聖書ヘブライ語入門/音節構造・アクセント・シェワー/複合シェワー
シェワーとパタハ(־ַ ),セゴール(־ֶ)カーメツ(־ָ)のそれぞれを組み合わせた符号 (־ֲ)(ハーテーフ・パタハ), (־ֱ)(ハーテーフ・セゴール), (־ֳ)(ハーテーフ・カーメツ)は, 主に喉音字 עחהא に付き,それぞれ短くされた a, e, o の音を表し,a, e, o と転写される.
例: אֲדָמָה 'adāmā, אֱוִיל 'ewīl, אֳנִי 'onī, הֲמו֗ן hamōn, חֲמוֹר ḥamōr, עֲבֹדׇה ˁabōdā
これを複合シェワーと呼び,これに対し(־ְ)は単純シェワーと呼ばれることもある.
複合シェワーは,喉音以外の子音における単純シェワーに該当するもので,しかも上に挙げたような,有音シェワーに該当する場合だけではなく,次の例のように無音シェワーに該当する場合にも現れ,この場合には,事実上同一の語で無音シェワーをつけた形も見られるだけでなく,シェワー以外の母音を伴う形もある.
例:
יְחֱרָ֤דוּ yəḥerādū,
יֶחְרְדוּ yeḥrədū,
יֶחֶרְדוּ yeḥerədū
このうち, יֶחְרְדוּ が最も論理的・抽象的な表記なのだが,実際には עחהא で表される喉音は,その性質上,子音だけを持続して発音することが困難で,その前後の母音に同化されて,多少とも母音がしのび込む. יְחֱרָ֤דוּ יֶחֶרְדוּ はそのような発音をできるだけ忠実に表記しようと努力した結果である.
3.5.1
このことと関連し,次の場合には,カーメツが開音節にあるにもかかわらず,o を表す. すなわち
(1) ハーテフ・カーメツ(־ֳ)の前. 例: פָּעֳלוֹ poˁolō(←*פָּעְלוֹ poˁlō),
(2)oを含む閉音節の前.この場合小カーメツが二つ並ぶことになる. 例: פׇעָלְכֶם po-ˁol-ḵem(←*poˁ-lə-kem)
(3)ハーテフカーメツ(־ֳ )の異音として現れたカーメツの場合. 例: קָדָשִׁים qodāsīm ,( קֳדָשִׁים qodāsīm の異形)
[* を付けた形は現実には現れぬ仮構形である.]