次の2つの2次元ベクトルを、R2の単位ベクトル(unit vector)という。
,
また、次の3つの3次元ベクトルをR3の単位ベクトルという。
,
,
平面上の任意の点の位置ベクトルは、二次元の単位ベクトルを適当にスカラー倍して足し合わせることで表現できる。
三次元の空間上の点についても同様に、三次元の単位ベクトルで表現できる。また、この表現の仕方は一意的である。
このような性質を指して、単位ベクトルの組はR2(R3)の基底(basis)であるという。
行列とは、4個の実数を正方形に並べた表、
(6.1)
のことである。同時に行列
との掛け算を
対してベクトル
との掛け算は、
と、定義する。さて、行列とベクトルとの積は、位置ベクトルxの点Pが、行列Aをかけることによって
位置ベクトルx'の点P'に変換されたと見ることができる。
例えば、
は、点Pを、x軸に関して線対称な点P'への変換である。これをx軸に関する折り返しと言う。
次に、行列Aによって点Pを変換したあと、さらに行列Bで変換することよって点Pを点P''(位置ベクトルx'')に移そう。
よって、x=B(Ax)=(BA)x
行列A,B,C,ベクトルx,y,数cに関して次の性質が成り立つ。
A(BC)=(AB)C
(6.2)
特に、(6.2)は重要で、これを行列Aによって引き起こされるR2の変換TA:x→Ax(「TAはxのAxへの変換」と言う意味)の線型性(linearity)と言う。一般にR2変換Tが、次の性質を満たすとき、TをR2の線型変換(linear transformation)という。
一般に次の定理が成り立つ。
定理(6.1)
TをR2上の変換とするとき、
Tが線型変換⇔あるAに対してTx=Ax
(証明)
は既に示した。 を示す。
単位ベクトルの行き先だけ調べれば十分である。(その理由は別のところで述べる)
とする。
任意の
Tは線型変換なので、
とすれば、
Tx=Ax ♯
Aによって引き起こされる変換をTAと書くこともある。
行列の成分a、b、c、dの値が全て0の行列は、全てのベクトルをoに移す変換であり、対応する行列を零行列(ぜろぎょうれつ、れいぎょうれつ、zero matrix, null matrix)といい、特にOと書く。
-
写像
を
で与える。この写像は線形写像である。 この写像はベクトルの
成分を
倍にする。
-
写像
について
が成り立つ。
-
写像
について
が成り立つ。
例
全ての点を反時計回りにα回転させる変換は線型変換であり、回転行列(rotation matrix)と呼ばれる。対応する行列は
である。
演習
1.原点に対する対象変換は線型変換である。この変換に対応する行列を求めよ
2.TBTA=TBAを示せ。
3.
Txをxのaへの正射影とする。この時Tを射影子と言う。射影子は線型変換である。この時
とすると、Tに対応する行列を求めよ
4.
(a,b)=0,a,b≠o
S:aへの射影子, T:bへの射影子
とする。この時次の三つを証明せよ。
(1)T^2=S (2)TS=ST=O (3)任意のxに対して、Tx+Sx=x
前部で定義した行列の概念を広げよう。すなわち、9個の実数の表
も行列と言う事にして、前部で定義した行列を二次の行列と、今ほど定義した行列を三次の行列といって区別することにする。
ベクトルとの積、行列同士の積も同様に定義される。したがって、
に対しては、
が、
と
にたいしては、
(i,j=1,2,3)
が定義されている。次のような性質がある。
(AB)x=A(Bx), (AB)C=A(BC)
A(x+y)=Ax+By, A(cx)=(Ac)x (6.3)
R3における線形変換Tは次の性質を持つ変換である。
T(x+y)=T(x)+T(y)
T(cx)=c(Tx)
前部とまったく同様に次の定理が導ける
定理(6.2)
R3においてTが線型変換⇔あるAに対してTx=Ax
Aによって引き起こされる変換をTAと書くことがある。行列の成分が全て0の行列は、すべてのベクトルをoに線形変換する行列であり、これを零行列(ぜろぎょうれつ、れいぎょうれつ、zero matrix, null matrix)といい、Oと書く。
例
y軸を中心にα回転させる変換に対応する変換は
演習
1.定理(6.2)を証明せよ
2.次の行列が引き起こす変換はどんな変換か
(1)
(2)
(3)
3.
,
この時、aへの射影子に対応する行列を求めよ。
4.
bとcの張る平面に、その平面上に無い点P(位置ベクトルx)から垂線を下ろす。その足をP'(位置ベクトルx')とするとき、x'をxの正射影、Tx: x→x'をb,cの張る平面への射影子と言う。さて、今a,b,cが直交しているとしよう。xのaへの射影子をS,xのb,cの張る平面への射影子をTとするとき、次の事柄を証明せよ
(1)T2=T (2)TS=ST=O (3)任意のxにたいし、Tx+Sx=x