任意(∀)の正の数εに対し、ある(∃)数δが存在し
-
ならば
-
となるとき、Lは、xをcに近付けた時の f(x)の極限といいます。
言い換えれば、正の数εが与えらると、適当なδを選ぶ事によって
-
ならば
-
となることが証明できます。
さらに言えば、このような証明が全ての(∀)ε > 0に対して可能です。
この形式的な定義は、極限を求めるには少し不便です。極限Lを見つけるための方法論は与えず、ある数値が極限であるかどうかを判定するのにだけ使えます。直感的な極限の定義や、似たような問題からの類推、或いは、ロピタルの定理などの定理を用いて極限を予想し、形式的な定義を用いて、その値が極限であるか否かを示すことができます。
∀:全称記号。任意、全て
∃:存在記号。存在、ある
xを c=9に近付けた時の、f(x) = x + 5 の極限を探す事を考えます。極限L は 9+5=14 であることが分かっていて、これは次のように証明できます。
δ = ε と選べば (この選び方がこのページの主題です。)
-
ならば
-
ということが証明できるわけです。
実は、証明の式を逆に辿る事によって、δを選びました。
-
この場合、
-
から
-
となります。
したがってδ = εと選べば、証明自体もこのように簡単にできます。この例はとても簡単な例なので、一般にはそう上手くはは行きません。
xを 2に近付けたとき、f(x) = x² - 9 の極限がL = −5であることを証明します。
-
ならば
-
を示すことが必要です。
ここでも、逆に辿ってδを探します。まず最初に、xを使わずに δと εの関係を表すことを考えます。
-
-
また三角不等式を用いて
-
となることを考えれば
-
となるので
-
を満たすように δを選べばいいと分かります。この最後の方程式は、論理的に出てきたわけではなく、それぞれの不等式を見比べて単にこのように選べば、証明が上手くいくというだろうという直感的なテクニックです。この方程式の解としてδを選んでおき、証明の最後の段階で、この逆に辿って得られた方程式を使用します。
- この例では、xをδに、不等号 < を、等号 = に置き換えました。蛇足ですが |x-2| = δではなく|x-2| < δなので、こういう δの選び方が可能になります。上の方程式を元に、証明を辿ると、このようなδの選び方でいいということがよくわかるでしょう。
δの二次方程式だと思って、δが正の数であることに注意して解くと
-
となります。
この値を用いて、極限であることの証明を行います。
-
ならば
-
xを 0に近付けたとき f(x) = の極限が L = 1 になることを示してください。
xを0に近付けたとき、f(x) = 1/x が 極限を持たないことを示してください。