電気回路理論/回路を記述する量

電気回路の構成

まず初めに、電気回路の構成について述べます。この説明は、何らかの装置への具体的な電気回路の実装を指すものではなく、概念的なものです。

電気回路は、電源と負荷、それらをつなぐ導線から構成されます。電源は電気エネルギーを回路へ供給し、負荷はそれらを蓄積したり、あるいは光エネルギーや熱エネルギーへと変換して消費するものです。電源や負荷の実体については次節で後述します。

次に、電気回路の話題に入る前に、応用としての電気回路学の前提となる電気現象の基本について再確認し、電気回路への誘導とします。

電流

電気現象の根源は電荷(electric charge)であり、その量を単位[C](クーロン)で表します。

回路のある部位での電荷の移動を電流(electric current)といいます。その大きさは単位時間当たりに移動する電荷の量で表し、単位は[A](アンペア)を用いる。

以下の関係があることが知られています。

電荷の量q[C]と時間t[s]と電流i[A]の間には

の関係があります。

電流の元となる電荷の実体は、金属中においては電子(electron)、半導体中においては自由電子(free electron)または正孔(hole)です。 電子は負の電荷を持つので、電流の方向は電子の移動する向きと逆方向であり、正孔については電流の方向は正孔の移動する向きと順方向であることに注意してください。

電流の元となる電荷の実体は、金属中においては電子(electron)であり、半導体中においては電子または正孔(hole)である。 電子は負の電荷を持つので、電流の方向は電子の移動する向きと逆方向である。正孔については電流の方向は正孔の移動する向きと順方向である。

電圧

電気現象では、電荷の存在により生じる電界による作用、または磁気との相互作用により電荷に力が作用します。電荷の移動は、この力の働きによるものであり、力により仕事を受けることから、ポテンシャルエネルギーを持ちます。 電荷量qが持つ電気的ポテンシャルエネルギーはqに比例するので、電荷の量によらずある位置の電気エネルギー的な位置付けを示すために、ポテンシャルエネルギーを電荷量qで除した値を考え、これを電位といいます。

電気回路の解析では、回路素子で結ばれた2点間の電位の傾斜により電荷が移動する現象を扱うので、2点間の電位差に着目することが多く、これを2点間の電圧(voltage)といいます。

また、特に電源が発生させる電位差を起電力 (electromotive force) といいます。

電位と電位差である電圧、起電力の単位には[V](ボルト)を用います。

電力

電気回路において、回路の各部分で消費または蓄積される電気エネルギーは、電位の定義から、2点間の電位差とその間を移動する電荷量の積で求めることができます。 2点間の電位差は電圧であり、単位時間当たりの電荷の移動量は電流であるため、単位時間あたりの電気エネルギーは、電流 i と電圧 v の積によって与えられます。これを電力 (electric power) P といい、以下の式で表されます。

電力の単位には、[W](ワット) を用います。