で財・サービスを取引できます。誰か他人が、ある財・サービスを取引している価格が気に入らないとしても、あなたはその取引に介入することが出来ません。または、誰か特権的な人が、価格や取引量を決めているわけでもありません。全ての人が、ある財・サービスを買うため(あるいは、売るために)市場に行き、自分の意思で取引をします。時には、自分の要求に合致する価格でないために、買わない(売らない)という自由もあります。
このような市場があり、そこで購入した場合にのみ、財・サービスを使用する権利を得るというルールに従う経済システムが資本主義経済と呼ばれていることが分かるでしょう。しかし、このようなルールは、資本(ここでは、工場の機械設備を思い浮かべてください)とは特別に関係はないと、容易に気がつきます。したがって、資本主義経済という用語が実態を表していないと考えられるわけです。
いわゆる資本主義経済において、重要な要素は市場であると考えられます。したがって市場経済と呼んだとしても、それほど大きな問題ではないと考えられます。しかし、市場の特徴としても特に重要であると考えられる分権性から、分権的市場経済と呼びます。どのような意味で分権的なのかを、次の社会主義経済との比較をしながら、後の節で考えましょう。
中央集権的計画経済
編集かつて社会主義経済と呼ばれた経済システムをもつ国は少なくなってきました。それらの多くの国が、市場による財・サービスの分配を取り入れています。それでは、財・サービスの価格や取引量の決定を市場にまかせない場合、どのような方法があるでしょうか。考えられる選択肢には、誰か特権的な人が財・サービスの価格と取引量を決定するというものがあるでしょう。取引量を決定するのは困難をともないますが、通常は供給量(生産量)を決定してしまうことで、経済全体の取引量を決定することが出来ます。
多くの社会主義経済では、政府によって価格や生産量の計画が決定されて、それに基づいて生産と販売が行われていました。このような事前に計画された価格と生産量に基づいて経済活動(生産活動)が決まるという意味で計画経済と呼ばれます。この計画は、経済全体の情報を集約し、適切に決定される必要があります。その役割を政府が担うことになりますが、その政府の役割を表す言葉として中央集権的という言葉を使います。計画経済では、経済の労働量、資本量、需要量を、さまざまな情報から計算し、実行可能な計画を決定する政府が、経済の中で特別な役割を果たすことになります。このような政府を持ち、計画にしたがって財・サービスを分配することを中央集権的計画経済と呼ぶわけです。
分権的市場経済と中央集権的計画経済
編集計画経済と市場経済の大きな違いは、計画経済が計画する人を必要とすることです。計画する人は政府と考えられます。政府は経済の中で特別な役割を持つ主体となります。これに対して、市場経済はどうでしょうか。全ての財・サービスが市場で取引されているとすると、経済的に特別な主体は必要ありません。市場が最終的に、ある財・サービスを利用する人を決定すると考えれば(それは市場で購入した人であることはすでに述べました)、全ての人は市場に参加して取引するという意味において特別な人は存在しません。極端なケースであれば、政府も市場参加者の一人ということになります。それでは、市場経済では、どのような要因で最終的な財・サービスの使用者を決定するのでしょうか。うまくいくかどうかは別にして、市場は参加者が持っている需要と供給の合計によって価格と取引量が決定するメカニズムを持っているので、市場の参加者の意思によって、その財・サービスを使用できる人、できない人が決まっていると考えられます。全ての人は市場の参加者であり、特別な人を考えなくてもよいという点が、市場経済の大きな特徴であると考えられるわけです。特別な権力を持つ人を考えないという点を強調するために分権的市場経済と呼びます。
中央集権的計画経済は、現代の経済システムとしては少数派になりつつありますが、分権的市場経済を分析する上で、考察の対象としては重要です。市場経済の分権的な特徴を理解するためには、中央集権的計画経済との比較が理解を助けていることからも分かるでしょう。また、分権的市場経済がどのようなときにメリットがあり、どのようなときにデメリットがあるかを考える上でも、中央集権的計画経済が達成できることを基準にする場合もあります。したがって、分権的市場経済に関心がある人も中央集権的計画経済をよく理解する必要があるでしょう。
現実の経済システム
編集このように経済の分類を整理すると、実態にのっとった理解を深めることが出来るでしょう。しかし、ある経済は分権的市場経済か中央集権的計画経済かを単純に分類することが出来るでしょうか。日本の経済は、基本は分権的市場経済です。しかし、政府は単なる市場参加者以上の意味を持っています。法律を作って税を課したり、企業や家計の経済行動に規制をかけることができます。その意味で、計画性もある経済です。逆に中央集権的計画経済であったとしても、すべての財・サービスを完全に計画することは不可能でしょう。大きな工場などで作られる財などが計画の中心であったと考えられます。
そのように考えると、分権的市場経済と中央集権的計画経済は両極端を表す言葉で、多くの経済はその中間的な経済システムを持っていると考えられます。したがって、現実の経済を考える上では、分権的市場経済としての側面、中央集権的計画経済としての側面が、それぞれどの程度なのかを考えることが重要といえるでしょう。