未知の関数とその導関数を含む方程式を微分方程式と呼びます。
本来これは総称であって正確には1変数関数の導関数(常微分)を含む常微分方程式と多変数関数の所謂偏導関数(偏微分)
を含む偏微分方程式に大別されるのですが本稿では偏微分方程式は扱わないのでここで単に微分方程式と言った場合は
常微分方程式を表すものとします。
また理論的な詳細は常微分方程式を参照してもらう事とし本稿では解法の説明を重点的に行う事にします。
ここからは2階微分方程式の解法について述べる事にします。
以下の微分方程式は置換積分を用いる事により変数分離形の1階微分方程式に帰着させる事ができます。;
- 。
上式の両辺にdy/dxを掛けて積分すれば
-
となります。ここで とおけば ですので、以下のように計算できます。;
-
-
-
これは(形は複雑ですが)変数分離形の微分方程式に他なりません。
一般の2階の線型微分方程式は、
- …(*)
という形で書ける微分方程式です。また微分方程式(*)に付随する同次方程式は次式で表されます。;
- …(**)。
ここで微分方程式(**)が という2つの解を持っていたとします。するとこれらの線型結合
- ( :任意定数) …(***)
も(**)を満たす事が代入により分かります。このような解 を(**)の基本解といいます。
一般的な形(関数係数かつ非同次)の2階線型微分方程式(*)を解くのは少し難しいのでそれに関しては後述させてもらう事にしてここでは定数係数かつ同次の2階線型微分方程式の解法について述べてゆく事にします。
それでは2階定数係数同次線型微分方程式
- ( ) …(★)
の解を探してみることにしましょう。やや天下り的ですが とおくと、 なので、これを方程式に代入すれば
-
となります。指数関数が零になる事はないので上式から二次方程式
- …(★★)
が得られます(これを特性方程式といいます)。
この二次方程式の相違なる二解を と書けば二つの指数関数 が微分方程式(★)の基本解になっている事が分かります。
ゆえに(***)より次式で与えられる関数が微分方程式(★)の一般解になっている事が分かりました。;
- 。 …(♪)
特性方程式(★★)が重解 を持つ場合、以下で見るように(★)は という形以外の解を持ちます。
解がある関数 を用いて と書けるとすると、
- 、
-
より
- …(#)
が得られます。ここで は二次方程式(★★)の解なので、 であり、また解と係数の関係より すなわち が成り立つので、(#)が零となるためには すなわち ( :積分定数) が成立せねばなりません。
従って(★★)が重解を持つとき微分方程式(★)は以下の解を持つ事が分かりました。;
- 。…(♪♪)
特性方程式(★★)の相違なる二解が複素数解 ( :虚数単位)である場合一般解(♪)は複素数値関数を用いて表される事になりますがこの解は以下のように適当な変形を施す事によって実数値関数を用いた式に書き換えられる事がわかります。
とおけばオイラーの公式 より
-
-
が成り立ちます。したがって、解(♪)は
-
と書き換えられますので、任意定数を書き換えることで
- 。…(♪♪♪)
と表されることがわかりました。
(♪♪♪)は(♪)とはずいぶん見た目の異なる表現ですので、本当に解になっているか不安になるかもしれません。実際に(★)を満たすか確かめてみましょう。(♪♪♪)を微分すると
-
-
です。これを(★)の左辺に代入してみます。(★★)の解と係数の関係より であることに注意すると、
-
となり、確かに解であることが確かめられました。
(♪♪♪)に於いて とおけば解は
- …(♬)
と表せます。(♪♪♪)の表現は解が二次元の線型空間をなすことがわかりやすい表現ですが、(♬)の表現は任意定数を決めたときの関数の様子がよりわかりやすい表現で、どちらも重要な表現です。
ここからは定数係数の2階非同次線型微分方程式
- …(†) (※ )
の解法について考察する事にしましょう。1階線型微分方程式の節で述べた定数変化法がここでも使えます。まず同次方程式(★)の一般解を
と書く事にします。そしてこの解の任意定数 をそれぞれ二つの関数 に置き換えたものを
-
で表す事とし、これが(†)を満たすものとします。上式を微分すると
-
が得られます。ここで再び天下り的ですが を仮定しておく事にします。すると
-
ですが、これを更に微分すれば
-
となります。これらを(†)に代入すれば
-
となりますが、2つの関数 は(★)の基本解だから上式の括弧内は零になります。従って仮定と組み合わせる事により2つの等式
-
が求まります。これを未知数 に関する連立一次方程式と考えて解けば
- 、
となります。ここで とおきました。(この関数Wをロンスキー行列式またはロンスキアンと呼びます。)
上述の連立方程式の解を積分すれば次式が得られます。;
- 、 。
従ってこれらを に代入すれば以下の式が(†)を満たすことがわかります。;
- 。
この と同次方程式(★)の一般解 を用いて
-
と表される関数を考えると、
-
ですので、この式が非同次方程式(†)の一般解になっていることがわかります。すなわち、
-
は一般解になっています。
(補遺)
ここで上述のオイラーの公式について一点補足しておきます。当公式は指数関数及び正弦・余弦のテイラー展開を用いて証明するのが一般的なのですが
一応以下のような導出法もあります。;
実変数複素数値関数 に対してその微積分を
- 、
で定義しておきます。ここで関数 を考えて上式を使って微分すれば
-
であり、すなわち
-
が成り立ちます。これは変数分離形の1階微分方程式であり、 という風に解けます。また からただちにC=1が求まるので結局
-
が導かれる事が分かります。(略証終)
2階冪関数係数線型微分方程式
- …(❤)
を(2階の)オイラーの微分方程式と呼びます。この線型微分方程式は適当な変数変換を行う事により定数係数のそれに帰着させる事ができます。
以下ではその事実を示してゆく事にしましょう。
独立変数 に対して とおくと、 が得られます。次に関数 の媒介変数 に関する微分をドット記号 ❝・❞ を用いて 、 という風に書く事にすれば
- より、
- より、
が成立します。これらの等式を微分方程式 (❤) に代入すれば
…(♠)
が導かれます。これは変数 を独立変数とする未知関数 に関する2階定数係数線型微分方程式に他なりません。