名詞類・動詞・不変化詞とは
編集名詞(名詞類)・動詞・不変化詞 は、品詞(Part of speech)を三つに分けるヨーロッパなど屈折語の古い分類である[1]。
印欧語などの屈折語において、屈折(語形変化)だけに着目すると、品詞は屈折のある変化詞(declinable)と屈折のない不変化詞(indeclinable)の二つに大別される。さらに、変化詞は曲用とよばれる名詞のような屈折をする名詞(名詞類)と、活用とよばれる屈折をする動詞に2分される。すなわち、品詞は、名詞(名詞類)・動詞・不変化詞に3分することができる[2]。
「名詞」類 [3] (英 noun、ラテン nomen)は、昔は、今日定義されるところの名詞だけでなく、形容詞も含む、と考えられていた。これが、実詞(名詞実詞)と形容詞などに分かれていったのである。
- 名詞実詞 (ラテン nomen substantivum、英 noun substantive)
- 形容名詞 (ラテン nomen adiectivum、英 noun adjective)
すなわち「名詞類」には、名詞・形容詞・数詞・代名詞などが含まれるのである。
動詞
編集
不変化詞 (小辞・辞詞)
編集不変化詞 (英 indeclinable) は、小辞・辞詞 (英 particle 仏 particule 独 Partikel 不変化詞) ともよばれる語形変化をしない語のことで、ヨーロッパの伝統文法(Traditional grammar)や近代英語においては、副詞(adverb)・前置詞(preposition)・接続詞(conjunction)・間投詞(interjection)・冠詞(article)などが含まれる[4]。
印欧語以外の屈折語
編集印欧語以外の屈折語の例では、アラビア語が挙げられる。
アラビア語の場合
編集アラビア語の伝統的な単語の分類(品詞)は、名詞・動詞・小辞の3つに区分される[5]。
- 名詞 (イスム ism اِسْم) 西洋で名詞とよばれるもの以外に、形容詞・代名詞ならびに前置詞・副詞の一部も含まれる。
- 動詞 (フィエル fiʻel فِعْل) 動作を表す単語、および間投詞とよべるものも含まれる。
- 小辞 (ハルフ ḥarf حَرْف) 上記以外の残りの単語が分類される。語形が変化せず、別の単語を統率し、文法機能を補助するのが小辞の主要な機能となる。
脚注
編集- ^ #言語学大辞典 1996 「助詞」「品詞」の項などを参照。
- ^ #言語学大辞典 1996 「助詞」「品詞」「不変化詞」の項などを参照。
- ^ #オックスフォード言語学辞典 2009 の「実詞」の項などを参照。
- ^ #言語学大辞典 1996 「品詞」「不変化詞」の項などを参照。
- ^ #フェルステーヘ 2015 p.166-167などを参照。
文献引用
編集- 『言語学大辞典 第6巻 術語編』 三省堂、1996年1月。
- 助詞
ヨーロッパの品詞の古い分類に、名詞、動詞、不変化詞(ラテン indeclinabilia 英 indeclinable)の3分法があった。これは、もっぱら形態論的な分類で、曲用(declension)をするものが名詞、活用(conjugation)をするものが動詞、その他、語形変化をしないものをひとまとめにして不変化詞とする。
- 品詞
・・・(単語は) 形態的特徴だけで分類するとすると、印欧語をはじめ多くの言語では、名詞と動詞と不変化詞(indeclinable)の3つに分けるヨーロッパの古い分類が大まかながらもっともはっきりしたものである。この分類によれば、前置詞・接続詞・間投詞などはみな不変化詞の中に入れられる。
- 不変化詞
形態に基準をおいて品詞を分類すると、屈折(inflection)の有無によって変化詞(declinable)と不変化詞(indeclinable)に2分される。不変化詞とは、活用(conjugation)・曲用(declension)をもたない品詞をいう。たとえば、近代英語では副詞・前置詞・接続詞・間投詞・冠詞が不変化詞である。
・・・なお、屈折をもつ印欧語のような言語では、上に述べたような、名詞(曲用)・動詞(活用)・不変化詞という純粋に形態論的な特徴による品詞の3分法が用いられたことがあったし、また、やや大雑把ながら便利である。
- 『オックスフォード言語学辞典』 朝倉書店、2009年2月。
- 『明解言語学辞典』 三省堂、2015年8月。
- ケース・フェルステーヘ著、長渡陽一訳 『アラビア語の世界─歴史と現在─』 三省堂、2015年9月。
- オランダの言語学者・アラビア語学者 ケース・フェルステーヘ(Kees Versteegh)著 The Arabic Language, Second Edition(2014, Edinburgh University Press)[1]の邦訳。