一様分布 編集

  • 確率密度関数

  を満たす定数とする。 を満たす に対し、

 

と定める。このとき、

 

を満たすので、この は確率密度関数である。この確率密度関数によって定まる確率分布を、一様分布という。

  • 期待値

期待値E(X)は、

 

である。

  • 分散

分散V(X)は、

 

である。

正規分布 編集

  • 確率密度関数

実数 に対し、

 

と定める。このとき

 

とすると

 

であり、 と極座標変換すると なので、

 

である。 であることと併せて、 であることがわかる。すなわち、この は確率密度関数である。この確率密度関数によって定まる確率分布を、(標準)正規分布という。

  • 期待値

期待値E(X)は、

 

である。

  • 分散

分散V(X)は、

 

である。

ガンマ分布 編集

  • 確率密度関数

 を正の定数とする。正の数 に対し、

 

と定める。ただし、 ガンマ関数である。このとき、

 

であるから、この は確率密度関数である。この確率密度関数によって定まる確率分布を、ガンマ分布という。

  • 期待値

期待値E(X)は、

 

である。

  • 分散

分散V(X)は、

 

である。

ベータ分布 編集

  • 確率密度関数

 を正の定数とする。 を満たす に対し、

 

と定める。ただし、 ベータ関数である。このとき、

 

であるから、この は確率密度関数である。この確率密度関数によって定まる確率分布を、ベータ分布という。

  • 期待値

期待値E(X)は、

 

であるから、これを整理すると

 

が得られる。

  • 分散

分散V(X)は、

 

であるから、これを整理すると

 

が得られる。

指数分布 編集

  • 確率密度関数

 を正の定数とする。正の数 に対し、

 

と定めると、

 

なので、この は確率密度関数である。この確率密度関数によって定まる確率分布を、指数分布という。

  • 期待値

期待値E(X)は、

 

である。

  • 分散

分散V(X)は、

 

である。

カイ二乗分布 編集

  • 確率密度関数

 を正整数の定数とする。正の数 に対し、

 

と定める。ただし、 ガンマ関数である。このとき、

 

なので、この は確率密度関数である。この確率密度関数によって定まる確率分布を、カイ二乗分布という。

  • 期待値

期待値E(X)は、

 

である。

  • 分散

分散V(X)は、

 

である。

t分布 編集

  • 確率密度関数

 を4以上の自然数とする。実数 に対して、

 

と定める。ただし、 ガンマ関数である。このとき、 と置換すると なので、

 

である。ただし、途中補遺で導いた式

 

 とした式を用いた。この計算より、この は確率密度関数である。この確率密度関数によって定まる確率分布を、t分布という。

  • 期待値

期待値E(X)は、

 

である。

  • 分散

分散V(X)は、

 

である。ここで、 とおくと、 であり、 より である。また、 である。よって、

 

である。ただし、途中補遺で導いた式

 

 とした式を用いた。

F分布 編集

  • 確率密度関数

 を正整数の定数とし、特に は4より大きいとする。正の数 に対し、

 

と定める。ただし、 ベータ関数である。

このとき、 と置くと、 であり、 であることに注意すると、

 

なので、この は確率密度関数である。この確率密度関数によって定まる確率分布を、F分布という。

  • 期待値

期待値E(X)は、

 

である。ここで、先ほどの置換をすると

 

であることに注意すると、

 

である。

  • 分散

分散V(X)は、

 

である。同様に、先ほどの置換をすると

 

である。

パレート分布 編集

  • 確率密度関数

  の定数とする。 を満たす実数 に対し、

 

と定めると、

 

なので、この は確率密度関数である。この確率密度関数によって定まる確率分布を、パレート分布という。

  • 期待値

期待値E(X)は、

 

である。

  • 分散

分散V(X)は、

 

である。

補遺:ガンマ関数とベータ関数 編集

  • ガンマ関数

正の数 に対して、積分

 

ガンマ関数という。

この積分は広義積分であるから、収束性を確認しておこう。 のそれぞれが収束することを示せばよい。 については、 において より であり、 であるから、 は収束する。 については、 であることに注意すると、ある正の数 が存在して において であるから、 であり、 であるから、 は収束する。

ガンマ関数について、

 

が成り立つ。このことと、

 

であることを合わせると、自然数 に対しては

 

であることがわかる。

  • ベータ関数

正の数 に対して、積分

 

ベータ関数という。

この積分は一見すると通常の積分であるが、 または のときは端点での値が発散するので広義積分である。収束性を確認しておこう。 のそれぞれが収束することを示せばよい。 については、 において より であり、 であるから、 は収束する。 については、 において より であり、 であるから、 は収束する。

  • ガンマ関数とベータ関数の関係

ガンマ関数とベータ関数の間には、

 

という関係式が成り立つ。

(証明)
両辺ともに
 
という積分と等しくなることを示す。
ベータ関数について、
 
において とすると であるから、
 
である。
ガンマ関数について、
 
において、 と変数変換すると、 であるから、
 
である。ここでさらに とすると、 であるから、
 
であることがわかるので、以上より
 
である。//

ここで、得られた関係式に を代入してみよう。すると、左辺、右辺はそれぞれ

 
 

であり、これは大学受験数学でおなじみの1/6公式そのものである。他にも、

 とすると 
 とすると 

なども、大学受験対策の公式として暗記した人もいるかもしれない。本節で示した関係式は、これらの公式を一般化したものといえるものである。