軍事学概論/終わりに
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世界平和が人類の究極的な目標の一つであることはほぼ間違いないであろう。1898年に経済学者ブロッホは兵器の威力が飛躍的に向上していることから考えて『政治、経済関係にみる戦争の将来 いまや戦争は不可能か?』という著作を発表して人類は戦争をしてはいけない時代に入ったことを主張した。 しかし我々が簡単に戦争から逃れることはできないことは歴史を紐解いてみても明らかな事実である。戦争は国際秩序や国家体制を幾度も破壊し、多くの死と不幸を生み出した。第二次世界大戦後に国際連合という世界平和を追求するための国際機構が創設されたことは歴史的な成果であるが、これを以っても世界平和が達成されたわけではない。つまり軍事問題の研究というものは全く終わっておらず、むしろ日々継続する国際関係の変化や軍事技術の発展によって次の局面を迎えつつあると認められる。これは一見すると平和を求めながら戦争を理解するという二律背反的な試みのようであるが、平和を求めて戦争を理解することにはなんら矛盾することではなく、むしろ積極的な志向であるのだ。故に本書が読者諸氏の軍事問題に対する知的好奇心を満たしながらも、戦争についての理解を深めることで平和に貢献することが出来れば幸いである。