装飾記号
音を飾る記号。下の譜例には演奏例が書かれているが、装飾をどのくらい速く行うかなどは演奏者に任される。
前打音と後打音
編集音の前、または後に、他の音を加えて飾るものだ。普通の音符の3分の2ほどの大きさの小音符で書かれる。前に付ける物を前打音、後に付ける物を後打音という。装飾音の分の音価は、ないものとして考えられる。
- 前打音 - 親音の前に演奏される。
- 長前打音 - 装飾音が親音の半分(付点音符の場合は3分の2)の長さとなる。その分、親音は実際には短く演奏されることになる。場合によっては、長前打音の音価で示された長さだけ長前打音を演奏するということもある。非和声音の倚音を表すのに使われた。次の短前打音と違って斜線を引かない。
- モーツァルトの場合、斜線があっても長前打音で演奏すべきことがある。この場合には斜線は音符の旗1本分に相当する。
- 短前打音 - 小音符に斜線を付けて書き表されます。この音符は非常に短く演奏される。本来の親音の演奏されるべきタイミングで演奏されるのがもともとの奏法だが、前の音の終わりの部分で短前打音を演奏し、親音の演奏は本来のタイミングのまま演奏するというのも多く行われる。
- 複前打音 - 短前打音の小音符が2つ以上になった物を複前打音という。斜線は書かれないのが本来の書き方だが、短前打音に合わせて斜線を引く場合もある。
- 長前打音 - 装飾音が親音の半分(付点音符の場合は3分の2)の長さとなる。その分、親音は実際には短く演奏されることになる。場合によっては、長前打音の音価で示された長さだけ長前打音を演奏するということもある。非和声音の倚音を表すのに使われた。次の短前打音と違って斜線を引かない。
- 後打音 - 親音の後に短く入れる。1音の場合、2音以上の場合がある。
音を揺らす
編集2度上、または下の音と行き来する記号である。
- プラルトリラー - 逆モルデントとも言う。音の始まりを飾る短いトリル(後述)である。音符の音を演奏してから素早く2度上の音を演奏し、すぐに戻る。記号が長い場合には、2回往復する。最初に2度上の音を加える場合もある。記号に臨時記号が付いている場合には、2度上の音にその臨時記号を付けて演奏する。
- モルデント - プラルトリラーの逆で、音符の音を演奏してから素早く2度下の音を演奏し、すぐに戻る。最初に2度下の音を加える場合もある。記号に臨時記号が付いている場合には、2度下の音にその臨時記号を付けて演奏する。
- ターン - 音符の上にこの記号が付いている場合には、音符の音の2度上から始め、素早く音符の音を演奏し、2度下の音に行ってから戻りる。右にずれている(次の音符との間にある)場合には、その音を演奏してから、次の音に移る前に2度上の音—音符の音—2度下の音—音符の音と演奏する。記号の上に臨時記号が付いている場合には、2度上の音に、記号の下に臨時記号が付いている場合には2度下の音に、その臨時記号を付けて演奏する。
- 転回ターン - 下の音から始めるターンである。2種の書き方がある。
- トリル - その音の音価の間中、書かれた音と2度上の音の間を素早く往復する。上の音から始める場合と、書かれた音から始める場合とがありが、原則としてバロックでは上の音から始め、ロマン派以降では書かれた音から始める。上の音から始めることを特に示すためには、短前打音を書き添える。トリルの終わりでは一回2度下の音に行き、書かれた音に戻るのが普通だが、2度下の音に行くことを省略することもあ。2度下の音を省略しないことを示すためには、後打音を書き添える。
アルペッジョ
編集鍵盤楽器などで和音を演奏するときに、和音を同時でなく少しずらして演奏する記号である。
通常、下から上にずらして演奏する。前にずらす場合も、後にずらす場合もある。また、上から下にずらすときには矢印を付けて表す。