7.4.2 相違点
(1) 修飾句の A と B は、性・数・定/不定において、互いに一致する。 すなわち例えば次図に表示した左右の語群のうち、文法的な組み合わせは線で結んだ組み合わせだけで、他の組み合わせは非文法的である。
B | A | |
---|---|---|
טוֹב | ― | בֵּן |
טוֹבִים | ― | בָּנִים |
טוֹבָה | ― | בַּת |
טוֹבוֹת | ― | בָּנוֹת |
そして A に冠詞が付けば B も必ず冠詞を取る。 一方、連語句では、A の性・数と B のそれとは無関係であり、また A は B の定/不定に拘らず冠詞を取らない。すなわち次図に表示した語群の、右側の任意の一つと左側の任意の一つとの組み合わせが文法的に許容される。
B | A | |
---|---|---|
הַמֶּלֶךְ | בֶּן | |
הַמְּלָכִים | בְּנֵי | |
הַמַּלְכָּה | בַּת | |
הַמְּלָכוֹת | בָּנוֹת |
(例えば בַּת הַמְּלָכִים 《王たちの(一人の)娘》が実際には起こり得ないとしても、それは意味上の制約のためであって、文法の問題ではない)。
(2) A は連語句では連語形を取るのに対し、修飾句では独立形を取る。
(3) 6.1 の例文4,5 で見たように、修飾部の A, B はいずれも וְ で連結された二つ以上の名詞で構成され得る一方、連語句の場合にはいずれも回避される。 まず A について、例えば「王の息子と娘」という意味で בֶּן וּבַת הַמֶּלֶךְ とすることは、原則として不可。代わりに、接尾代名詞(後述)を用いて בֶּן הַמֶּלֶךְ וּבִתּוֹ 《王の息子と彼の娘》とする。もっとも我々のテクストでは後期の文書に僅かながら例がある: סֵפֶר וּלְשׁוֹן כַּשְׂדִּים 《カルデア人の書物と言葉》(ダニエル書14)。 ただし、連語句自身を連語形にする(すなわち限定語を次ぎの被限定語として連語形にする)ことによって、二つ以上の連語形の連なった連語句をつくることはできる。我々のテクストでは、 שְׁאָר מִסְפַּר־קֶשֶׁת גִּבּוֹרֵי בְנֵי־קֵדָר 《ケダルの息子らの勇者たちの弓の数の残り》(イザヤ書2117)などが最も長い列であろう( שְׁאָר が שְׁאַר になっていないのは、連語があまり長くなったためであろう)。 一方、連語句の B については、 קֹנֵה שָׁמַים וָאָרֶץ 《天と地との創造者》(創世記1419)のような表現もあるが、このような場合は אֱלֹהֵי הַשָּׁמַיִם וֵאלֹהֵי הָאָרֶץ 《天の神と地の神》→《天と地との神》(創世記243)のように、被限定語を繰り返した二つの連語句を接続詞で結ぶ仕方が一般的である。