ヘブライ文字には,現代のローマ字のような,大文字・小文字の区別はない.文字同士つないで書く筆記体も現代では用いられているが,聖書の写本には見られない.先に掲げた書体は最も標準的な活字体であって,ローマ字や漢字の標準活字体のように,肉太の線と肉細の線から成り,先の広いペンで書くとこの書体が得られるが,そうしなければならないわけではない.文字を語に綴るとき,ローマ字とは反対の方向,すなわち右から左に綴り,ローマ字の場合と同じく,語と語の間を空ける.ただしローマ字の場合と違って,一つの単語を途中で切ってハイフンで次行に続ける,ということは許されない.だから,行の余白が一語を書くに足りないときは,その後全体を次の行に書く. צ,פ,נ,מ,כ の5文字は,それぞれ, ץ,ף,ן,ם,ך という異字体を持っている.これは語末だけに現れる字体(ソフィート)である. 例:צרף מים נפץ כון הפך
いかなる文字体系においても,一番大事なことは,文字同士を弁別するための特徴である.例えばローマ字の場合,不用意に書かれた þ のような字は,b なのか p なのか,これだけでは判別できない. ヘブライ文字で特に注意すべき弁別点を念のため挙げると, まず ן נ ז ו はそれぞれ ך כ ד ר と比べて,横線が短い.(後者は横線が長い.) ז は ו と比べて右上が出っ張っており,נ は左下に短く張り出した線が重要. ג は斜右下におろした筆を少し上に戻して左下にはねる. ם 以外の語末字体 ץ ף ן ך と ק は,他の字形よりも縦線が下に延びている. ד と ך や ז と ן、 や ת と ף を比較せよ. ל は上の縦線部分だけ他の事件より丈が高い, י は ו の頭だけ. ס ר כ は角を丸く一画に書く.これに対し, ד ב は横線が右に少し張り出すように, ם は右下が丸くならないように,それぞれ二画に書く. ח に対して ה は左の縦線が上まで届いていない.このほか, ע と צ や,ט と מ の違いに注意.
ふだん書くには,文字同士の弁別に関係しない装飾部分は取り去って差し支えない. 決まった筆順などあるわけではない.上記の点に注意して自由に書いてよろしい.